4月3日公開の映画「黄金泥棒」(萱野孝幸監督)で主演を務めた田中麗奈さん。映画は、実話から着想を得た痛快なクライムコメディーで、“金(きん)”に魅せられた平凡な主婦・美香子を演じた。主人公に対して「共感する部分ははすごくありました」と明かす田中さん。その言葉の裏にあったある思いとは……。話を聞いた。
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映画では、平凡で味気ない日常に行き詰まりを感じていた専業主婦の美香子(田中さん)が、立ち寄った百貨店でつい“金のおりん”を盗んでしまうところから物語が動き出す。普通であることが幸せと言い聞かされ育った美香子は、どんなに退屈な日々にも自分に無関心な家族にもやりすごしていたが、“金”に魅了され世界は一変。「私にしかできないことをする」という幼き日の夢がよみがえり、“100億円の秀吉の金茶碗(きんちゃわん)”を盗む計画を企てることに……という内容だ。
最初に台本を読んだ際、田中さんは「本当にエンタメとしてすごく面白くて、こんな面白い作品、私が主演でいいんだろうか」という気持ちにもなったという。
「実際にあった事件のことを知らなかったので、それを知ったときの驚きもありましたし、“当事者の方”はどういう気持ちだったんだろうか、そこの心理みたいなものにも興味を惹かれましたが、脚本自体は、監督が実際の事件から着想を得て作られたオリジナルになっていて、笑えるところもありますし、実際の事件にこだわるというよりかは、監督が描かれた美香子像をとらえていこうと思いました」
演じた美香子について、田中さんは「小さい頃から野心はあったと思うんです」と印象を明かす。
「一生懸命働いて、キャリアウーマンになって、いろいろな人に『すごい』と言われたり、何かの研究で社会に貢献したり、そういった意欲や、自分の力で人生か切り開いていくような力強さ、力強く生きていくポテンシャルは持っていたとは思うのですが。両親の『普通が一番』という言葉や、旦那さんからの『仕事を辞めて、自分についてきてほしい』という思いを真っすぐに捉えてしまい、流されていったというか。それらを受け入れていったことによって、今の自分の人生は、外から見るとすごく幸せで、経済的にも困っていないけれど、彼女の中ではどこか腑(ふ)に落ちない、自分の人生を生きられていない状態にあったんじゃないかなと思います」
“金”に魅了されてからの美香子は、“100億円の秀吉の金茶碗”を盗むという大胆な計画を思いつき、人が変わったかのように行動的になっていくが、田中さんがより共感したのは、それ以前の「視界にもやがかかった状態で日常を過ごしている」美香子に対してだ。
美香子とは違って、5歳のときに抱いた「俳優になりたい」という夢をかなえた田中さんだが、美香子と自分とを重ね、「もし、俳優になれていなかったら本当に私はどうなっていたんだろう」と、“if”について考えたことも。
「自分は5歳のときから俳優になりたくてしょうがない人だったのですが。もし、なれていなかったらという恐怖。それくらい思い詰めていたときもあったぐらいなので、なれたからこそ今、生きられているのですが、なれていなかったら精神的に多分、耐えられなかったかもしれないなって。それは本当に生きる術がなくなってしまった状態で、『私、生きているのかな、今ごろ』と思ったりもするんです」
そのほかにも、約6年前のコロナ禍を思い出し、産後も重なって「仕事の現場になかなか立てず、急に人生が変わってしまったことへの恐怖や閉塞感は、最初の方の美香子の状態と重なる部分もあって、かなり共感を持って美香子を演じることができました」と振り返る田中さん。
それらの言葉から改めて感じ取ることができるのは、今も昔も俳優という仕事が田中さんの人生にとってどれだけ大きくて欠かせないものなのかということ。
「それはなんか自分のDNAに刻まれていたというか。俳優になりたいと思った理由付けって、後からいくらでもできると思うんですけど、でもやっぱり理由なく、『そこに行きたい』『そうしないと生きられない』と思ったんです。存在意義みたいな、自分の生きている意味って感じです」
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