悠木碧:アニメ「薬屋のひとりごと」インタビュー “ひとりごと”の裏側 第2期はどうなる?

「薬屋のひとりごと」の一場面(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
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「薬屋のひとりごと」の一場面(c)日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会

 小説投稿サイト「小説家になろう」から生まれた日向夏さんのライトノベルが原作のテレビアニメ「薬屋のひとりごと」の第2期が、日本テレビのアニメ枠「FRIDAY ANIME NIGHT(フラアニ)」で、2025年1月10日から毎週金曜午後11時に放送される。2023年10月~2024年3月に放送された第1期は、老若男女問わず愛される作品となった。美しい映像やドラマチックなストーリーなどと共に話題になったのが、主人公・猫猫役の悠木碧さんの演技だ。悠木さんは、正統派ヒロインから子供、大人の女性まで演じ分ける演技力の高さが魅力で、「薬屋のひとりごと」は「ハマり役」と話題になっている。悠木さんに、猫猫役への思いを聞いた。

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 ◇“ひとりごと”の芝居の波

 「悠木碧はやっぱりすごい」。「薬屋のひとりごと」のキャストを取材する中で、何度も聞いた言葉だ。テンションは低いが、実は奥底には熱い思いを秘めていて、飄々と難事件を解決していく猫猫役は「ハマり役」とも言われている。悠木さんは「ありがたいですね……」と語る。

 「私はアニメ化の前にドラマCD版などでも猫猫を演じさせていただいていたので、そういう意味でもすごくやりやすいところがありました。監督をはじめスーパークリエーターの皆さんが緻密に計算して作っている作品ですし、第1期は画(え)がかなりできた状態で収録できたことが大きかったと思っています。スタッフの皆さんが作りたいものが明確にあって、曖昧なところがないので、キャラクターをしっかり作り込んで挑むことができました」

 「薬屋のひとりごと」の舞台は、とある大陸の華やかな後宮で、毒見役の少女・猫猫が、美形の宦官・壬氏と共に陰謀やウワサのひしめく後宮で起きる事件に巻き込まれていくことになる。悠木さんが演じる猫猫は、毒と薬に異常なまでの執着を持つ。好奇心と知識欲、ほんの少しの正義感から、事件に巻き込まれることになる。

 猫猫はとにかくセリフ量が多い。基本的にクールで淡々としているが、毒や薬のことになるとテンションが上がる。推理シーンの長い“ひとりごと(モノローグ)”も印象的だ。モノローグが長く、淡々と推理しているのだが、しっかりと情報が伝わってくる。悠木さんの演技力に寄るところも大きいはずだ。

 「そこはこだわって取り組もうとしているところです。昨今、倍速で見る方、ながら見をする方もいます。目を離していても伝わったり、しっかりと映像に目を向けてもらえるようになったりすれば……という思いがあります。見ていただければ、きっとこの世界をもっと楽しんでいただけるはずですし。セリフは長いのですが、ここをしっかり聞いてください!というところを絞って、芝居の波を作ろうとしています。すごく難しいんですけどね。元々、言葉選びが美しい作品なので、キレイに聞こえますし、やっぱり全部聞いてほしいという気持ちになっちゃいますし。猫猫は感情の起伏がそんなにあるタイプではないので、やりすぎてはいけない中で、聞きやすく整えていこうとしています」

 「薬屋のひとりごと」というタイトルの通り、猫猫の“ひとりごと”は作品の重要な要素だ。悠木さんは分かりやすく“ひとりごと”を伝えつつ、猫猫らしさもしっかり表現しており、そのバランスが絶妙で、素晴らしい。

 「ひとりごとが多い作品なので、耳心地が良くないといけませんし、これは責任重大だぞ!と思いながらひとりごとの整理をしていました。猫猫は賢い子です。整理された言葉が届くことで、この子の賢さが際立ってくるはずです」

 ◇印象的だった「恫喝」

 第1期はさまざまな名場面があった。その中でも悠木さんが印象に残っているのが、第4話「恫喝」で、衰弱していく主の梨花妃をろくに世話もしないでいた侍女を相手に激怒するシーンだ。普段は淡々としている猫猫が感情を露わにし、彼女の正義感も垣間見える名場面だった。

