解説:「ブギウギ」愛助役で見せた“振り幅”も話題に 水上恒司の自由自在に“変化”する魅力

水上恒司さん
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水上恒司さん

 趣里さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)(朝ドラ)「ブギウギ」で、ヒロイン・スズ子(趣里さん)の最愛の人・村山愛助を演じた水上恒司さん。ヒロイン・スズ子(趣里さん)にいちずな愛を注ぐ純情な青年を、存在感たっぷりに演じきった。連続ドラマ「中学聖日記」(TBS系)で担任教師に恋する男子中学生役で鮮烈なデビューを果たしてから約5年半、「ブギウギ」をはじめ、数多くのドラマや映画で快進撃を続ける水上さんの主な出演作を振り返りながら、その魅力を解説する。

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 水上さんは1999年5月12日生まれ、福岡県出身。2018年に連続ドラマ「中学聖日記」で俳優デビュー。有村架純さん演じる主人公の相手役・黒岩晶を演じ、視聴者から高い注目を集めた。当時の撮影を振り返り、水上さんは「きっとあれを超える緊張感は今後ないんじゃないかなと思います」と語っていたが、演技未経験でありながら、思春期まっただ中の晶の危うさを繊細に表現し、切ない恋模様をみずみずしく彩った。また、晶は劇中で15歳から18歳、23歳へと年齢を重ねていくが、次第に大人へと成長していく姿も見事に表現した。

 2020年に放送された連続ドラマ「MIU404」(TBS系)では、警察庁幹部の父を持つキャリアの新米刑事、“九ちゃん”こと九重世人を演じた。序盤では頭でっかちだった九重が、仲間との関わりを通して次第に人間味を帯びていく。そんな九重の変化と成長を、自然なグラデーションで見せてくれた。

 2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」では、主人公・渋沢栄一(吉沢亮さん)の養子となる渋沢平九郎を好演。当時のインタビューで、平九郎役について「まさに命がけで演じることができたという手応えを感じています」と語った水上さん。偉大な兄たちの背中を追いかけ、農民から幕臣となった平九郎が、壮絶な最期を遂げるまでの人生を、圧倒的な熱量で演じきった。

 2022年5月には、初主演映画「死刑にいたる病」が公開され、阿部サダヲさん演じる連続殺人鬼・榛村大和に翻弄(ほんろう)される大学生・筧井雅也を演じた。普段は爽やかな雰囲気の水上さんが、猫背で歩き、低い声でボソボソと話すなど、負のオーラを発する卑屈な青年をリアルに体現した。

 同年8月には、岡田健史から本名の水上恒司に改名。2023年は、フジテレビ系“月9”枠(月曜午後9時)の連続ドラマ「真夏のシンデレラ」、映画「OUT」「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」など、話題作に立て続けに出演。

 「OUT」では、筋骨隆々のヤンキー・安倍要を演じるため、筋トレで体作りを行い、金髪リーゼントにひげをたくわえ、まるで別人のような姿に激変。「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」では、戦時中の日本にタイムスリップした女子高生と恋に落ちる特攻隊員の佐久間彰を好演し、「第47回日本アカデミー賞」の優秀主演男優賞を受賞した。

 役に合わせて変幻自在に“変化”してきた水上さんが「ブギウギ」で演じたのが、スズ子の大ファンであり恋人の愛助だ。スズ子の魅力を“オタク節”全開でまくしたてるコミカルなせりふ回しから、死の間際に見せた鬼気迫る表情まで、その演技の“振り幅”には驚かされた。危篤状態になった愛助が机にしがみつくようにしながらスズ子への手紙を書き残す壮絶な最期は、SNSでも「魂の演技」「生死をさまよう演技は、ここ数年の朝ドラで一番衝撃」などと大きな話題を呼んだ。

 昭和の好青年から金髪ヤンキーまで、幅広い役柄に挑戦してきた水上さん。その役と同化するかのように“変化”する確かな演技力で、俳優としての存在感をますます増していく水上さんのさらなる活躍に注目していきたい。

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