2016年春アニメ:オリジナルに力作そろう 「ハイスクール・フリート」「迷家」…

ニコニコ超会議を訪れた小新井さん
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ニコニコ超会議を訪れた小新井さん

 2016年の春アニメが放送をスタートした。今期も個性的な作品がそろう中、週に約100本(再放送含む)のアニメを視聴する“オタレント”の小新井涼さんが独自の視点で春アニメを分析する。

ウナギノボリ

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 春は別れの季節…しかし同時に出会いの季節でもあります。冬アニメロスで空いた心の穴を埋めるかのように、今期もバラエティーに富んだ新作アニメの放送がスタートしました。

 いつもどおり全作品を視聴してみると、今期印象的だったのは“オリジナルアニメ”でした。発表時から「○○監督の新作!」などと注目される一方で、あらかじめストーリーが判明している原作ものと比べると、展開が分からないため、待望の初回放送でのインパクトは強く心に刻まれます。

 そんな今期の新作オリジナルアニメには、一体どんな作品がそろっているのでしょうか。

 初回のインパクトといってまず真っ先に思い浮かぶのが、「はいふり」こと「ハイスクール・フリート」です。放送前から毎日キャラとキャストを発表していく企画も斬新でしたが、それを上回る本編の仕掛けに第1話から騒然となりました。

 海の安全を守る職業「ブルーマーメイド」に憧れる海洋高校の女の子たち。一見、そんな彼女たちが日々成長していく姿を描いた青春物語なのかと思いきや、いきなり主人公・明乃たちの艦「晴風」が理不尽にも反乱者のレッテルを貼られてしまうことで、その予想はひっくり返されます。

 教官からのまさかの砲撃、国土の多くが水没した日本、そんな社会と断絶されてしまったかのような晴風の孤立感……。それに続いて種明かしのように知らされる「ハイスクール・フリート」という本当のタイトルに、「これはだまされた!」と、いい意味で悔しさを感じました。タイトルと共に隠されていた謎が今後どのように明かされてゆくのか、まだまだ目が離せません。

 展開が分からないという点で同じく気になっているのが、水島努監督と岡田麿里さんのタッグで注目を集める「迷家-マヨイガ-」です。核心が明かされぬまま終わった第1話に、まだ何か大事な秘密が隠されているのではないかと今後の展開を疑わずにはいられません。

 迷い家伝承のユートピアイメージを反映したかのような「人生やり直しツアー」ですが、名前に反して、“今までの人生に対する遺書”や“運の悪いヒポポタマス”など、思わずひやりとするワードが散りばめられていることで、明るく振る舞う参加者たちの様子もどこか不気味に思えてなりませんでした。

 皮肉にも、抜け出したいという現代社会を一番体現しているような彼らが、どのようにそこから姿を“消す”のか……。ひとまずは「群像アニメ」という公式サイドの言葉を信じて、そんな個性的すぎる参加者たちの関係性に注目してみてみたいと思います。

 そして、アニメキャラの関係性として王道なのは、やはり主人公とヒロインの関係性や距離感でしょう。そういう意味においては「クロムクロ」も見逃せません。世代的に「メダロット」の印象が強い岡村天斎さんが、P.A.WORKS(ピーエーワークス)さん初のロボット作品を監督されるという意味でも注目の今作。初回では突然の襲来に対し、主人公の剣之介が敵のメカに生身……どころか生まれたままの姿で立ち向かっていたのが衝撃的でした。

 そんなアクションシーンはもちろん、個人的に注目したいのが大切な女性がいる主人公と、巻き込まれ系ヒロインという構図。最初は反目し合っていた2人ですが、複座のコックピットでどのような関係値を築いてゆくのか、雪姫を守るために戦ってきた主人公の剣之介と、そんな剣之介が雪姫と見間違ってしまった由希奈との関係は……。今後の人間模様も楽しみな作品です。

 オリジナルアニメというと、本来原作ものよりも事前情報が少ないため、キャラや世界観に入り込むまでに時間がかかるネックもあります。

 しかし強烈なインパクトを持つ作品は、そのことがマイナス方向ではなく「知らないから先が気になる!」と、ポジティブに作用しているように思いました。

 また、「先が読めない」という点では、「おそ松さん」(厳密に言えば原作ものかもしれませんが、先の見えない新規作品でした)のように、放送前の予想をはるかに超えるお祭りタイトルに成長していく作品もあるかもしれません。

 そんなことも期待しつつ、未知なる今後の展開をしかと見届けたい……2016年春クールはオリジナルアニメに期待大です。

 最後は上記の作品以外で、独断と偏見による個人的なベスト3を紹介させていただきます。

 1位「少年メイド」

 自分でも驚きの首位でした。千尋くんの健気さと不器用な家族の形が切なくいとおしく、まさかの「世界名作劇場」をほうふつとさせられます。とてもいい意味で予想を裏切られた作品です。

 2位「ジョーカー・ゲーム」

 私なら5分で胃に穴があきそうな生き方をしているD機関のメンバーは、恐ろしいながらもやはり格好いいです。時代と立場に翻弄される佐久間中尉との関係性も魅力的で、気づけばがっつりと心をつかまれていました。

 3位「ふらいんぐうぃっち」

 弘前の風景と独特の空気感は最高に癒やされます。ここまで魔法というファンタジー要素を日常系に落とし込めるものなのか! と驚かされた作品です。

 ◇プロフィル

 こあらい・りょう=埼玉県生まれ、明治大学情報コミュニケーション学部卒。アニメ好きのオタクなタレント「オタレント」として活動し、ニコニコ生放送「岩崎夏海のハックルテレビ」やユーストリーム「あにみー」などに出演する傍ら、毎週約100本(再放送含む)のアニメを見て、全番組の感想をブログに掲載する活動を約2年前から継続。「埼玉県アニメの聖地化プロジェクト会議」のアドバイザーなども務めており、社会学の観点からアニメについて考察、研究している。

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