アイドルグループV6の森田剛さんの初主演映画「ヒメアノ~ル」が、28日から公開される。濱田岳さん、ムロツヨシさんらも出演する今作は、過去に「ヒミズ」が映画化され、過激な内容から実写化不可能といわれてきた古谷実さんによる同名マンガを、「銀の匙 Silver Spoon」(2014年)や「麦子さんと」(13年)などの作品で知られる吉田恵輔監督が脚色し映像化した。森田さんが、名だたる演出家たちの舞台に立ってきたことを知る演劇ファンや、森田さんのファンには怒られそうだが、森田さんが主演で、しかも殺人鬼を演じるということに、いささかの不安があった。しかし、それが杞憂(きゆう)と感じられるほど、森田さんの演技には圧倒された。
ウナギノボリ
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地方から上京し、ビルの清掃会社でパートタイマーとして働く25歳の岡田進(濱田さん)は、ある日、先輩の安藤勇次(ムロさん)とともに、安藤が思いを寄せる女性、阿部ユカ(佐津川愛美さん)が働くカフェを訪れる。そこで、高校時代の同級生、森田正一(森田さん)と再会した岡田は、その後、ユカから、彼女が森田らしき人物からストーキングされていることを知らされる。実は森田は、ある事件をきっかけに、欲望のままに人を殺す快楽殺人者になっていた……というストーリー。
映画が始まってしばらくの間は、おおむね、岡田と安藤が中心となり、自虐的なギャグを交えながら和やかに進む。ところがそこに森田の物語が交わると空気は一変。それまでのおかしみやユーモアはうそのように消え失せ、サイコサスペンス、あるいはホラー映画の様相を呈し始める。圧巻は、2組の“カップル”、一方は岡田とユカの、もう一方は森田とある人物の、生々しい行為を交互に映し出す場面だ。
森田さんの、正気と狂気は紙一重であることを見せつける怪演もさることながら、朴訥(ぼくとつ)とした、しかし、あわやというときには体を張って恋人を守ろうとする男気あふれる岡田を演じていた濱田さん、ひねくれ者だが、なかなかいいヤツじゃんと思わせる安藤役のムロさん、さらに、愛らしい外見に似合わない大胆な演技を披露していた佐津川さんら、出演者がみな、ひねりのあるキャラタクーを好演。理由はどうあれ、森田の行動を容認することはできない。しかし人間、何がしかの欲望は心の奥深くに渦巻いており、森田の存在は、それがいつ何時、何かの拍子にブチリと音を立てて暴走してもおかしくないことを証明しているようで、薄ら寒くなった。原作とは異なるラストに、なんともいえないやるせなさを感じた。28日からTOHOシネマズ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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