チ。 -地球の運動について-:小西克幸×中村悠一×仁見紗綾インタビュー(1) 「自分は懸命に生きているか」自問自答させる魅力

「チ。 -地球の運動について-」に出演する(左から)小西克幸さん、仁見紗綾さん、中村悠一さん
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「チ。 -地球の運動について-」に出演する(左から)小西克幸さん、仁見紗綾さん、中村悠一さん

 「第26回手塚治虫文化賞」のマンガ大賞に選ばれたことも話題の魚豊さんのマンガが原作のテレビアニメ「チ。 -地球の運動について-」。原作は、「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で2020~22年に連載され、15世紀のヨーロッパを舞台に異端思想の地動説を命懸けで研究する人々を描く異色のマンガとして人気を集めた。テレビアニメは10月にNHK総合で放送をスタートし、第3話にしてメインキャラクターであるラファウが処刑されるという衝撃的な展開が話題になった。ラファウの死から10年後、紆余曲折を経て地動説の研究を引き継ぎ、情熱を傾けることになるのが、代闘士のオクジー、修道士のバデーニ、天文研究助手のヨレンタだ。オクジー役の小西克幸さん、バデーニ役の中村悠一さん、ヨレンタ役の仁見紗綾さんに「チ。」の魅力、収録の裏側を聞いた。

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 ◇“火”を持ったまま収録に臨みたい 信念の物語

 --出演が決まった際の率直な感想は?

 仁見さん 私は率直にまず驚きが本当に強くて。まだ現場の経験もほとんどない状態で合格をいただいたので。

 小西さん 声の仕事を始めてどのくらいだったんですか?

 仁見さん 1年目の時です。

 小西さん おぉ、1年目!?

 仁見さん はい、1年目の時だったので、聞いた時、どうしよう……と。ほかのキャストの方々のお名前を聞いて、プレッシャーがすごかったです。でも、できることを素直に取り組んでいこうという気持ちが強くありました。

 小西さん 全然1年目という感じはしなかったですけどね。

 仁見さん 皆さんのおんぶに抱っこにならないように、いっぱい読みこんで行きました。

 小西さん 僕は元々、原作が好きで読んでいたので、アニメ化されたら絶対やりたいなと思っていました。決まった時は率直にうれしかったですね。早くアフレコが始まらないかな、この世界に入ってオクジーとして早くアフレコしたいなという気持ちが半分、すごく大きいタイトルなので大丈夫かな?という気持ちが半分という感じでした。

 中村さん 僕はマンガを読んだことはなかったのですが、作品自体は知っていました。オーディションで作品に触れてみて、何というか、ムカついたから殴るぞ、みたいな作品ではないじゃないですか(笑)。理性的というか。そういう作品自体が少ないので、オーディションを受けることも、実際にやらせていただくこともなかなかない。そうした中で、非常にテーマ性が強い、面白い作品だと率直に思ったので、僕もオーディションではもちろんやりたいと思いましたし、参加できると決まった時はうれしかったです。オーディションを受けてから収録まで間があることもあるので、オーディションに挑んだ時の気持ちをまだ覚えてるうちに、この火を持ったまま臨みたいなとすごく思ったのを覚えています。

 --「チ。」の魅力を感じたところは?

 仁見さん 私は本を読むのは結構早いほうなのですが、この作品は全然すらすら読むことができなくて、飲み込むのに本当に必死になりました。そのくらい人間の重みがすごく伝わってきたんです。読みながら「自分はこんなに一生懸命生きているかしら」「こんな熱量を持って生きてたかしら」と、いろいろなことを振り返りながら読んで、どっしりきました。

 小西さん 地動説、天動説の話ではあるのですが、その周りで生きている人たちの物語が中心になってくるのかなという感じがしました。その人たちがいろいろな理由で自分の信念を曲げなかったり、覚悟を持って前に進む。死ぬということすらも前に進むこと、というわけではないのかもしれないですが、やはり生き方がすごくて。「命を捨てても曲げられない信念があるか? 世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか?」というキャッチコピーをどこかで目にしたのですが、それは自分にはないなと思って。読んでいくうちに、登場する人たちの生きている時代は違うけど、一つの地動説というものでずっとつながっていて、その魂の火は消えない。じゃあ次の時代にはどうなっていくんだろうな?と、どんどん引き込まれていきましたね。

