「オフサイド・ガールズ」(06年)や「チャドルと生きる」(00年)といった作品で知られるイランのジャファール・パナヒ監督による作品「This Is Not a Film これは映画ではない」が22日に公開される。なんとも奇妙なタイトルだが、それにはワケがある。実はパナヒ監督は、反体制的な活動をしたという理由で20年間の映画製作禁止、出国禁止、マスコミとの接触禁止、さらに6年間の懲役刑を申し渡され、自宅軟禁中に映画監督仲間のモジタバ・ミルタマスブ監督の協力の下で撮影し、作品として完成させた。映像はUSBファイルに収められ、お菓子の箱の中に隠され、あるルートで11年のカンヌ国際映画祭に渡りお披露目されたというつまり、映画を撮ると逮捕されてしまう、だからこのタイトルがつけられたのだ。
ウナギノボリ
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その後ミルタマスブ監督も別件でイラン政府により出国を禁止されたそうだ(詳細は公式サイトを参照のこと)。映画、というかその映像はいきなり始まる。画面脇から現れるパナヒ監督。どうやらそこは自宅のリビングで、朝食を食べながらiPhoneをチェック。イランでももはや携帯電話は珍しいものではないと聞くが、やはりその姿は新鮮だ。しかしもっと驚いたのはパナヒ監督の暮らしぶりだ。モダンで小ぎれいで、かつ広々とした部屋の様子には驚かされた。
それはさておき、じゅうたんにテープを貼って“にわか舞台”を作り、映画を再現してみせるパナヒ監督。撮影中には、食料を届けに来る人がいたり、犬を預かってくれないかと同じマンションの住人が頼みに来たり、テレビでは日本の東日本大震災の映像が流れたり。きちんとしたすじがあるわけではなく、ただただパナヒ監督の姿が映し撮られていく。だが、映画を作れないことへの監督自身の焦りやいらだち、むなしさ、悲しみがはっきりと伝わってくる。その一方で、部屋の中を歩き回るペットのイグアナ“イギ”の悠然とした態度に思わず笑みがこぼれる。不謹慎ながら、この作品は面白い。しかし同時に、こうした状況にパナヒ監督を追い込んだイラン政府の恐ろしさを強烈に感じた。22日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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