小新井涼のアニメ考:「キャラリスペクト」の模倣感と執着

アニメ「俺物語!!」の試写会を訪れた小新井涼さん
1 / 4
アニメ「俺物語!!」の試写会を訪れた小新井涼さん

 週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんが、アニメにまつわるさまざまな事柄についてつづります。第11回は、アニメキャラをちょっぴりまねする「キャラリスペクト」について語ります。

ウナギノボリ

 ◇

 胸に手をあてて思い返してみてください。あなたはアニメキャラを好きになりすぎて服装や好物、果ては口調の一部などをまねしてしまった……、という経験はありませんか? もちろん私はあります! というかオタクならば誰もが通る道だと信じています!!

 お気に入りのキャラと少しでも共通点を持つことで、ちょっとした“おそろい気分”を味わえるこの行為は、“完全にキャラになる・世界観に入り込む”のを目的とする「コスプレ」とはちょっと趣がちがっていて、いわば「キャラリスペクト」と呼べるものです。

 あくまでも、やっている自分だけが分かっていればいい、ある意味コスプレ以上に自己満足で楽しい行為なのですが、それゆえに加減が難しく、自分ではさりげないと思っていても一歩間違えると周りから異常な目でみられたり忘れたくなるような黒歴史も生みかねません。

 好きなキャラをイメージした色や小物を身につける、好物をまねするくらいならば大抵は安全です。

 私も「プリティーリズム・レインボーライブ」のヒロさまが好きな時は黄色のバラのアクセサリーを集めたり、「黒子のバスケ」の黒子にハマった時は毎日のようにバニラシェイクを飲んだりしていました。

 アニメ好き以外には違和感なく映る上に、分かる人には伝わる主張なのでキャラリスペクト初挑戦の方にもオススメですし、街中で同志と思われる人を見かけると“お前の気持ち、俺は分かるぜ!”という謎の連帯感も味わえます。

 一方で、黒歴史になりやすく、扱いに注意が必要なのが、激しい髪形や口調のまねです。

 私も昔、「咎狗(とがいぬ)の血」のアキラが好きすぎて髪を青く染めたことがあったのですが、「アニメキャラリスペクトとは思われないだろう……」とタカをくくっていたところ、ヱヴァの綾波リスペクトだと勘違いされたままうわさされてしまい「違うけど本当はこのキャラだとも言えない!」というジレンマに陥ったことがありました。

 今だから言えますが、小学生のころにはオタクの通過儀礼に違わず、語尾をつけて話していたことも……。え、みなさんありますよね? ありましたよね? にょ、とか……ね。
 タイからの留学生に聞いた話ですが、現地でもアニメファンがNARUTOの額当てをして学校に来たことがあったそうで、「オタク魂は全国共通とはいえさすがにそれはアウトだわー」と笑いながらも、プリキュアパーカを舞台の稽古に着ていった過去はそっと心の奥にしまい込みました。

 とまあ今となっては恥ずかしい思い出なんかもありますが、日常生活においてもキャラを感じることができるキャラリスペクトの“ペアルック感覚”は一度味わうと忘れられず、たとえ黒歴史となろうがなかなかやめられるものではありません。

 最近になって「スキヤキ」などのアパレルメーカーや、セーラームーンランジェリーなどの"さりげないおそろい気分"が味わえるグッズが増えてきたのはそんな“キャラリスペクター”たちには朗報ともいえるでしょう。

 この年でそれらを着るのは、それもそれで新たな黒歴史を生みそうなので小新井は自重しようと思いますが……、服装以外にも工夫次第でいくらでもおそろい気分が味わえるのがキャラリスペクトの醍醐味(だいごみ)です。

 みなさんもアウトとセーフの線引きには注意しつつ、常識の範囲内で楽しんでみてください。

◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めている。アニメを社会学の観点から研究するため、2015年4月に明治大学大学院に入学、情報コミュニケーション学を専攻している。

写真を見る全 4 枚

アニメ 最新記事

MAiDiGiTV 動画