あんぱん:第112回の注目度推移 蘭子と八木の“大人の恋”にメロメロ 最高値70.6%の午前8時9分に何が?

連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「あんぱん」のロゴ (C)NHK

 今田美桜さん主演のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合、月~土曜午前8時ほか)の第112回(9月2日放送)で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」(REVISIO社調べ、関東地区、速報値)の1分ごとの推移を調べたところ、最も注目度が高まったのは、大人のメロドラマにすっかりドラマの様相を一変させた蘭子(河合優実さん)と八木(妻夫木聡さん)の中盤のシーンだった。

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 「あんぱん」は、「アンパンマン」を生み出したマンガ家で絵本作家のやなせさん(1919年~2013年)と、暢さん(1918年~1993年)夫婦がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどりつくまでを描く、生きる喜びが全身から湧いてくるような「愛と勇気の物語」だ。

 ◇「なぜ?」 八木が蘭子に尋ねた午前8時9分が最高値70.6% 

 第112回は、健太郎(高橋文哉さん)から独創漫画派のメンバーが世界旅行に出かけたと聞き、嵩(北村匠海さん)は自分が誘われなかったことにショックを受ける。その話をメイコ(原菜乃華さん)から聞いたのぶ(今田さん)は、嵩の気持ちを思うと悔しいと腹を立て、落ち込む嵩の腕を引いて部屋を飛び出していく。

 テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を示す「注目度」は、前日の第111回がドラマの終盤に大きな山を作る「後半型」だったのに対し、第112回は中盤に安定して高い注目度を示した「中盤型」のグラフとなった。終盤の、のぶが嵩の腕を引いて部屋を飛び出していく場面は注目度は高くない。実は、この日の注目は別のシーンだった。

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 冒頭の午前8時1分、69.1%とまずまずの注目度を記録した場面は、カフェで話をしている嵩とたくや(大森元貴さん)のもとに、健太郎が遅れてやってきて、「あれは、ひどかよねー」と独創漫画派のメンバーが嵩に声もかけず、世界旅行に出かけたことを非難する場面。その事実すら嵩は知らなかったことに後から気づいた健太郎はたくやとともに、一生懸命フォローし、落ち込む嵩をなぐさめる。健太郎とたくやのやりとりが楽しいシーンだ。

 このシーンの後、主題歌が流れるオープニングに。注目度はいったん下がり、ドラマに戻るとピークの中盤に向け再び浮上し始める。最初の山は、70.1%を記録した午前8時5分と、69.8%の午前8時6分。2分続けて高い注目度を記録したこの場面はどんな場面だったのか?

 午前8時5分台はまず、メイコや羽多子(江口のりこさん)とパンを作っていたのぶが、世界旅行に誘われなかったことを知り怒る場面。「そんなに怒ることかねえ、別にええやろ」という羽多子に対し、のぶは「ほら、そうやって別にええで済まされたらと思うたら、こう、かっかかっかしてくるがよ」と、怒りの感情をこねているパンにぶつける。最近、冷静な対応ののぶの姿が目立っていたため、久しぶりに直情径行気味のまっすぐなのぶの反応を見たような気がした。大人になっても、こっちののぶの方が、やはりのぶらしい。

 ただ注目度が高かったのは、午前8時5分台後半から始まった蘭子(河合優実さん)と八木(妻夫木聡さん)のやり取りの影響が大きかったと思われる。突然、部屋を訪ねてきた八木に「どうなさったんですか?」と蘭子は驚く。蘭子と八木は互いの気持ちを少しずつ確認し合い、距離を縮めてきたが、それぞれ背負っている過去があり、ある一線以上は踏み込むことはない。視聴者も「また、2人のメロドラマが来たー!」という感じだったに違いない。

 6分台は、近所の人の目を気にした蘭子が八木を部屋に招き入れるあたり。「上がってください。この状態ですけど。明日引っ越すんです。お茶もお出しできなくてすみません」と謝ると、八木は「こちらこそ、そんなときに。すぐに失礼するよ」と言い、部屋に入る。大きな展開があるわけではないが、注目度はあまり下がらない。この後、どうなるのか? いよいよ、2人の関係に動きがあるのか? 視聴者は目が離せなかったにちがいない。

 八木は蘭子が書いた宣伝文の評判が良かったと伝えるが、蘭子は「ありがたいんですけど、また映画紹介の記事を引き受けてしまって……」と断る。八木が「何か、引っ越しで手伝えることは?」と聞き、部屋の中を見回すと、壁に掛かった豪(細田佳央太さん)の形見のはんてんが目に入る。2人は目を合わさないように、互いに視線を下に落とし、しばらく無言が続く。この辺りの午前8時7分台は、長いシーンの緊張感に耐えられなかったのか、67.5%とやや数字を落とすが、まだ視聴者の視線をつかんでいる。

 午前8時8分台は、内容だけを書くと、何でもないシーンが続く。蘭子はジャムの瓶を差し出し、「これ、ずっと前に買ったんですけど、どうしても開かなくて」と伝える。八木は苦戦しながらも瓶のフタを開け、「他には?」と尋ねる。蘭子は「大丈夫です。ありがとうございました」と頭を下げ、八木は「じゃあ」と言って部屋を出ていく。それだけだ。ただ“蘭子”河合優実さんと“八木”妻夫木聡さんだと緊張感が持続され、目が離せない。注目度は再び上昇し始める。

 そして、この日の最高値70.6%を記録した午前8時9分。外は雨が降っている。蘭子は八木を追いかけ、「これ、使ってください」と傘を差し出す。そんな場面だ。

 八木は「君がぬれるだろ?」と心配するが、蘭子が「いいんです」と返す。すると、八木は傘を持つ蘭子の手を握り、「じゃあ、借りるけど、今度はいつ会社に?」と問いかける。戸惑いの表情を浮かべた蘭子は、「私……もう、八木さんの会社には行きません」と返答。「なぜ?」と尋ねる八木の顔を、蘭子は最初はややためらっていたが、次第に無言のまま見つめる。この辺までが9分台だ。

 続く、八木が切なそうな表情で「そんなこと言わないでくれ」と口にする場面は午前8時10分台。2人は無言のまま見つめ合い、空からのショットに。画面には、2人がさす鮮やかな赤い傘が映し出された。傘の中の2人は?と想像させる、印象的なカットだ。注目度は最も高くなりそうな場面だが、少し息切れしたか68.8%。やや低下したが、ドラマ中盤に続いた蘭子と八木のシーンは視聴者を最後まで引き付けた。この後、急速に注目度は下がっていく。

 ここまで、2人の関係には直接深い意味がない会話がダラダラ続いていただけに、「私……もう、八木さんの会社には行きません」「そんなこと言わないでくれ」「なぜ?」のセリフは一気に急展開した感じを与えた。“白黒”の画面のような、あまり色のない部屋、服装だったため、赤い傘も強いインパクトがあった。注目度が上がるのも納得の中盤の場面だった。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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