あんぱん:第111回の注目度推移 羽多子vs.登美子 どちらの一言が視聴者の心つかんだ? 最高値は午前8時12分の74.9%

連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK
1 / 2
連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第111回(9月1日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? 義理の母、羽多子(江口のりこさん)と実の母、登美子(松嶋菜々子さん)の激しい“バトル”が描かれた第111回。テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移で、どの場面に視聴者が一番注目していたか調べてみた。

あなたにオススメ

 「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。

 ◇最高値は午前8時12分の74.9% 羽多子の怒りの一言がさく裂

 第111回は、ラジオドラマ「やさしいライオン」の放送後の物語。実の母、登美子の感想が気になる嵩(北村匠海さん)は浮かない表情をしている。そのことを、のぶ(今田さん)から聞いた羽多子は数日後、登美子を家に連れてくる。

 羽多子は嵩の家の茶室で、登美子のお茶を楽しむと、「やさしいライオン」の話を切り出し、のぶも嵩の登美子への思いを伝える。午前8時6分ごろから、ほぼエンディングまで、実の母、登美子vs.義理の母、羽多子の“バトル”が茶室で繰り広げられる。同じセットでの長いシーンだが、江口さんや松嶋さんの熱演で視聴者を飽きさせない展開になっていた。

- 広告 -

 テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を示す、この日の「注目度」はというと、主題歌が流れるオープニングの終了後、ゆっくり、ゆっくりと伸び始め、ドラマの終盤に大きな山を作る「後半型」ともいえるようなグラフだった。

 最初の山は、74.3%を記録した午前8時11分と、最高値74.9%の午前8時12分。

 午前8時11分は、羽多子が思わず「たまるかあ!」と声を荒げた場面だ。直前、「昔から、息子にやさしい言葉をかけてやらんで。まず母親のあんたから、許してくれと頭を下げて謝るべきやないがですか」と声を荒げて迫った羽多子に対し、登美子が「私は謝らなきゃいけないようなことは一切しておりません」ときっぱり否定して返したから、羽多子が「たまるかあ!」とさらに声を荒げることになった。

 「あんたは自分の都合で嵩さんの気持ちをふみにじってきたやがろ」。文字通り、ひざを乗り出し、羽多子はさらに登美子に迫るが、登美子は屈しない。

 「嵩さんがあんなに美しい話をあんたのために書いたやがに。ぶち壊すようなことばっか言って。あんたは『ムクムク』やのうて『ムカムカ』じゃ」。この羽多子の強烈な一言が飛び出した午前8時12分台は、注目度のこの日ピークだ。スカッと胸をすく一言で、視聴者も思わず「うまい!」と言いたくなったに違いない。

 「よくもそこまでおっしゃたわね」。登美子も目を見開き、2人は顔を突き合わせる。この先、どうなるのやら? 視聴者が心配になったこの場面で、のぶが「そこまで」と間に入る。すると、2人は笑い出し、いったん“休戦”となる。

 その後、帰ろうとする登美子に、のぶがこの家で一緒に暮らさないかと提案する午前8時13分台は注目度がやや下がるが、午前8時14分台で再び浮上し、74.0%を記録する。2度目の山をつくった14分台はのぶの提案に対する登美子の返答が続く。

 「こんなに狭くて、低い天井のマンションに、この私が住めると思う?」「嵩が手嶌治虫先生のように有名になって、庭付きの豪邸でも建ててくれるなら考えてもいいけど。無理よね」。内心はうれしいのだろうけれど、それを素直には表現しない登美子。憎らしい言い方が続く。

 「もう漫画家なんてやめちゃいなさい」。そこまで言い放った登美子は「じゃ、ごきげんよう」と言い残すと、部屋を出ていく。

 「たまるかあ、あの人は一筋縄ではいかんね」。羽多子がのぶに漏らした言葉は実感がこもっていた。視聴者も同感の幕だったのではないだろうか。義母と実母の“バトル”は激しさを増した後半、ポイントごとできちんと視聴者の視線をクギヅケにしていたようだ。

 ちなみに、オープニングの前、午前8時1分前後に“ヤムおんちゃん”こと風来坊のパン職人、屋村草吉(阿部サダヲさん)が7週ぶりにドラマに再登場した場面もあった。どうやら草吉は仕事の休憩中にラジオドラマ「やさしいライオン」を聞いたようだ。「あいつ、絵描きじゃなくてラジオのドラマなんか書くやつになったのか」とつぶやく。同僚の2人に「あいつはガキのころから、俺様のあんぱんを食ってでかくなったんだ」と言うが、「まさか」と信じてもらえない。“ヤムおんちゃん”らしい楽しい場面だが、期待度は66.0%とまずまずの数字だが、大きくは跳ねなかった。ただ登場すると、注目度が上がることが多い“ヤムおんちゃん”。今後も登場する場面があるのか、期待が高まる。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

写真を見る全 2 枚

テレビ 最新記事