解説:秋ドラマ注目度ランキング “視聴率”1位の「ザ・ロイヤルファミリー」を抑え、初回から視聴者を本当にクギヅケにした作品は?

主な秋ドラマの出演者。(左上から時計回りで)「終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー」「フェイクマミー」「ザ・ロイヤルファミリー」「相棒 season24」
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主な秋ドラマの出演者。(左上から時計回りで)「終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー」「フェイクマミー」「ザ・ロイヤルファミリー」「相棒 season24」

 10月から始まった秋の連続ドラマが序盤から中盤へと差し掛かっている。テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっている程度を示す「注目度」でランキング化したところ、上位には“視聴率”のランキングとはかなり違った作品が並んだ。「相棒」のような長寿シリーズの新作のほか、野木亜紀子さん、三谷幸喜さん、岡田恵和さんら“大物”脚本家のオリジナル新作も並んだバラエティー豊かな秋ドラマのラインアップの中で、初回から視聴者を本当にクギヅケにしていた作品は何だったのだろう?

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 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO株式会社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。

 視聴率は、番組にチャンネルを合わせていた世帯や個人の割合はわかるが、画面の番組を本当に注視していたかどうかはわからない。視聴率と注目度を合わせると、番組の見られ方の本当の姿がうかがえるというわけだ。

 今回のランキングは、民放で10月からゴールデン帯やプライム帯に放送されている連続ドラマ16作品の第1回を対象に調べた。

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 ◇注目度1位は「終幕のロンド」 2位が「フェイクマミー

 まず、いわゆる“視聴率”に当たる、REVISIO社の「世帯テレビオン率」のベスト3は、1位が「ザ・ロイヤルファミリー」(TBS系、日曜午後9時)、2位が「緊急取調室」第5シーズン(テレビ朝日系、木曜午後9時)、3位が「相棒 season24」(テレビ朝日系、水曜午後9時)だった。4位は「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(フジテレビ系、月曜午後9時)と「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系、火曜午後10時)が同率で追いかけている。

 ただ、注目度ランキングになると、作品が大きく入れ替わる。全年代が対象の「個人全体」の3位には、世帯テレビオン率1位の「ザ・ロイヤルファミリー」が順当にランクインしたが、2位は「フェイクマミー」(TBS系、金曜午後10時)、1位は「終幕のロンド ーもう二度と、会えないあなたにー」(カンテレ・フジテレビ系、月曜午後10時)だった。「終幕のロンド」は世帯テレビオン率でも6位とまずまずだが、「フェイクマミー」は世帯テレビオン率では12位とやや低迷していた。

 注目度1位の「終幕のロンド」は、主演の草なぎ剛さん演じる遺品整理人の鳥飼樹が、遺品整理会社の仲間たちと共に、さまざまな事情を抱える家族に寄り添っていくヒューマンドラマ。妻を亡くし、幼い息子を1人で育てるシングルファーザーとして生きる鳥飼が、遺品に込められた故人の最期のメッセージを解き明かす感動の物語とともに、切ない大人の恋も描かれる。

 妻を失った痛みを知るだけに、遺品を通してさまざまな家族の痛みにも真摯に寄り添おうとする鳥飼の姿を演じる草なぎさんに自然に引き込まれてしまう。遺品整理のほかにも、御厨ホールディングスの問題も物語に絡んできそうで、今後の展開にも期待が高まる。全年代の「男性」「女性」とも注目度が1位と、性別を問わず強いところを見せた。比較的若い層にしぼった「コア視聴層」(男女13~49歳)でも5位とまずまずだった。

 注目度2位の「フェイクマミー」は、脚本家の発掘・育成のためのコンクール「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回の大賞受賞者、園村三さんの「フェイク・マミー」を波瑠さんと川栄李奈さんのダブル主演で連続ドラマ化した。波瑠さん演じる転職活動中の元バリキャリOLが、川栄さん演じるシングルマザーの元ヤン社長に代わって母親になりすます物語だ。初回は、元ヤン社長の娘の小学校お受験のため、犯罪行為と知りながら母親を演じることになる経緯がテンポよく描かれ、ついつい引き込まれる内容だった。

 注目度は全年代の「男性」「女性」とも3位、「コア視聴層」は2位と、性別、年代を問わず、多くの視聴者をクギヅケにしていたことがデータからうかがえる。

 注目度3位の「ザ・ロイヤルファミリー」は、あることをきっかけに挫折を味わい、希望を見出せなくなった税理士の栗須栄治(妻夫木聡さん)が、馬主の山王耕造(佐藤浩市さん)との出会いで、止まってしまった人生が大きく動き出す物語。「日曜劇場」らしい、壮大で劇的な演出で毎回楽しませる。

 注目度は全年代の「女性」で2位だったが、「コア視聴層」が7位、「男性」が8位とやや低かった。「日曜劇場」のメインターゲットであり、テーマの「競馬」との親和性も高い「男性」の視線を今一つつかみきれなかった感じだが、今後のドラマの展開で注目度がどう変化していくか、楽しみだ。

 ◇大化けするか? 「じゃあ、あんたが作ってみろよ」

 ちなみに世帯テレビオン率で2位だった「緊急取調室」第5シーズンは、注目度の「個人全体」で6位。世帯テレビオン率3位の「相棒 season24」は注目度の「個人全体」で4位、「コア視聴層」で1位だった。長寿シリーズで、幅広い年代をつかんでいると思われがちの「相棒」が男女13~49歳の「コア視聴層」で1位だったのは少し意外だった。

 注目度のランキングで気になったドラマがほかにもいくつかある。一つは唐沢寿明さん主演の「コーチ」(テレビ東京系、金曜午後9時)。警視庁人事2課から捜査現場に派遣された特命職員、向井光太郎(唐沢さん)の「コーチ」としての的確なアドバイスで、若手刑事たちが成長していく物語だ。注目度は「男性」が2位で、「個人全体」でも5位に入った。

 注目度の「個人全体」で13位だった「すべての恋が終わるとしても」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜午後10時)は、「コア視聴層」では3位に。「女性」も6位で、今後順位を上げる可能性を秘めているかもしれない。

 世帯テレビオン率で4位の「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系、火曜午後10時)も、注目度では「個人全体」11位だったが、「コア視聴層」は6位と潜在能力を秘めた作品。竹内涼真さん演じる海老原勝男の昭和的な“化石男”っぷりがネット上で話題になり、視聴層の広がりを見せており、最終回までに大化けするかもしれない。

 ◇“大物”脚本家のドラマはスロースタート?

 秋ドラマは“大物”脚本家のオリジナル新作が目立ったことも特徴の一つだったが、いずれも初回は好スタートとはいかなかった。岡田恵和さんの「小さい頃は、神様がいて」(フジテレビ系、木曜午後10時)は注目度の「個人全体」で7位、「コア視聴層」4位とまずまずだったが、「アンナチュラル」「MIU404」などを手掛けた野木亜紀子さんの「ちょっとだけエスパー」(テレビ朝日系、火曜午後9時)は「個人全体」で8位、三谷幸喜さんの「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(フジテレビ系、水曜午後10時)は「個人全体」14位だった。スタートはあまりよくなかったが、いずれも次第に巻き返してくるのは間違いなさそう。最終回の注目度ランキングで結果は報告したい。(文・佐々本浩材/MANTAN)

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