人知を超えた能力を持つ“能力者”たちの活躍を描く米ドラマ「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」が、動画配信サービス「Hulu」で配信中だ。その番組の中で、一際目を引く能力者がいる。日本人女性のミコ・オオトモだ。ミコには、ゲームの世界と現実の世界を行き来できるという驚くべき能力がある。そのミコを演じているのが、京都府出身の女優、祐真(すけざね)キキさんだ。1カ月にわたるアフリカ、タンザニアでのバックパッカー体験が女優になるきっかけだったという。番組PRのために11月に“来日”した祐真さんに、撮影の裏話や見どころ、さらに女優になるまでの道のり、さらに今後の抱負などを聞いた。
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「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」は、全米で2006年から放送がスタートし、日本でも大ヒットしたテレビシリーズ「HEROES/ヒーローズ」の新たな章として位置付けられている。番組には、前作に出演したミスター・ベネット役のジャック・コールマンさんや、ヒロ・ナカムラ役のマシ・オカさんも出演する。
祐真さんはミコ役に決まったと連絡を受けたときは、「部屋中を駆け回り、泣くぐらいうれしかった」と振り返る。ただ、今作に出演したことで生活が変わったかと聞かれれば、その実感は「ない」という。放送されたあと、声を掛けられることを期待してロサンゼルスの街中を「結構歩き回った」そうだが、予想に反して、「誰からも声を掛けられなかった(笑い)」。その後も気づかれたのは「一度だけ」。その代わり、「友達や知り合いが一気に増えました。親せきも増えるんですよ。会ったことのない親せきから、『赤ちゃんのときに抱いたんだよ』みたいなメッセージが突然届くんです。うれしいですけど、面白いですよね」と母国での反応をありがたがる。
ミコは、刀を抜くと失踪中の父ハチロー・オオトモが作ったゲーム「エバーナウ」の中に入り込み、“刀ガール”というキャラクターに変身する。刀ガールも、モーションキャプチャーの技術を借り、祐真さん自身が演じた。アクロバティックな動きに加え、華麗な刀さばきを披露するが、刀に初めて触れたのは、かれこれ5年前だそうだ。日本の俳優養成所に通っていたとき、「ワークショップに殺陣のクラスがあって、とりあえず行ってみよう、みたいな」軽い気持ちでのぞいたのが最初だった。そこでアクションの基礎を教わりながら、日本のアクション映画数本に出演。「そのときにすごくトレーニングさせられて、一応カメラの前に立っても大丈夫」なくらいにまでなったという。コンピューターグラフィックスで処理された刀ガールを初めて見たときは、「正直、えっ? 私の顔ってこんな感じ?(笑い)」と戸惑い、「でも、(おかしいと)いえないし、納得する以外ないじゃないですか。アニメだし。もうちょっと似ていてほしかったですけどね」と思ったそうだが、今は、その刀ガールにもファンがつくまでになり、「あれでいいです(笑い)」と満足している。
日本語のせりふは、祐真さん自身が英語の台本を翻訳した。「台本が撮影直前で変わるんです。誰か一人(のシーン)を通すと、台本が来るのが遅れちゃう」という裏事情はあるものの、「できるだけナチュラル」な日本語を心掛けたという。英語は、1年間の米国留学で習得した。
現在、26歳の祐真さんが米国に留学したのは高校2年のとき。そこから女優になるまでの道のりが興味深い。もともと米国の映画やドラマの世界に憧れていたというが、その道を決定づけたのは、一旦帰国後、高校を卒業し、カラオケ店のアルバイトで貯めたお金でアフリカのタンザニアを旅したときだ。そのとき、国際機関で働く機会を得て、難民支援の活動をする米国人と出会った。発展途上国で苦しんでいる人々や環境問題に関心があった祐真さんは、「有名になれば世界に自分の思いを発信できる」と考え、有名になる手立てとして女優の道を選んだのだ。そして、2010年、21歳のときに東京の俳優養成機関アップスアカデミーに入り演技のいろはを学び、翌年渡米。2015年、「何のオーディションかもわからない」まま今回の非公開のオーディションを受け、晴れてキキ役を射止めた。
とはいえ、渡米後からそこまでトントン拍子で来たわけではない。その間に受けたオーディションの数は優に100を超え、エージェントも三度ほど変わった。また、撮影に参加したドラマは放送されることなくお蔵入りになった。メインキャストで出演した日米合作のドラマも、編集の段階で制作が頓挫(とんざ)した。それでも「苦労した感覚がまったくないんです。基本的に好きなことしかしていないので。やりたいことをするために、やらなきゃいけないことはやりますが、嫌なことは進んではやらない」とさばさばと語る。
その上で、「でも」と言葉をつなぎ、「夢は、大きく持った方がいいかもしれない。人にいうのが恥ずかしいぐらいの壮大な夢を持った方が、それまでの小さなゴールが簡単にかなっていくように思うから。例えば、私は女優になることがゴールじゃありません。有名になることのツールとして、『HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン』に受かったという感覚なんです」と正直な気持ちを明かす。そして、「だから、何をやりたいのか分からないと迷っている人がいるなら、小学校のときに見た夢を追いかけてみてもいいんじゃないかな。実際、それを追いかければかなうから」と自身の体験を振り返りながら、夢を持つ人たちにエールを送った。
祐真さんの「ゴール」は、あくまでも「環境破壊の現状や、難民の人たち、あるいは発展途上国でつらい思いをしている人たちの現実を、広く世界に発信する」ことだ。「それが自分にできることなのかなと思います。ただ、自分がそこを訪れることで現地の人たちが危険な目に遭わないようにしなくてはなりませんが」と配慮を見せつつ、「まずは有名になることが第一目標です」と目を輝かせる。
そのゴールに向け、「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」に出演することで一歩、踏み出した祐真さん。10月に撮影が終了した全13話のうちイチオシのエピソードを挙げてもらうと、ゲームの中でミコが「関西弁をしゃべる」ダーク・ミコと戦うエピソード6を挙げた。もちろん、ダーク・ミコも祐真さんが演じている。残念ながら「ダーク・ミコは一瞬しか出てこない」そうだが、「シーズン2があれば、リアルにダーク・ミコを出してほしいんですよね」と期待を寄せる。今のところシーズン2の予定は「まったくない。まだ分からない」そうだが、「あってほしいですけどね」と言ったあとで、「ある気がするんですけれど……」と笑顔で語った。米ドラマ「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」は現在「Hulu」で配信中。
<プロフィル>
すけざね・きき 1989年生まれ、京都府出身。高校在学中に1年間米国に留学し、英語を習得。高校卒業後、アルバイトで貯めたお金でアフリカ、タンザニアへ行き、1カ月のバックパッカー生活を送る。帰国後、高校を卒業。21歳の時に東京の俳優養成機関アップスアカデミーに入り、演技を勉強し、翌年、米ロサンゼルスへ渡った。さまざまなオーディションを受け、今回、「HEROES Reborn/ヒーローズ・リボーン」のミコ・オオトモ役を勝ち取る。初めてはまったポップカルチャーは、米ドラマ「フルハウス」(87~95年)、「ロズウェル 星の恋人たち」(99~2002年)、「サブリナ」(96~03年)、ミュージシャンではアヴリル・ラヴィーン。さらに、日本の3人組ダンスボーカルユニットw‐inds.(ウインズ)に「小学生の頃はまった」という。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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