THE SWARM/ザ・スウォーム:「GOT」プロデューサーが手掛ける超大作 “ミフネ”木村拓哉に「これが本当のプロフェッショナル」

「THE SWARM/ザ・スウォーム」の場面カット(C)Intaglio Films GmbH / ndF International Production GmbH / Julian Wagner / Leif Haenzo
1 / 3
「THE SWARM/ザ・スウォーム」の場面カット(C)Intaglio Films GmbH / ndF International Production GmbH / Julian Wagner / Leif Haenzo

 大型国際ドラマ「THE SWARM/ザ・スウォーム」が動画配信サービス「Hulu」で3月4日から全8話が順次配信される。同作はドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)」で知られるプロデューサーのフランク・ドルジャーさんが手がける最新作で、欧州のドラマ史上最大級の制作費で、人類と海で巻き起こる異変の数々との戦いを描く。ドルジャーさんにドラマで力を入れた部分や“ミフネ”役を演じる木村拓哉さんの印象などを聞いた。
 
 ◇大事にしたのは「リアリティーとファンタジーの両立」

ウナギノボリ

 「THE SWARM/ザ・スウォーム」は、ドラマ制作費が欧州史上最大級となる大作で、世界各地を舞台にしたSFサスペンス。クジラやシャチが突如人を襲うなど世界中の海で不可解な現象が次々と発生し、世界各地から集結した研究者たちは驚くべき結論にたどり着く……という内容。世界各国から豪華俳優陣が集結し、木村さんは日本人の慈善家で海洋問題に取り組む”ミフネ財団“の創始者アイト・ミフネを演じる。

 同作は2004年にドイツで発表された小説が原作。ドルジャーさんは映像化のきっかけについて、「現在は温暖化など、自然環境に関する様々な事実をベースにしたドキュメンタリーや作品が多数作られていますが、私はキャラクターがけん引するエモーショナルなドラマによって環境問題を掘り下げられないか。そうすればドキュメンタリーなどを見飽きてしまっていて『環境問題についてはもう十分に知っているよ』と思っている人にも響く作品になるのではないかと思いました」と打ち明ける。

 原作小説を全8話のドラマにするにあたって、意識したのは「キャラクターに焦点を当てる」ことだったという。ドルジャーさんは「ストーリーは常にキャラクターからの視点で描かれなければならないと考えています。原作は科学的な説明が非常に多いのですが、それらをすべて映像化するのは難しいです。今作では登場人物たちがそれぞれの場所で異変の原因を調べていくのですが、その過程でキャラクターの強みや弱みが反映されているエピソードをつなげていき、成長につながっていないエピソードはカットするというアプローチをしました」と語る。

 強い個性を持つキャラクターの登場は、「最初から興味をそそられるような、強い個性を持った人々を登場させることを大事にしていました」と、映像化にあたって特に力を入れた部分だった。「彼らが科学を通じて謎を掘り下げていくという、ドキュメンタリーにはできないことを目指しました。科学者たちが全容解明に向けて努力していくところを、見ている人が追体験できるような形にしたかったのです。そうすることによって、物語から感情を喚起されるようなものになると思いました。また、脚色、撮影の段階から未知の存在を常に感じられるような演出を意識し、観客がその設定を自然と理解できるようにすることにこだわりました」と明かす。

 そんなこだわりの詰まった今作に、「ゲーム・オブ・スローンズ」の経験はどのように生かされたのか。ドルジャーさんは「『ゲーム・オブ・スローンズ』の時に感じたのは、リアリティーとファンタジーが両立していることが大事だということです」と振り返り、「ほかのファンタジー系のシリーズは、ファンタジー部分とリアリティー部分を別のスタイルで描いているものが多かったですが、『ゲーム・オブ・スローンズ』ではその両立を目指しました」と説明。「本作も『ゲーム・オブ・スローンズ』も、ある種のリアリティーが感じられなければ成立しません。リアリティーとファンタジーを両立させることによって、作品の世界観が確立できるのです」と考えを語る。

