解説:朝ドラヒロインオーディションの“あるべき姿”か 「ばけばけ」高石あかりの抜てきに歓迎の声が上がったワケ

2025年度後期のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」でヒロインを務める高石あかりさん (C)NHK
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2025年度後期のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」でヒロインを務める高石あかりさん (C)NHK

 2025年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」のヒロイン(主演)に、「ベイビーわるきゅーれ」シリーズなどで知られる高石あかりさんが選ばれたことが10月29日に明らかにされた。2892人の応募があったというオーディションによる選出で、ネット上では「久しぶりのフレッシュな女優さんの主演になる感じですね」「朝ドラのヒロインはこうでなくちゃ!の典型の方が選ばれてうれしい」などと、高石さんを歓迎する声が上がったが、その理由は? 近年の傾向をもとにひもといてみたい。

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 ◇近年は新鮮味に欠ける、良くも悪くも手堅い人選が増えていた

 かつて「若手女優の登竜門」と言われることの多かった朝ドラ。そういった側面を視聴者に印象付けてきたのが、ヒロインオーディションだ。

 内容的にもエポックメイキングであった2013年度前期「あまちゃん」ののんさん以降、2015年度前期「まれ」の土屋太鳳さん、同後期「あさが来た」の波瑠さん、2016年度前期「とと姉ちゃん」の高畑充希さん、同後期「べっぴんさん」の芳根京子さん、2017年度後期「わろてんか」の葵わかなさん、2018年度前期「半分、青い。」の永野芽郁さんが、10代後半から20代前半のときにオーディションによってヒロインに抜てきされ、それぞれの作品を通じて大きく知名度を上げた。

 また、2014年度後期「マッサン」のシャーロット・ケイト・フォックスさんのように、“朝ドラ初の外国人ヒロイン”も誕生した。

 近年においては、2020年度前期「エール」の二階堂ふみさん(主演・窪田正孝さんの相手役)、2021年度後期「カムカムエヴリバディ」の上白石萌音さんと川栄李奈さん、2022年度後期「舞いあがれ!」の福原遥さん、2023年度後期「ブギウギ」の趣里さん、2025年度前期「あんぱん」の今田美桜さんがオーディションによってヒロインの座を射止めたが、驚きや意外性を感じたのは趣里さんくらいか。視聴者側からすると新鮮味に欠ける、良くも悪くも手堅い人選に見えてしまっていたのは、否めないだろう。

 ヒロインオーディション自体が行われなかった作品も多く、9月に最終回を迎えた2024年度前期「虎に翼」の伊藤沙莉さん、現在放送中の同後期「おむすび」の橋本環奈さんもキャスティングよる起用。「朝ドラ=若手女優の登竜門」としてのイメージが、2010年代半ばあたりと比べ、だいぶ薄らいでしまったのは間違いない。

 ◇大方の予想を覆した(?)高石あかりに高まる期待

 そういった意味で、大方の予想を覆した(?)「ばけばけ」の高石あかりさんは、オーディションによって選ばれた久しぶりの朝ドラヒロインらしいヒロインと言えるのではないだろうか。

 高石さんは2002年12月19日生まれ、宮崎県出身の21歳。ダンス&ボーカルグループ「α-X’s(アクロス)」のメンバーを経て、2019年から本格的に俳優としての活動を開始。2021年の初主演映画「ベイビーわるきゅーれ」(伊澤彩織さんとのダブル主演)は、上映館数が決して多くない中、口コミで評判が広がり、異例のロングランヒットを記録し、その後、続編映画、テレビドラマも制作され、彼女の代表作となった。

 「ベイビーわるきゅーれ」での社会に適合できない若き殺し屋役に加え、2023年公開の映画「わたしの幸せな結婚」では、ヒロインを虐げる異母妹、同年のNHK“夜ドラ”「わたしの一番最悪なともだち」では、主人公にとって“一番最悪なともだち”と言える幼なじみに扮(ふん)するなど、正統派ヒロインとしての印象がないのも、逆に魅力的。朝ドラでどんな顔を見せてくれるのか、と期待は高まるばかり。またドラマ自体が成功すれば、高石さんのような挑戦的な人選が増える可能性も。

 いずれにせよ、俳優キャリアわずか5年で“大役”をつかんだ高石さんには、現時点で「フレッシュな朝ドラヒロインはやはり応援したくなります」といった好気的な声が圧倒的。ひとまず1年後のドラマスタートを心待ちにしたいと思う。

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