内山昂輝×下野紘:「ヒロアカ」7期は俺たち“勝ち確”!? 敵<ヴィラン>演じる醍醐味 出会った頃は「おじいちゃん」?

「僕のヒーローアカデミア」に出演する下野紘さん(左)と内山昂輝さん
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「僕のヒーローアカデミア」に出演する下野紘さん(左)と内山昂輝さん

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の堀越耕平さんのマンガが原作のテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」の第7期が、読売テレビ・日本テレビ系で5月4日から毎週土曜午後5時半に放送される。第7期は、ヒーローと敵<ヴィラン>の戦いがいよいよ最終局面を迎える。オール・フォー・ワンから力を与えられ、敵<ヴィラン>の頂点に立つ死柄木弔(しがらき・とむら)を演じる内山昂輝さん、荼毘(だび)役の下野紘さんに第7期に懸ける思い、敵<ヴィラン>を演じる醍醐味(だいごみ)を聞いた。これまで共演も多い2人に、お互いの声優としての魅力も語ってもらった。

ウナギノボリ

 ◇解放が「ダビダンス」 「全力でぶつけていく」第7期

 --ヒーローと敵<ヴィラン>の全面戦争が描かれた第6期では、死柄木が巨悪オール・フォー・ワンに取り込まれそうになったり、第124話「ダビダンス」で、荼毘がナンバーワンヒーローのエンデヴァーの息子、轟燈矢であるという衝撃の事実が明かされたりと、激動の展開でした。

 下野さん 第6期に関して、印象に残っているのはやはり「ダビダンス」ですね。本当にそれまで苦しくて、「何にも言えない」「何にも主張できない」というのがずっとあったので、ようやくいろいろなものを放出できた瞬間だったなと。そこに行き着くために、燈矢が瀬古社(せこと)岳で修行しているかのごとく、自分の部屋でブツブツ言いながら何回も原作を読みました。

 --「ダビダンス」の収録の様子は?

 下野さん 何よりも、このシーンをやりたかったので、収録で「もっとこういう感じにやってください」とディレクションをいただいたら、何度でもやってやろうという気持ちでいたのは覚えていますね。収録が終わった時は「まだ2、3回しかやっていませんけど、もう終わりですか?」と。これまでは荼毘を演じながら、ずーっと抑圧されている気持ちがあって、彼をどう演じればいいのかが本当に分からなかったので。声を張るようなやつじゃないし、でも張らなきゃいけないシーンはあるし、何を考えているのか分からないし、でも何か意味ありげなことを言うし、大変でしたね。

 --内山さんが第6期で印象深いシーンは?

 内山さん 死柄木がオール・フォー・ワンに乗っ取られていくところですね。ここは原作を読んだ時も印象的だったのですが、アニメでどう演出していくのかをスタッフサイドでも検討されたと思うんです。オール・フォー・ワンを演じてらっしゃる大塚明夫さんと声を重ねる演出もあって、そこの収録が結構難しかったです。

 --死柄木とオール・フォー・ワンの声が重なるシーンは印象的でした。

 内山さん 大塚明夫さんが収録した声を家で聞いて、スタジオではトレースするような形で重ねていくという作業をしていました。明夫さんとこのシーンについて具体的に細かくお話しする機会はなかったんですけど、家で何度もお声を聞いて、声の素材としての強さだったり、独特の抑揚のつけ方だったりを自分自身に吸収するような気持ちで取り組んでいました。

 --第7期では、全面対決が最終局面を迎えます。見どころは?