 「猫猫は普段、ダウナーだけど、叫べない子ではない。パワーがない子というわけではないと思っています。普段は省エネだけど、意外とガッツがあることが分かる場面です。ここがあったから、後々壬氏を助けに行くシーンにもつながってきます。猫猫は最初から地に足が付いていて、ある程度大人だから、成長の幅が見えにくい子でもあります。だからこそ安心して見られるんです。序盤で見せた感情の起伏が後半に効いてくるような作りになっています。彼女の正義感が見えるシーンなんです。第1話の終わりのナレーションで『ほんの少しの正義感』と言っていますが、その正義感が運命を狂わせていくのですが」

 第1期は、猫猫の実の父である羅漢のエピソードがクライマックスを盛り上げた。

 「好きなエピソードです。羅漢と鳳仙の話は、猫猫自身はがっつり絡まないのですが、ちゃんとそこには愛情があり、愛に両親が振り回されたことを知っているから、自分の恋愛感情に対して一歩引いています。猫猫のような性格の子にどうやって育つのか?と考えた時、確かにな……と感じるエピソードです。猫猫はすごく変化、成長する子ではありません。周りをきちんと観察していて、彼女の周りの人たちが一歩進み、成長する話でもあります。そんな中で、猫猫の心も少しだけほどけていきます」

 ◇“壬氏”大塚剛央への信頼感

 壬氏とのコミカルなやり取りも見どころの一つだ。媚びない猫猫は、壬氏に対してもブレない。

 「壬氏に対しては段々雑になっています。猫猫は猫っぽいんです。懐いたからこそ雑になっていく。そこは甘えなんでしょうね。11話で壬氏が泣いちゃうところで、しゃあねぇな……と受け入れるところも猫です。飼い主がへこんでいる時は、黙ってそばにいてくれるんです」

 女性キャストが多いこともあり、収録は「後宮みたい」なのだという。壬氏を演じる大塚剛央さんについて聞いてみると……。

 「今は第1期の時よりは仲良くなった気がします。仲が悪いわけではないですよ(笑)。大塚さんは、すごく真面目。特番や取材で一緒にお話させていただくことが増えて、『ゲーム好きなんですね!』みたいな話をするようになってきました。私に対しては『めっちゃしゃべるな!』と思っているのではないかと(笑)。壬氏は、さまざまな表情を意図的に使い分けます。ここじゃなきゃいけないという芝居の範囲が結構狭いキャラクターです。その絞り方が絶妙なんです」

 悠木さんは「息がばっちり合うんです」と大塚さんに絶大な信頼を置いている。

 「大塚さんは、レシーブがすごいんです。少し照れくさいシーンでも、いわゆる共感性羞恥ではない空気にしてくださります。呼吸が合ってないと難しいことですが、特に打ち合わせをしなくてもそうなります。本当に頭のいい方なんです。お互いの人間の温かさが見えるシーンもリズムよくきちんとはまっていくような感覚もあります。猫猫はずっとしゃべっているから自分のリズムにしやすいのですが、ほかの人は大変なんです。そこをうまくはめていただいていると感じています」

 第2期は、新キャラクターとして子翠が登場し、瀬戸麻沙美さんが演じることが発表されている。

 「瀬戸ちゃんと掛け合うシーンが多いです。最近、瀬戸ちゃんはクール系のキャラクターが多い印象があって、明るくて元気、でもちょっとミステリアスみたいなキャラをあんまり聞いていませんでしたが、子翠はすごいですよ。猫猫よりもぶっ飛んでいるところもあって、二人の絡みも面白くなってきます」

 第2期に向けて「猫猫は唯一変わらない、彼女だけは安定しているけど、周りの状況は激しく変わっています。とんでもないビッグニュースだらけ。第1期もすごかったけど、さらに話が大きくなっています。壬氏もいろいろあって……。第1期を楽しんでいただいた方には知りたかった情報だらけです」と語る悠木さん。第2期では一体どんな名推理や名場面が生まれるのか? 猫猫の“ひとりごと”にぜひ注目してほしい。

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