ジュリエット・ビノシュさん、クリステン・スチュワートさん、クロエ・グレース・モレッツさんら豪華女優が共演した「アクトレス~女たちの舞台~」(オリビエ・アサイヤス監督)が24日から公開される。華やかな世界に生きる女優の光と影を、ドラマチックに描き出した。スイスのリゾート地として知られるシルスマリアでの絶景も見ものだ。
ウナギノボリ
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マリア(ビノシュさん)は、若い頃の出世作のリメーク作にオファーされるが、ヒロイン役ではなく、ヒロインに振り回される中年女性役の方だった。自分を見いだしてくれた劇作家の誘いでスイスのシルスマリアに滞在することになったマリアは、マネジャーのバレンティン(スチュワートさん)を相手に、芝居の稽古(けいこ)に打ち込むが、自分の役柄を肯定できずに苦悩する。一方、ヒロイン役は、ハリウッド大作で活躍する若手のお騒がせ女優のジョアン(モレッツさん)だった。役に打ち込めないマリアは、イライラをバレンティンにぶつけてしまう……という展開。
誰にも訪れる「老い」。きらびやかな世界にいる女優にとって、これほどの試練はない。ビノシュさんがそんなスター女優の葛藤を演じるから、ステージ裏をのぞき込んでいるように生々しく感じた。若いマネジャーを相手に繰り返される芝居の内容が、マリアの心を映し出している。2人の対比からは、マリアの頭の硬さが目立ち、ヒロイン役に抜てきされた鼻っ柱の強い新進女優の登場で、ますます「老い」が強調されるという残酷な仕組み。中年女性と若い女性との対比が映画を貫くが、この設定は、なにも女優の世界に限らず、実生活にも置き換えられそうだ。世の女性は、なんとか若さにしがみつこうとするが、この映画は老いることを「悪」としてはいない。マリアは過去にとらわれてはいるものの、確かな経験と成熟がある。これらは、中年女性の宝だ。そして、必ずそれを見てくれる人がいることで、希望へとつながっていく。女性たちの葛藤をすっぽりと抱え込んでくれる、舞台となったスイスの大自然に目を奪われる。特に「マローヤのヘビ」と呼ばれる神秘的な雲の自然現象は必見。マリアに人生の転換期を伝えるかのようだ。今作でスチュワートさんが、米国人女優として初の仏セザール賞最優秀助演女優賞を獲得した。24日からヒューマントラストシネマ有楽町(東京都千代田区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。いまBS12で再放送されている昭和のドラマ「ありがとう」を楽しんでいる。
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