1974年にニューヨークのワールドトレードセンターの二つのビルの間を命綱なしで綱渡りしたフランス人フィリップ・プティさんの実話を基にした映画「ザ・ウォーク」(ロバート・ゼメキス監督)が23日から公開される。地上411メートルという高さを3Dで体感するヒヤヒヤ感が楽しめ、夢を追う人間の姿に大きな希望をもらえる。
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フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン・レビットさん)は、8歳の頃見たサーカス団の綱渡りに憧れて、独学で技を得たのち、サーカス団の座長パパ・ルディ(ベン・キングズレーさん)に教えを受けるが、ささいなことで対立して飛び出してしまう。1973年、パリの路上で綱渡りの大道芸をしていたフィリップは、偶然目にした雑誌に建設中のツインタワービルの記事を見つけ、屋上と屋上の間にワイヤロープを張って歩きたい衝動に駆られる。恋人のアニー(シャルロット・ルボンさん)や友人のジャン・ルイ(クレマン・シボニーさん)を巻き込んで夢へと前進していく……という展開。
「3D」「天空の綱渡り」--それだけで何やらものすごいことを体感できそうだと分かるが、ゼメキス監督の作品だけあって、主人公プティの夢を共有する楽しさに満ちあふれ、熱い気持ちにさせられる。偉業を成し遂げる人に共通する理由、「好きだから」というシンプルな気持ちを原動力に、夢の実現へと突き進んでいく一大プロジェクトの模様が描かれる。「共犯者」となる仲間を作っていく過程や、建設中のビルの下見に入るためにさまざまな怪しい手はずを整えなければなかった様子などが、スパイ映画を見ているような面白さでつづられていく。高所恐怖症の友人の登場で、屋上での作業のハラハラ感が倍増。違法侵入と大いなる危険も手伝って、このゲリラ的な芸術活動にくぎ付けになる。
プティさんご本人のドキュメンタリー映画「マン・オン・ワイヤー」(2008年、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞)があって、結果が分かっているのにハラハラし通しだ。一人の男の生きざまもしっかりと描きこまれ、夢をかなえる人間の精神力と行動力に感服する。己と仲間と綱を信じて、観客を喜ばせたい一心でどんな場所でも綱渡りを楽しむ、この少年のような主人公が大好きになるはずだ。プティさんご本人から綱渡りの指導も受け、「(500)日のサマー」(09年)のレビットさんが熱演。実話の奇跡を再現した。23日からユナイテッド・シネマ豊洲(東京都江東区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。ワイヤを渡っている最中よりも、ビルのヘリにへばりついて作業しているところが個人的にヒヤヒヤしました。
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