テレビ試写室:「流星ワゴン」 絆の再生・家族愛だけじゃない 鍵は西島&香川の息の合った演技 

連続ドラマ「流星ワゴン」のワンシーン=TBS提供
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連続ドラマ「流星ワゴン」のワンシーン=TBS提供

 ドラマからドキュメンタリー、バラエティー、アニメまで、さまざまなジャンルのテレビ番組について、放送前に確認した記者がレビューをつづる「テレビ試写室」。今回は、俳優の西島秀俊さん主演で18日から放送される連続ドラマ「流星ワゴン」(TBS系)だ。

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 原作は、累計発行部数110万部を突破する直木賞作家・重松清さんの同名小説で、西島さんが演じるのは、真面目な性格ながら、職も失い、家庭も崩壊寸前と、絶望のふちに立たされた男・永田一雄。一雄が「もう死んでもいい」と思ったとき、突然目の前にワゴン車が現れ、5年前に死んだはずの“橋本さん”(吉岡秀隆さん)と橋本さんの息子が案内人となり、一雄の人生の分岐点になった大切な過去を巡る不思議な時間旅行に出る。

 最初の旅先(1年前の上野駅近く)で一雄が出会うのが、香川照之さんがふんする父・忠雄。故郷の病院に末期がんで入院しているはずの忠雄がなぜ東京にいるのか、なんで自分と同じ年なのか、一雄は混乱しつつも、忠雄の豪快な性格にうながされ行動をともにするうち、妻や息子との現状を招いてしまった、ささいなきっかけや小さな過ちに気づき、人生のやり直しを図ろうとする……というストーリー。

 第1話を鑑賞して感じたのは、タイムスリップものという時点で荒唐無稽(むけい)な設定でありながら、一雄が歩んできた人生、他者との関わりと難しさなど、その感情にリアリティーがあり、見る者の胸を打つ原作の魅力が損なわれていないということ。また「親子や夫婦の絆の再生」「家族愛」を主軸のテーマにしながら、一雄(または忠雄、一雄の妻や息子も)は、本当に人生をやり直すことができるのかと、先の展開を知りたくなるようなミステリー仕立てになっているため、原作ファンも次回の放送が楽しみになるはずだ。

 どこで人生の歯車が狂ってしまったのか思い悩み、死の一歩手前まで追いつめられる一雄の悲壮感、方言丸出しでけんか早く荒くれ者の忠雄の、それでいてどこか憎めないキャラクターとの対比も絶妙で、2人のやり取りは漫才にも似たおかしさもある。この作品にこんなにもコメディー要素があったのかと、新たな発見もあった。もちろんこれらは、2012年のドラマ「ダブルフェイス」、14年の「MOZU」と共演が続く西島さんと香川さんの息の合った演技のたまもの。明るい性格の幽霊“橋本さん”役の吉岡さんや、どこかミステリアスな妻・美代子役の井川遥さんら他のキャストにも注目して見てほしい。

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