週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴し、アニメを使った町おこしのアドバイザーなども務める“オタレント”の小新井涼さんが、アニメにまつわるさまざまな事柄についてつづります。第14回は、大学院に入った小新井さんが大学院でのアニメ研究について語ります。
ウナギノボリ
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「学術的にアニメを研究したい!」と大学院に入学してはや4カ月。あっという間に春学期も終わり、久々に学生の夏休み(ただしリア充感ゼロ)というものを迎えています。
しかし「大学院でアニメを研究」とだけ聞いても実際何をしているのか、なかなかピンとはこないのではないでしょうか。実をいうと私自身も、入学するまで、そもそも大学院での勉強というのはどういうものなのか想像がつかずにいました。
そんな手探り状態ながらも春学期を過ごしてみて、大学院での勉強のこと、それを通してアニメにどうアプローチしていけそうか、ちょっとずつですが分かってきたことがあります。
まずは大学院での勉強に関してですが、実際にやってみて感じたのはまるで“料理”のようだということでした。やることは主に講義と自主学習が中心なのですが、例えば最終目標である「論文」を一つの“完成した料理”だとすると、講義は、レシピや包丁などの調理方法・調理器具のような存在だと思います。
「メディア論」なら、アニメをテレビやネットなどの媒体との関係から、「心理学」なら、アニメをみる私たちの反応や関心から、「社会学」なら、アニメというものが社会の移り変わりの中でどのような影響を受けて変遷してきたか……、などなど、講義で学ぶさまざまな観点はアニメというメイン食材に対して何を使ってどう切り込むかという“手段”を提案してくれるのです。
時にはアニメ視聴時ににやにやしてしまうようなお話が聞けることもあり、メディア論で習ったトロント学派の“文字よりも声に重きを置く”という特徴なんかは、現在放送中の「アクエリオンロゴス」のメインテーマに通じていて、アニメとの不意のリンクになんだか感動してしまいました。
一方で、先行研究や文献を調べる自主学習は、料理を作り上げるための食材や調味料を吟味する作業と似ています。
例えばアニメに関する論文一つを書くにしても、肉料理が肉のみでは作れないように“アニメ料理”という論文を作るために必要な食材や調味料など、アニメ以外の“素材”が必要となってくるのです。
「アニメ」という言葉ひとつを分析するにも、“アニメーション”から“アニミズム”に至るまで関連ありそうな言葉に関する文献を集め、そのアニメ料理を作るにはどの食材が必要か選ばなければいけません。
似たような先行研究がすでにあるとしたら、その主張を補足しながら新しい意見を述べるのか、はたまた否定するのか、その料理に一番あう味付けというのも探していかなければいけないのです。
こうして料理に例えてみると、未知の存在であった大学院での勉強もおおよその概要がわかってきたような気がします。つまり私は今、大学院で実際に何をしているかというと、2年間をかけて料理をしている最中なのです。普段は家で料理をしないのも学校でしているからだったのですね、きっと。
それらが分かってきた中で、改めて個人的な目標にしたいと思ったのが “アニメの温故知新”です。
大学院での勉強としてアニメの歴史や知らない作品などを勉強しつつ、同時にアニメ関連のお仕事や、放送中の作品の全視聴を通して、最新アニメの考察もさせていただける今の環境は非常にありがたいものだと思います。
そんな貴重な機会を生かして、昔のこと、新しいことのどちらかだけではなく、古きをたずねて新しきを知りながら、もっと広く「アニメ」そのものについて考えていければと思ったのです。
……とは言っても、まだまだ知識不足で勉強不足な状態なことも春学期を通して重々実感させられました。
まずは料理の素材集めのために当面は研究室に引きこもりつつ、夏の思い出はビッグサイトのみという模範的な夏休みを過ごしたいと思います。
こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。
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