 中村さん 全巻通すと章立てになっていて、我々は真ん中のブロックをやらせてもらっているんですけど、自分たちが出演していないところから物語は始まっていて。お二人が言ってるように、自分が全部を成していくんじゃなくて、その流れの中に身を投じることが使命だと感じる、というのがすごく面白いと思いました。現代を生きていて、自分の中に使命感を持つことはなかなかできないというか、自分が生きることにだけ必死になるケースのほうが多いと思うのですが、そうじゃない。しかも、それを成せば自分が有名になれるというわけではないじゃないですか。僕が演じているバデーニだけはちょっと違いますけど(笑)。

 --たしかに、バデーニは、「重要なのは、私がこれを完成、発表することだ」と語るようなキャラクターです。

 中村さん バデーニは、自分の名前を残すんだ、と言っていますけど、ほかの人たちはそれを期待しているんじゃなくて、この世の中にある真理の一つを自分がひもとくきっかけを今握らされたんだというところに運命を感じられる。だから、登場する人たちはみんな純粋だし、真っすぐというところが、感情移入ではないですけど、引き込まれるところだったなと思います。

 ◇たくましいヨレンタ、超ネガティブなオクジー、自信家のバデーニ

 --演じるキャラクターの印象や推しポイントを教えてください。

 仁見さん ヨレンタは、たくましい子だなと思っています。状況的に女性1人で、しかも女性だからということで認められない状態の中でも、そこで生きていくことを自分で選んでいるし、傷ついても自分で背中をたたいて前に進むというところがすごくたくましくて、すてきなところだなと思います。最初の登場シーンは、自分が参加できない研究会の盗み聞きをするために、全力で走っているところなのですが、頭の中ではずっと後悔していて、理性が本能に負け続けているみたいなところがすごく彼女らしくて魅力的だなと思って、ヨレンタの推しポイントです。ぜひ見てほしいです。

 小西さん オクジーは、超ネガティブ人間です(笑)。時代背景的に宗教色が強いので、そこにずっと染まり続けているというか。この世は汚れていて、一部の人間しか幸せになれなくて、自分たちは死んで天国に行かないと幸せになれない、という教えをずっと聞かされてきたので、それが違っていようが、正解だろうが、もうよく分からなくなっているんじゃないかなと思っていて。「自分はダメな人間なんだ」と思ってずっと生きてきているような人間ですね。だから、人から何か言われても口答えすることもないし、バデーニにむちゃくちゃなことをされても、「あ、すみません……」となってしまう。それほどまでポジティブになれない彼がどういうふうに変わっていくのかを見ていただきたいですね。ずっとネガティブだけど、強く真っすぐ生きている姿も、とても可愛いなと思うので、そういうところも見ていただけるとうれしいなと思います。

 --そんなオクジーがどんどん地動説の研究に熱中していきます。

 小西さん そうなんですよね。だから、熱中できるものを見つけたんですよね。多分今まではきっとそれがなかったんですよね。ようやく「これはいいんだ」「こんなにすてきなことがあるんだ」という一つのきっかけからどんどん変わっていく。ちょっとずつ自分の中で芽生えてきたものなんじゃないかなと思っています。

 --オクジーの“推し”シーンは?

 小西さん 初めてバデーニと会った時、血の臭いがすると言われて鼻をつまんだ状態で話をされるんですけど、オクジーはそんなことをされても「あ、はあ……」みたいな感じで普通に受け取っているのが、とても可愛かったな、彼らしいなと。

 --バデーニの印象は?

 中村さん バデーニはすごい自信家で不遜な人で、周りを見下していて、推せるポイントがない人ではあるんですけど(笑)。でも、僕はこの「チ。」という作品を原作の1巻から順番に読んでいった時に、ここまで我が道を突き進めている人っていないかなと。結果的に、作品の主題に対しては真っ当な行動をとってはいるんですけど、世間から外れようが何しようが貫くという信念を、地動説と出会って持ったのではなくて、元々持っている。自分が「知りたい」ということに対して、それほどの信念を元々持っている人はなかなかいないし、それで目を焼かれようが全然関係ないと。目が焼かれるんなら反対の目があるぞ、手脚があれば動けるぞと考えて、自分のために行動するところがキャラクターの面白さになっていると思います。ただ、一人で物語の中心にいるには、あまりにもめちゃくちゃな人なので、オクジーとのバランスはすごく取れていると思います。最初は鼻をつまんで話していたような関係が、ドラマが進む上で、お互いからの影響を良い形で受けて、最後は共に歩んでいくというところがやっぱり面白いところですよね。

 インタビュー(2)に続く

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