ヒップホップやレゲエから影響を受けながら、心地よいハーモニーやメロディーを聴かせる3人組ボーカルグループ「ベリーグッドマン」が、「ありがとう~旅立ちの声~」で9日にメジャーデビューを果たした。「誰かの支えになる音楽を作っていきたい」と話す3人に、それぞれのルーツや楽曲が生まれた経緯などを聞いた。
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――それぞれの役割はどういうふうになっているんですか。
Roverさん:3人がボーカルで、ハモりもします。HiDEXがトラックメーカーで、曲作りも3人でアイデアを持ち寄ってやったりします。
HiDEXさん:制作は、基本的には僕の家に機材がいろいろあるので、そこで集まってやっています。
――もともとは、どういう音楽が好きだったんですか?
Roverさん:僕は普通にポップスです。
HiDEXさん:僕も普通にポップスを聴いていました。歌もので、アコギ(アコースティックギター)を弾きながらフォークっぽいものとか。MOCAはレゲエ好きなんだよな。
MOCAさん:うん。18~20歳まではレゲエのDJをやっていて。それ以降は、クラブでやっているオールジャンルのイベントなどでMCをするようになって。
HiDEXさん:だから、ベリーグッドマンの音楽性も自然と今のような形になりました。途中でラップっぽいものもやりつつ、一番自分たちに合ってると思えるのが、今のスタイルですね。
――好きなアーティストは?
HiDEXさん:3人が共通して好きなのは、Def Techさんです。憧れの大先輩です。
MOCAさん:僕が18歳で音楽の世界に入るきっかけになったのも、Def Techさんでした。他人のライブを見て泣いたことはそれまでなかったんですけど、Def Techさんの武道館ライブのDVDを見て、心を動かされて。
――曲作りのときは、どういうふうに方向性を決めていくのですか。
Roverさん:そういうのを決めると、たいがいうまくいかないんです(笑い)。共通ワードとしてDef Techさんはありますけれど、それ以外の好きな音楽やテイスト、生活スタイル、キャラクター、好きな女の子のタイプもまるで違うので。その3人の個性や感性を大切にして、粒をそろえるのではなく、バラバラでもいいからそのままアピールできたらいいなと思っていて。それがベリーグッドマンであり、それをやっていくうちに、新しいジャンルになるのではないかと思っています。
――ベリーグッドマンという名前はジャズのベニー・グッドマンから?
Roverさん:HiDEXが直感的に言ったんです。響きがいいし、ベニー・グッドマンとも似ているし。中学のとき、吹奏楽部でトランペットを吹いていたんですけれど、当時ベニー・グッドマンの「Sing Sing Sing」という曲をやったことがあって。そういう青春時代のことも思い出しながら付けた感じですね。
HiDEXさん:それで、インディーズのときのアルバムタイトルが「Sing Sing Sing」なんです。
――ジャズ系のアーティストと勘違いされたことは?
HiDEXさん:めっちゃありますよ。でも、あえて狙っているところでもあるので。
MOCAさん:僕らのファンの方が、間違えてベニー・グッドマンを買ってしまったということも。
Roverさん:大阪っぽいボケといいますか(笑い)。あと、ベニー・グッドマンって、白人でありながらもともと黒人音楽だったジャズに革命を起こした方です。そこに懸けて、大阪人である僕らが、東京を中心に動いているJ-POPに革命を起こしていこうと。そういう異端児的なスタンスでいたいというか。
HiDEXさん:完全にあと付けですけどね(笑い)。
――「ありがとう~旅立ちの声~」は歌詞検索サイトでも話題になっています。どういうきっかけで生まれた曲ですか。
Roverさん:メジャーデビューシングルは、名刺代わりになるものなので、すごく考えました。アッパーチューンでいくのか、アゲアゲでタオルを回す曲でいくのか、ラブバラードでいくのか、メッセージチューンなのか、季節感に合わせた曲にするのかなど。さんざん考えていく中で、父親のことを思い出したんです。
父は喉頭(いんとう)がんで亡くなる前に「旅立ちの声」という文を書いていたんです。その父が書いた文のタイトルを付けたいと18歳のときから思っていて、そのことをハッと思い出して。で、父の思いを乗せながら、多くの人に聴いてもらえるような曲を作れないかと考えながら作っていきました。
HiDEXさん:僕とRoverは幼なじみなんですけど、高校生の頃、一緒に曲作りを始めて、そのときすでに「旅立ちの声」という曲を作りたいという話をしていました。
Roverさん:だから、そもそもは「旅立ちの声」という曲だったんですよ。そこに、ARIGATO MUSICという事務所に所属していることや、3月9日(サンキュー)にデビューということを含めて「ありがとう」と付けました。
――制作で一番悩んだのはどういう部分ですか?
