ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
人気アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(あの花)のスタッフが手がけたことで話題の劇場版アニメ「心が叫びたがってるんだ。」(略称・ここさけ、長井龍雪監督)が19日、公開される。普段はアニメを見ない層からの支持も集めてヒットした「あの花」のスタッフが再集結したこともあり、注目が集まる「ここさけ」の製作の裏側を長井監督に聞いた。
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「ここさけ」は、「あの花」と同じく埼玉・秩父が舞台で、トラウマを抱え、目立たないように生きてきた成瀬順が、高校の地域ふれあい交流会の実行委員に任命され、仲間と出会うことで変わっていく……というストーリー。「あの花」を手がけた長井監督、脚本の岡田麿里さん、キャラクターデザインの田中将賀さんが再集結したことも話題になっている。
「ここさけ」は、「あの花」を制作中に、長井監督、岡田さん、田中さんの3人に、アニメ制作会社のアニプレックスから「別の作品を作らないか?」という提案があり、企画がスタートしたという。長井監督は「いつの間にか『劇場版で』という話になったんです。劇場版アニメらしいアクションやSFも考えたんですが、素養がないので、普通に高校生の青春ものに落ち着いた」と話す。
「アクションやSFには素養がない」と話す長井監督だが、これまで「とある科学の超電磁砲」を手がけ、10月にスタートする「機動戦士ガンダム」シリーズの新作「鉄血のオルフェンズ」の監督を務めることも話題になっている。「あの花」に続き、青春ものになった経緯について「青春は誰もが経験したものなので、できるかな?と考えていた。自信があるわけではないけど……。(自分は)恵まれた高校生ではなかった。鬱々(うつうつ)とした気持ちを思い出しました(笑い)」と説明する。
長井監督、岡田さん、田中さんの3人の製作体制は少し特殊で、長井監督は「普通はシナリオがあって、キャラクターの絵を作る。今回は、シナリオの前にキャラクターを作り、このキャラをどうするか?と進めた。まずキャラクターを作れば、自然と物語になっていく。3人でやる場合はそれがいいと分かってきた。田中さんの絵を含めて作風だと思う」と話す。
3人は同じ1976年生まれということもあり「共通項が多い」といい、長井監督は「3人はお互いを信頼しているので、やりやすい。本音で話せる。よくも悪くも遠慮がないんです」と関係性を明かした。
長井監督にとって、劇場版のオリジナルアニメを一から作るのは初めての経験だった。「テレビアニメシリーズを5話分作ったらいいのか?と考えていたけど、違うことが分かった。テレビアニメは作る中で、後半は変更する部分もあったりするけど、劇場版は変更ができない。スピード感も違う。テレビアニメも難しさはありますが、違うんです。突き詰めていく中で面白さを感じた」と話すように、苦労も多かったようだ。
「ここさけ」はミュージカルもテーマの一つとなっており、ミュージカル映画「オズの魔法使い」の「オーバー・ザ・レインボー」などの楽曲が登場し、バンド「クラムボン」のミトさんが音楽を担当している。3人で話をする中で、岡田さんがミュージカルを取り入れたいと提案したとという。長井監督は「最初はピンとこなかった」というが、「ミトさんには、シナリオを作っている段階で、参加していただいて、一からミュージカルについて教えてもらった。曲ができる中で、方向性が見えてきたところもあります。ミトさんに参加していただき、助かりました」と話す。
「ここさけ」は、「あの花」と同じく秩父が舞台だ。その狙いを聞くと「他の場所も考えたのですが、秩父はちょうどいいんです。新潟の田んぼが広がっている平野で育ったので、山があるとテンションが上がる。海は僕にはまぶしすぎるし、そんなにリア充じゃない(笑い)。秩父は田舎すぎないし、多少、閉塞(へいそく)感もあって、ちょうどいいんです。話を落とし込みやすい」と説明。「あの花」の放送以降、秩父では、舞台となった場所にファンが押し寄せたことも話題になっており、長井監督は「秩父の方に喜んでいただいているので、少しでも恩返ししたいですね」とうれしそうに話す。
「あの花」は深夜アニメとして放送されたが、普段、アニメを見ない層からも支持を集め、ヒットした。長井監督は「あの花」や「ここさけ」を作るにあたって注意したことを「初見で不快にならないようにした。深夜アニメはすごく先鋭化されていて、だからこそできる表現もあります。自分自身はアニメばかり見てきたけど、アニメを普段、見ない人も抵抗がないようなフラットな作品を作ろうとした。深夜アニメを作っていると慣れてしまっているけど、一般的じゃない表現もあるんです。例えば、パンツが出てこないとか、ちょっとした部分なんですけど」と語る。
「高校生の時の悩みが今も変わっていないんですよ。いまだに悩んでいる。成長する機会をなくしたことを開き直って作っている」と話す長井監督。悩みを抱えた高校生の青春が描かれた「ここさけ」は、「あの花」のように多くの人の心をつかんでいくのかもしれない。
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