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ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
放送開始から週間平均視聴率21%超えが続き好調のNHKの連続テレビ小説「花子とアン」。ドラマの撮影は8月末にクランクアップを迎え、放送も残すところ2週間を切った。「ごきげんよう、さようなら」で終わる美輪明宏さんのナレーションや、女優の吉高由里子さん演じるヒロインをはじめとした登場人物が交わす言葉や衣装などドラマの世界観も話題だが、加賀田透チーフプロデューサーによると、関東大震災以前の勢いのあった日本をビジュアル的に表現するため、同作では特に「衣装」に力を入れたという。衣装を担当した澤谷良さん(東京衣装)の話を交えながら、視聴者の目を喜ばせた女性キャストの衣装から同作を振り返った。
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「花子とアン」は村岡恵理さんの著書「アンのゆりかご」を原案に、「赤毛のアン」などを翻訳した主人公・花子(はな)の明治から昭和にかけての半生が描かれる。
同作の衣装を担当している澤谷さんは14年のキャリアを持ち、「花子とアン」が朝ドラ(連続テレビ小説)では10本目の担当になるという。衣装を担当するにあたって「リアリティー半分と遊び心半分」を心がけている。「人の趣味って意外に変わらないもの。各キャラクターの趣味やテーマを統一して、それを最後までやり通すこと」を意識したという。
貧しい小作農家出身のヒロイン・花子の衣装は「半襟がポイント」だ。しかし、刺しゅうを使ってしまうと庶民の花子にしては華美過ぎるため、可愛らしい柄の端切れを使い半襟にこだわった。「昔の写真を見ても頻繁に半襟を変えるということはなかったんですが、そこは“遊び心”です」と澤谷さん。鈴木亮平さん演じる村岡英治と結婚してからは着物の柄を派手にした。「大正バブル、大正ロマンを意識しました。(日本も)いい時代だっただろうし、花子も結婚して幸せな気分のときだったので」と明かす。ちなみに、花子が結婚式で身にまとった黒地の花嫁衣装は澤谷さんがたまたまインターネットで見つけた甲府市の古着屋のものだったという。通常ならば衣装は関東近辺で調達することが多いというが、「今回は甲府で結婚式という設定で、ドラマのもう一つの舞台も甲府」という縁を感じ、甲府の古着屋まで足を運んで衣装を調達した。
花子の“腹心の友”で、九州の石炭王と結婚しながらも年下の青年と駆け落ち事件を起こした、仲間由紀恵さん演じる蓮子もその激動の人生が視聴者の関心を集めた。蓮子のファッションのキーワードは「お嬢様」。「身分が他の人とは違うので一番華やかに。特に女学生時代は一番目立つようにした」と澤谷さん。蓮子は花子より8歳上の設定で、周りと温度差を出すためにも女学生時代はブルー系を中心にそろえた。石炭王の嘉納伝助(吉田鋼太郎さん)との結婚後は落ち着きはあるものの「上品さ」を意識。「有り余る金をつぎ込むような印象が出るように。でも、嫌な感じがしないように衣装が変わっても(視聴者に)受け入れられるような見せ方に工夫した」と明かす。年下の青年・宮本龍一(中島歩さん)との結婚後、蓮子の衣装はぐっと地味になった印象だ。「平民になってからは、着物のランク、素材も落としました。大柄はやめて細かい柄の着物にして質素な感じにしましたが、地味になりつつも、いつまでもどこかお嬢様らしさを入れた」とお嬢様らしさを最後まで追求した。
花子の女学校時代の友人で、卒業後も花子と親交を深めた高梨臨さん演じる醍醐亜矢子は同作の「ファッションリーダー」とも呼べる存在。女学校時代はピンクを中心にまとめ、出版社に就職してからは職業婦人として洋装スタイルで颯爽(さっそう)と働く姿が目を引いた。醍醐の洋装は「時代の流れから洋装をする人もそろそろ出てくるでしょう」ということから生まれたファッションだという。「正確な史実にのっとっていくと、当時洋服を着ている女性はあまりいないので先取りといえば先取りだった」というが、「(大正時代の終わりから現れた)モガ(モダンガール)にならない程度」のスタイルを意識した。
ファッションリーダーでもう一人、忘れてならないのが個性的なファッションが特徴の山田真歩さん演じる作家の宇田川満代だ。澤谷さんによると宇田川の衣装は「遊び心しかない」というファッション的には“攻めキャラ”で、「あえて組み合わせをめちゃくちゃにした」という。宇田川の衣装については、「色を使うのは何色まで」というようなファッションのルールを無視して、たくさんの色を使ったのが特徴といい、「おしゃれに組み合わせをしようとしたらいくらでも(おしゃれに)できるんですが、あえてそこをやらずに変な色を組み合わせていったら宇田川になりました」と強烈キャラ誕生の秘話を明かした。
花子の妹・かよ(黒木華さん)は「可愛らしさ」がポイントで、「アンティーク調の可愛い着こなし。今の人が見ても可愛い組み合わせ」を意識した。「小花柄の花子に対してかよの半襟はチェック柄。最初は柄を抑えめにしていたけれど、途中から大胆にして大正の絶頂期にはやった着物を取り入れた」という。関東大震災後、自分の店を持つようになってからは「派手ではないけれど、大柄の上品な感じに」したものの、「可愛らしさは常に入れるようにしました」とこだわりを明かした。
東京で制作する朝ドラは、9月にスタンバイし、翌年8月のクランクアップまで1年がかりの作業だ。澤谷さんは「朝ドラは主役から脇役まですべてのキャストの衣装を手がけられるので、全体のバランスをとりやすい。大変だけど、やりがいはあります」と担当する醍醐味(だいごみ)を語る。同作については「明治時代までさかのぼって(朝ドラを)担当したことはなかったので、時代を通して見て和装というものをいいなあと思ってくれれば」と期待を寄せる。放送も残すところあとわずかだが、翻訳家として自分の道を力強く歩んでいく花子のストーリーとともに、スタッフがこだわり抜いた衣装の細部まで見届けたい。ドラマの最終回は27日にNHK総合ほかで放送される。
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