Roverさん:やはり歌詞です。歌詞は、聴いた人によって受け取り方が変わるから。自分たちの思いだけを伝えればいい部分と、全体のバランスを考えながら書く部分、その両方をうまく一つにしたいと思って。さじ加減が難しかったです。
MOCAさん:インディーズ時代は、キミとかアナタ、自分とかボク、統一したものはなくて、それぞれの個性が出ればいいと思っていました。でも今回は、そういう部分での統一認識や、みんなが共通で思い浮かぶ情景みたいなところを意識しました。なので、それぞれ自分が歌うパートの歌詞を自分で書くんですけれど……。僕は、高校のときに亡くした友達のことを思いながら書いていて。逐一メンバーと相談しながら書いていきました。
Roverさん:そういう部分では、新しい挑戦もできた曲です。めっちゃ自分たちで頑張って作ってきたラーメン屋さんの味を、カップめんにして全国のコンビニで売るみたいな感覚というか(笑い)。こだわるところはこだわり、同時にもっと広い視野も持たないといけないみたいな。
HiDEXさん:僕は、自分の母親のことを思い出しながら、学校を卒業したり新しいことを始めるときの心境を思い返して歌詞にしていきました。
――それぞれの経験を歌いながら、根底には3人共通した感謝の気持ちや人を思う気持ちがあるということですね。
Roverさん:はい。3月は卒業式シーズンで、別れのシーンには、感謝の気持ちがあふれるものだと思っています。別れは、それまでに培った思い出があるからこそ、余計に思いがあふれるし。悲しい気持ちよりも、ありがとうという感謝の方が9割なんじゃないかと思っていて。
MOCAさん:たぶん、ありがとうって口に出して言うのは、めっちゃムズい(難しい)と思うんです。特に家族とか身近な相手には。これを作ったとき、自分自身でも最近「ありがとう」って言っていないことに気づいたし、言おうと思っても目を見るだけで照れくさいし。だから、例えば普段は突っ張って親にも迷惑をかけていたヤンキーが、親元を離れて就職とかするときに、パッと親にこのCDを渡して気持ちを伝えてくれたらうれしいですね。照れくさくて言えない気持ちを、このCDに託して自分のメッセージとして使ってほしいです。
Roverさん:ありがとうって、今や世界で知られている言葉で、それをタイトルに大々的に付けるのはどうなのかな、ということも考えました。ありがとうと付いたタイトルの曲はすごく多いし、だいたいどんな曲かも想像がついてしまう。そこにあえて挑戦したというのは、本当にチャレンジでした。曲としては完成して自信もあるけれど、曲を育てるのは僕らと聴いてくれる皆さんだと思っています。皆さんが曲を聴いたときの反応や意見を聞いて、徐々に僕ら自身も育っていくのかな、と思っています。この曲をきっかけに、いろいろな感謝の思いが連鎖する曲になったらうれしいです。
――今後の目標は?
MOCAさん:2018年までに大阪城ホールでワンマンライブをやることが目標です! 地元が大阪なので。
Roverさん:まずは大阪からてっぺんを取りに行かないと。これから始まるツアータイトルでも「てっぺんとるぞ宣言」と付いているので、豊臣秀吉くらい音楽業界でてっぺん取るぞ!と。秀吉のソウルを受け継ぎ、ストリートでこういうジャンルの先輩であるET-KINGさんの思いも背負ってやっていきたいです。
HiDEXさん:ツアータイトルには、「超好感男の進撃」とも付いているので、止まらず進んでいきます。攻め続ける気持ちで突っ走ります!
<プロフィル>
Roverさん、MOCAさん、HiDEXさんの3人によって大阪で2013年に結成。14年にインディーズデビューを果たし、シングル「コンパス」やアルバムが、iTunes総合チャートでトップテン入りを果たす。3月9日にシングル「ありがとう~旅立ちの声~」でメジャーデビューを果たした。3月27日に鹿児島・CAPARVO HALLを皮切りに、5月15日の東京・新宿BLAZEまで、9公演のツアー「ベリーグッドマン“てっぺんとるぞ宣言”ツアー2016~超好感男の進撃~」を開催予定。
(インタビュー・文・撮影:榑林史章)