 ◇木村拓哉に「ハッとさせられた」こと
 
 キャストには、海洋問題に取り組む”ミフネ財団“の創始者アイト・ミフネ役で木村さんが名を連ねている。ミフネは、北極海に船を出そうとする科学者たちに金銭的な支援をして、彼らを後押しする人物で、原作の後半で重要な役割を果たす米軍総司令官の女性、ジュディス・リーを木村さんのイメージに合わせて作り替えたという。

 「ミフネというキャラクターは、いい意味での自然な権威を持つ方、つまり、部屋に入った時にみんなが注目をするような存在感を持ち、知的な方でなければいけなかったし、経験値が高い方でなければいけませんでした。そして、撮影をしているとき、誰かの演技に対してのリアクションのカットで存在感があるかどうかが重要でした。役者によっては、せりふを言うときは良くても、リアクションにそこまで存在感がない方もいらっしゃるのですが、木村さんは両方を兼ね備えています」と木村さんの魅力を語る。

 ミフネは、世界中の人々が科学者たちに救いの手を差し伸べなかった時に登場し、「物語の救い主でもあり、信念を持ったキャラクター」だ。「それは木村さんご自身にも言えることだと思います」とドルジャーさん。そんな木村さんと現場を共にし、「ハッとさせられた」部分が三つある、とドルジャーさんは言う。

 「一つ目は、年齢を重ねていて大人の成熟した権威を表現できる感性、二つ目は、知性が感じられること、最後に、スクリーン上の存在感でした。一緒にお仕事をさせていただいて、とても素晴らしかったです。現場では、撮影はとてもスピーディーに進行していき、複雑なシーンもあったのですが、見事に演じ切ってくださいました。ほかのキャストともとても良いバランスでしたし、演技も見ごたえのあるものとなっています。ミフネは、物語をひとつにまとめてくれる、とても重要な役割を担っています。彼のためにミフネというキャラクターを作ることができて本当に良かったです」と絶賛する。

 木村さんについて、撮影時に印象的なエピソードがあった。ミフネのオフィスの撮影シーンでの出来事だ。撮影現場から離れた場所に木村さん用の控室を用意していたが、木村さんは控室に行ってからすぐにメークと衣装のスタッフを引き連れて現場に戻ってきたという。

 「『控室を用意してくれるのはとても感謝しているけど、行ったり来たりする時間がもったいないから、撮影場所にスペースを用意してくれれば、そこでメーク直しや着替えをするよ』と言ってくれたんです。セットの隅の方に椅子を置いてカーテンをかけてスペースを作り、そこでメーク直しや着替えをしてくれたので、通常は移動も含めて30分かかるところを、5分で衣装替えができるようになりました。そのおかげでいろいろなアングルで撮影ができたし、監督と共に演技を深めていくことができました」とドルジャーさんは回顧。「自分がやりやすい環境にこだわるのではなくて、時間を無駄にせず、より良い作品を作りたいという思いからそういったことをおっしゃってくださり、これが本当のプロフェッショナルだなと感心しました」と木村さんへの賛辞を口にする。

 そんな木村さん演じるミフネ含め、個性的なキャラクターが出演する今作。ドルジャーさんは二つの重要なポイントがあるといい、それは登場人物を「善人」と「悪人」にはっきり分けることはせず、善悪のバランスが取れたキャラクターとして描いていること。もう一つは、原作で年配のキャラクターを若いキャラクターに変更していることだという。「若い世代の中には、環境に対するダメージがあまりにも大きすぎて、希望がないんじゃないか、もう何をしても無駄なんじゃないかと思っている方もいると思います。そんな方々にも、作品を見終わった後に、まだまだ私たちにもできることがある、と感じてもらえればうれしいです」とドルジャーさんは作品に込めた願望を明かしていた。

 Huluオリジナル「THE SWARM /ザ・スウォーム」は3月4日から順次配信される。全8話。

写真を見る全 3 枚

テレビ 最新記事