解説:「水10ドラマ」日テレVSフジの長き戦い 中断経て新たな傾向も

「冬のなんかさ、春のなんかね」で主演を務める杉咲花さん(左)と「ラムネモンキー」でトリプル主演を務める(左から)大森南朋さん、反町隆史さん、津田健次郎さん
1 / 1
「冬のなんかさ、春のなんかね」で主演を務める杉咲花さん(左)と「ラムネモンキー」でトリプル主演を務める(左から)大森南朋さん、反町隆史さん、津田健次郎さん

 日本テレビとフジテレビが、それぞれ水曜午後10時から放送している“水10ドラマ”「冬のなんかさ、春のなんかね」と「ラムネモンキー」が1月8日の同時刻にスタートした。1年の中断を経て再び始まった“水10ドラマ対決”も4クール目に突入。新たな傾向が見えてきた。

あなたにオススメ

 日本テレビの「冬のなんかさ、春のなんかね」は杉咲花さん主演、今泉力哉監督が脚本のオリジナルラブストーリーだ。連続ドラマとは思えない数十分に及ぶ会話劇とその“生っぽい”内容が早くも話題を呼んでいる。

 同時刻にスタートしたフジテレビの「ラムネモンキー」は反町隆史さん、大森南朋さん、津田健次郎さんのトリプル主演作で、古沢良太さんが脚本のヒューマンコメディー。会話の端々に1980年代カルチャーを盛り込んだおじさん青春ドラマと思わせつつ、ミステリー要素が視聴者の心を掴んでいるようだ。

 第1話の平均視聴率は、「冬のなんかさ~」が世帯3.8%、「ラムネモンキー」は世帯4.8%(ともに関東地区、ビデオリサーチ調べ)と大きな差はついていない。

- 広告 -

 “水10ドラマ”の歴史を振り返ってみると、1980年代から若干の休止はあったものの、日本テレビの水曜午後10時といえばドラマの枠だった。「星の金貨」「14才の母」「ハケンの品格」「家政婦のミタ」「ホタルノヒカリ」と数々のヒット作を送り出してきた盤石のドラマ枠だった。

 一方、フジテレビは何度も水10ドラマに挑戦してきた歴史がある。1990年代の「ショムニ」「お水の花道」をはじめ、2010年代の「家族ゲーム」などを経て、2022年の「ナンバMG5」でドラマ枠が6年ぶりに復活を果たした。

 “横綱”の日テレにフジが挑むという展開が、約30年の間に数回にわたって繰り広げられたが、2024年度に日テレが約50年ぶりにバラエティー番組を編成したことで中断。フジだけが水曜10時にドラマを放送するという状態が1年だけあったが、その後2025年度に日テレがドラマ枠を復活させたことで、再び同じ時間に連ドラが並び立つことになった。

 今年4月に水10ドラマを復活させた日テレの1本目は恋愛ミステリーの「恋は闇」、迎え撃つ形となったフジは医療ドラマの「Dr.アシュラ」を編成。7月期は日テレがスポ根ものの「ちはやふる-めぐり-」、フジがサイエンスミステリーの「最後の鑑定人」、10月期は日テレがヒューマンサスペンスの「ESCAPE それは誘拐のはずだった」、フジが1980年代の青春群像劇「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」と、まだケースは少ないものの、現状では両局ともにミステリー、サスペンス系が多めの編成となっている。

 日テレとフジの“水10ドラマ対決”は分かりやすい図式だけに、以前からたびたび話題になってきた。しかし、最高世帯視聴率が30%を超えることもあった昔ならいざ知らず、TVerをはじめとした見逃し配信の普及もあって、現在は世帯視聴率が5%を切る一方で、見逃し再生数が数百万に達することも珍しくなくなった。特に人によって好みが大きく分かれがちなドラマについて、一つのデータだけで作品としての勝ち負けを決めるのは乱暴で、ほとんど意味がなくなっているといえる。

 ただし、今回1年間の“中断”を経て、一つ確実に変化を感じることがある。ヒットの予測が付かなくなってきているのだ。以前は旬のキャストやスタッフをそろえた無難な作品の方が話題になり、視聴率もついてきていた。しかし2025年度をみてみると、そのセオリーが当てはまらないケースばかりで、実際見てみると両局のドラマとも、試行錯誤を重ね、さまざまな工夫が凝らされているのを感じた。

 もっとも、水曜10時という枠全体でみると、TBSの「水曜日のダウンタウン」が“絶対王者”として君臨しているのが現状だ。視聴率という一つの物差しでは測れない時代に入り、“水10ドラマ対決”は勝敗を競う場というより、両局がそれぞれの思いと覚悟を示す実験場になりつつある。数字の先にある「どんな物語を届けたいのか」が、これまで以上に問われる時間帯となっていきそうだ。(MANTAN/立山夏行)

テレビ 最新記事