「グッチ」「イヴ・サンローラン」を経て自身のブランドを持つファッションデザイナー、トム・フォードさんの初監督作「シングルマン」が2日、公開された。中年期の精神的な危機を細やかに描き出した作品。主人公を演じるコリン・ファースさんは米アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、ベネチア国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞している。
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62年11月30日、大学教授のジョージ(ファースさん)は、この8カ月の間、苦痛の日々を送っていた。16年間を共に暮らしたパートナーのジム(マシュー・グードさん)を事故で失ったのだ。ジョージには絶望と追憶しかない。そして、自らの手でこの日々を終わらせようと決心した日、世界がいつもと少し違って見えてくる……というストーリー。
たった1日の物語に、男の心情を繊細に浮かび上がらせ、濃厚な作品に仕上がっている。微妙な色彩で、ジョージの心を映し出す。恋人を亡くしたゲイの男性の話を「中年期の精神的危機(ミドルエイジ・クライシス)」という普遍性に昇華したあたりの手腕も見事で、時代背景として出てくる「キューバ危機」も不安をかき立てる要素として最適な状況で出てくる。
「キャバレー」で知られるクリストファー・イシャーウッドさんの小説が原作。フォード監督は映画作りのために04年、映画製作会社を作り、今作では脚本も手掛けた。せりふや衣装、音楽すべてにこだわった様子が見ていて分かる。完璧(かんぺき)を求める主人公ジョージの姿に、監督自身が重なって見えてくる。映画にはフォード監督の精神的な体験(具体的なエピソードではなく感情として)も盛り込まれているらしい。
主人公を演じたファースさんの語り過ぎない程良い芝居が、男の心情を観衆に体験させる。ジョージのかつての恋人を演じるジュリアン・ムーアさんはセクシーだ。久々に大人の映画を見たという印象を持った。2日から新宿バルト9(東京都新宿区)、横浜ブルク13(横浜市中区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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