JTBパブリッシング:「るるぶ」出版社が電子コミック参入 作画は動画配信者を起用

JTBパブリッシングの電子コミック第1弾「滅亡までだよ笹本くん」
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JTBパブリッシングの電子コミック第1弾「滅亡までだよ笹本くん」

 旅行ガイドブック「るるぶ」や「JTB時刻表」で知られる出版社・JTBパブリッシングが、6月13日に電子コミック市場に参入したことが明らかになった。第1弾は、地球滅亡まで2年半という中途半端な時間が世界を徐々にむしばむ中で、男子高校生たちの触れ合いを描く「滅亡までだよ笹本くん」(坂本トウヤさん作画、柿栗桃さん原作)だ。電子コミック配信サービス大手「ピッコマ」で先行配信される。旅のイメージが強い同社が、なぜ電子コミック市場に参入するのか。同社の棚田素乃担当編集長に話を聞いた。

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 出版科学研究所によると、2024年の電子コミック市場全体の推定販売金額は5122億円で、紙を合わせた全出版物の推定販売金額1兆5716億円の、3分の1近くを占める。下降傾向が続く出版界で、電子コミック市場は伸び続けている数少ないジャンルの一つだ。棚田さんは「弊社のガイドブックなどは堅調ではあるが、未来永劫このまま安定しているというわけでもない。新領域への挑戦を考えたとき、電子コミック市場が最も魅力的だったのは事実」と内幕を語る。

 一見、異色の参入だが「電子コミックと弊社は、実はそれほど遠いところにはない」という。「これまで四半世紀近く『るるぶ』とさまざまなアニメやマンガ、ゲームとのコラボ本を刊行し続けていて、今後も充実させていくつもりだ。いわゆる『ポップカルチャー』の知見は他社に劣るものではない」と自信をのぞかせる。

 JTBグループは1912年創立の「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」が起源で、海外に日本の魅力を発信して観光客を誘致してきたことから「『ポップカルチャー』は今や日本の誇る魅力の一つであり、この一助になりたいと考えている」と歴史的な背景もにじませる。

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 手掛けるマンガは「今年度10作品程度」を予定。「後発なので果敢にチャレンジしていきたい」と棚田さん。第1弾の「滅亡までだよ笹本くん」は、いわゆる“お絵描き動画”で人気の配信者のばななふぃっしゅこと坂本トウヤさんに作画を依頼した。

 今秋リリース予定の男子校の優等生と不良のラブコメディー「姫ポジションは譲れない」(まつんさん作画、柿栗桃さん原作)では同じく人気配信者のまつんさんが筆をとる。「ネットでおなじみの美しい絵で、読者に親近感を抱いてもらえれば」というのが狙いだ。鉄道に強い同社の個性を生かし、山手線を舞台に幼馴染の恋を描く「まあるいみどりの」(なにかニナさん作)も今夏の配信が予定されている。「人気ジャンルでは『小説家になろう』の人気原作をコミカライズする令嬢系の『死に戻ったわたくしは、あのひとからお義兄様を奪ってみせます!』(秋月真鳥さん原作、群青サシャさん作画)や「るるぶ」を擬人化した「連れてって!るるぶさん」などの準備も進んでいる」

  近年、電子コミック市場には、紙のマンガに携わってこなかった出版社も多数参入している。市場の大きさの分だけライバルも多い。棚田さんは「各社はライバルであって敵ではない。弊社は弊社の色で市場の活性化につとめたい」「読者の皆さんの人生という名の旅に、そっと寄り添えるような作品を世に送り出していきたいと抱負を語る。

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