 内山さん 第6期のラストでも登場したアメリカ側の最強のヒーロー・スターアンドストライプが日本にやってきて、死柄木と対決することになります。収録では、スターとの戦いの大変さもさることながら、死柄木の自我が揺れ動いて、定まらない感じも表現しなければならなかった。これまで演じてきた死柄木像プラス、オール・フォー・ワンも宿らせてという、これまでにない死柄木を作らなければならなかったので、難しかったです。

 下野さん 第7期に関しては、「ダビダンス」以降、荼毘イコール轟家の長男、燈矢だということが分かり、改めてお父さんと(轟)焦凍と戦っていくことになる。最後の戦いに向けて、僕自身も原作を読んでいた時に、いろいろなことを気にしていたら多分できないだろうなと思っていました。喉を壊そうが、何しようが、とにかく全力でぶつけていこうという気持ちでアフレコに臨んでいます。

 内山さん 敵<ヴィラン>側もそれぞれ覚醒して、これまでより強い力を見せられるようになっていると思うので、その戦いは迫力あるものになると思います。

 --内山さん、下野さんは、対するヒーロー側はどう見ていますか?

 内山さん ヒーロー側はもうボロボロですよね。

 下野さん ボロボロだよね。もう全然勝てる要素ないよ。

 内山さん 光が見えないですよね。各国が自分の国を守るのが大事だから、日本にヒーローを送るのを渋るというような事情も描かれるので。本当に日本は今、ヤバいですよね。ヒーローはもう切れるカードがないんじゃないですかね。敵<ヴィラン>の“勝ち確”ですよ。

 --第6期では、敵<ヴィラン>たちの過去や抱えているものも色濃く描かれ、ヒーローと敵<ヴィラン>のどちらが正しいのか?と考えさせられるような描写もありました。

 下野さん 荼毘だけに限らず、それぞれのキャラクターが持っている生い立ちを見せられた。自分自身が荼毘を演じているのもあるけれど、「どっちかって言うと、俺らの方が正しいんじゃね?」「正義なんじゃね?」のような思いはやはり生まれました。敵<ヴィラン>側のほうが、信念の重さが違いますよね。最終決戦までに、ヒーローたちがどういう思いでこっちにぶつかってくるかによって変わってくるとは思いますが、現段階だとどう考えても敵<ヴィラン>のほうが思いは強くなると思いますし、あと力もだいぶつけているので、勝ち確かなっていう気はしますよね。

 ◇敵<ヴィラン>は嫌われてなんぼ 暗い感情を存分に表現

 --「僕のヒーローアカデミア」の敵<ヴィラン>は悪役ではありながらも魅力的で、多くのファンを引きつけています。敵<ヴィラン>を演じる醍醐味は?

 内山さん そもそも敵<ヴィラン>は、自分を“敵”と捉えていないと思います。

 下野さん ヒーローって、自分の思いもあるけど、こうしなければいけないという目的だったり、「ほかの人のために」という思いだったり、複数のものを抱えているんですよね。演じる側も、そのせりふに込められた思い以外のことも考えつつ、演じられていると思うんです。でも、敵<ヴィラン>に関しては、かなり自由度が高いというか。ほかは何も背負わず、「自分がこうしたいんだ」を素直に表現できる。それが敵<ヴィラン>を演じる面白さだったりするのかなと思います。あと、下野紘個人で言うと、日常でこんな悪い感じにできるような性格じゃないので、それを惜しげもなくやれるという。本当に声優って、すてきな仕事ですよね。自分の見た目とか気にせず全部乗っけてやれる。それが面白いかな。

 内山さん そうですね。普通に生きている中で、誰しも後ろ暗い感情っていうのはあると思うので、それを存分に表現していける。普段の日常でなかなかできることではないので、それが魅力なのかな。一方で、敵<ヴィラン>役は嫌われてなんぼっていうところもありますし。ヒーローを応援する視聴者の方々に「あいつら!」と思われることもあるだろうし。

 下野さん そう思わせたら敵<ヴィラン>は勝ちだもんね。

 --視聴者や読者に嫌われるほど「やった」と思うような?

 内山さん まあ、「嫌い」って言われて喜ぶのもあれなんですけど(笑い)。仕事としては、ミッションコンプリートって感じなんですかね。

 --「ヒロアカ」の敵<ヴィラン>は格好良さもあるような気がします。

 下野さん 皆さん、ちょっと不良に憧れるじゃないけど、そういう部分があるんじゃないですか。

 内山さん そういう時期はありますね。

 ◇下野紘は「優しいお兄ちゃん」 内山昂輝から伝わる熱意

 --内山さん、下野さんは、「ヒロアカ」では敵<ヴィラン>の仲間として共演されていますが、ほかにもさまざまな作品で共演されています。お互いの声優としての印象は?

