トランス:ジェームズ・マカヴォイさんに聞く ボイル監督とは「エンドレスで語り合った」

撮影:Shu Tomioka
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撮影:Shu Tomioka

 「スラムドッグ$ミリオネア」(2008年)などの作品で知られる米アカデミー賞を受賞したダニー・ボイル監督の最新作「トランス」が公開中だ。ゴヤの名画を盗んだ競売人サイモンが、仲間とのいざこざが元で記憶の一部を喪失。名画の隠し場所を忘れてしまったサイモンと、名画を手に入れようと躍起になるギャングの駆け引きが、ハイテンションかつサスペンスフルに展開していく。「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(11年)で若きプロフェッサーXを演じたジェームズ・マカヴォイさんがサイモンを演じている。マカヴォイさんがこのほどインタビューに応じた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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 「何よりも、ダニー・ボイルの作品というだけでやりたかった。とはいえ脚本も大事。読んでよほどひどい内容だったら別だけど、(ジョン・ホッジさん、ジョー・アヒアナさんによる脚本は)読んでみると素晴らしい内容だった。僕が演じる役も本当に面白かった」と、今作のサイモン役に引かれた理由を話すマカヴォイさん。「ずっとボイル監督のファンだった。彼が作る作品は、どれ一つとして同じ内容のものがない。それぞれが体に響くような作品ばかりで、ダイナミックでエキサイティング。いつか一緒に仕事をしたいと思っていたんだ」とうれしさを隠せない。

 念願かなったマカヴォイさんが演じたのは、40億円相当のゴヤの傑作「魔女たちの飛翔」を、ギャングと示し合わせて盗み出そうとする競売人サイモンだ。ところが、突然計画とは違う行動に出た彼をギャングのリーダー、フランクが殴ったことで記憶の一部を失い、名画の隠し場所も忘れてしまう。フランクは焦り、サイモンの記憶を取り戻すために彼を催眠療法にかける。それによってサイモンすら思ってもみなかった記憶がたぐり寄せられ、サイモン自身はおろか、周囲を危険な領域へと引きずり込んでいくことになる。

 マカヴォイさんはサイモンを演じるに当たり、「早い段階で真の姿をバラしてしまわない」こと、「伏線はあとから見ればそれと分かるようにクリアに演じなければいけない」ことなどに腐心したという。また、ボイル監督とはキャラクターについてはもとより、記憶や愛の本質などについてエンドレスに語り合ったという。「例えば、愛というのは記憶を失っても残るものなのかとか、精神面での記憶と肉体面での記憶を、人間はどの程度覚えているものなのかとかね」。その話し合いと自身の演技が奏功し、私たち観客は、まんまとマカヴォイさんとボイル監督が仕掛けた“わな”にはまることになる。

 もちろん、わなを仕掛けるのは彼ら2人だけではない。フランク役のバンサン・カッセルさんと、サイモンに催眠術をかける催眠療法士エリザベス役のロザリオ・ドーソンさんも、その“わな”に加担する。カッセルさんといえば「ドーベルマン」(1997年)や「クリムゾン・リバー」(00年)、「オーシャンズ12」(04年)などに出演し、鋭い眼光のコワもて俳優との印象があるが、当のカッセルさんはマカヴォイさんいわく、「バンサンはナイスガイだよ。いいやつさ。物事に動じず、クールで、それでいて気の置けない奴」と既存のイメージを払拭する。また、「7つの贈り物」(08年)や「アンストッパブル」(10年)などに出演しているドーソンさんについても、「ロザリオはラブリーな女性で、でも最もクールで知的な女優の1人だよ。自分というものをしっかり持っているしね」と絶賛。そんな共演者に恵まれ、「こんなに暴力シーンが多い大変なストーリーの作品を撮っているとは思えないほど」楽しい現場だったという。

 そんな今作を、「とにかく、椅子にゆったり座ってまっさらな心で見てもらいたいな。この作品のよいところは、何回見てもそのたびに新しいことに気づかされるところ。だから何度でも見てほしい」とマカヴォイさんはアピールする。今作には催眠療法が大きく関わっていることから、「催眠療法によって、もし自分の願いがひとつかなうとるすなら何を願うか」と聞いたところ、自然と吸わなくなり、今はまったく吸わないが、「2度とタバコを吸わないという催眠療法があるのなら受けたい」とのこと。ハリウッド映画にも出演するスターにもかかわらず、なんとも普通の率直な回答からは、マカヴォイさんの飾らない人柄が伝わってきた。映画は全国で公開中。

 <プロフィル>

 1979年、英スコットランド生まれ。王立スコティッシュ・アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・ドラマ卒業。スティーブン・スピルバーグさんとトム・ハンクスさんがプロデュースしたテレビミニシリーズ「バンド・オブ・ブラザーズ」(2001年)、リメーク作「消されたヘッドライン」(09年)のオリジナル版、英テレビドラマ「ステート・オブ・プレイ~陰謀の構図~」(03年)などの出演をへて、「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(05年)のタムナスさんを演じる。「ラストキング・オブ・スコットランド」(06年)、「つぐない」(07年)でその演技を高く評価される。ほかの作品に「ウォンテッド」(08年)、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」「声をかくす人」(ともに11年)、「ビトレイヤー」(13年)などがある。11月公開の「フィルス」にも出演している。

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