 内山さん 僕は昔から優しいお兄さんという印象です。

 下野さん (笑い)。

 内山さん みんなに対してフレンドリーで明るい方で、収録の休憩中でも、いろいろ楽しくお話しされている姿をよく見ますし、ずっと昔からそういう印象です。

 下野さん そういうふうに言ってくれるんだったら、(内山さんは)やっと年相応になったなって思います。最初に会ったのは「ユニコーン」(「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」)だったと思うのですが……

 内山さん 僕が10代後半の時ですね。

 下野さん 本当におじいちゃんかな?って思うぐらい、反応が今よりも薄かったから(笑い)。今のほうが、いろいろな現場で一緒になったり、ラジオをやらせてもらったりして、「全然そんなことない。普通に若者だ」と思っている部分もあって。あと、意外とお笑いが嫌いじゃないところもあって、あの頃よりも「人だな」っていう感じ(笑い)。

 内山さん 人でしたね(笑い)。

 下野さん あとは、元々そうでしたけど、キャラクターや作品に対して、ものすごくしっかり取り組む。あまり激しく表に感情を出すわけではないけれど、キャラクターに対する熱い思いがすごくある。予習、復習をして、熱意を持ってキャラクターに向き合っているんだなというのを現場で思いっきり出してくるなという印象ですね。せりふの一つ一つに対しても、「このキャラクターはこうだから、こうなんじゃないですか?」という思いを自分の中でしっかり持っていて、すごい役者だなと思いますね。

 --内山さん自身も、下野さんが言うように変わってきた部分があると感じていますか。

 内山さん あると思いますね。自分自身の変化もあると思いますし、仕事の取り組み方に関しても、前よりもコミュニケーションを重要視するようになったというか。言われた通りにやるだけじゃなくて、時には自分からも提案してみるとか、やり方が変わってきたと思います。

 --内山さんから見た下野さんの役者としての魅力は?

 内山さん たくさんあると思うんですけど、僕が10代後半に初めて出会った頃のイメージは、下野さんといえばキーが高いところがすごくきれいに出て、魅力的な方だという印象だったんです。最近は、荼毘を演じてらっしゃるところをよく見ているからかもしれませんが、よりトーンを低くしたり、太く出したり、発声の面において、いろいろな変化を如実に感じるんです。それがスタイルの変化なのか、引き出しを増やされたのか。これまで隠していたんですか? 新たに作り出した?

 下野さん 違うよ(笑い)。違うけども、何だろう、改めてこの褒め合っている感じが、ちょっとしんどい……(笑い)。

 内山さん そうですね(笑い)。もちろん下野さんは、今でも高めのキーはきれいに出ると思うんですけど、より幅広く表現されているのかなと思って。逆に僕は、高めのキーが出なくなっていったので。だから、例えば「ユニコーン」の初期を今再現するのは、すごく難しい。地声がそもそもだいぶ変わっているので。

 下野さん 人それぞれ、これまでやってきたやり方だったり、年齢、喉の強さだったり、違いはあると思うけれど、俺の中では高いキーで演じることが多かった中で、このままだと「あ、終わるな」っていうのがあって。それをどうにかしたくて、歌をやり始めたんです。そこからいろいろ学ぶことがいっぱいあって。

 内山さん 歌がきっかけだったんですね。

 下野さん 学んだことを全部フィードバックさせて、「もっとこういうふうにした方が、よりこのキャラクターの感情を表現できるのかな?」というふうに、今までコントロールできていなかった部分が少しずつコントロールできるようになっていったところはあるのかなと思います。

 互いに信頼し合う内山さん、下野さんが「全てをぶつける」という思いで挑む「ヒロアカ」第7期。声優陣の熱い演技に注目したい。

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