注目映画紹介：「おじいさんと草原の小学校」84歳のおじいさんが小学校に入ったら

　84歳の小学生として全世界で新聞記事にもなったケニアのおじいさんの実話を、「ブーリン家の姉妹」のジャスティン・チャドウィック監督が映画化。「おじいさんと草原の小学校」が公開中だ。おじいさんの「学びたい」という並々ならぬ情熱と、それに応えようとする若い女性校長の情熱、さらには子どもたちとのきずなにウルウル！　国を造るのは教育だということも見事、伝わってくる。

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　03年。ケニアでは政府が無償教育を始めた。84歳のマルゲ（オリバー・リトンドさん）は文字を読めるようになりたくて、地元の小学校を訪れる。しかし、教員に追い払われてしまう。それでもマルゲはあきらめない。つえをつきながら、何度も「学びたい」と直談判。その熱意に心を動かされたジェーン校長（ナオミ・ハリスさん）は、周囲の反対を押し切ってマルゲをクラスに迎え入れる。子どもたちと肩を並べて、学ぶことの喜びを感じ始めていたマルゲだったが、50年前のトラウマがよみがえり、教室でパニックになってしまう。それは、マルゲがケニア独立のためにマウマウ団の戦士として戦い、収容所で虐待を受けたときの心の傷だった……。

　おじいさんが主人公のほのぼのタッチの作品だと決めつけないでほしい。主人公のマルゲは、1963年の国の独立まで戦士として戦った男。この映画は、一人の男が信念を貫く話だ。演じる俳優の眼力が強い。ジェーン校長や子どもたちにやがて情熱は伝播（でんぱ）する。だが、単なる美談でまとめてないところがこの作品のよさだ。ケニアの歴史、マルゲに対する地域住民の反感やしっとなど、ネガティブな部分もさらけ出す。

　アフリカのロケで地元の学校の子どもたちを起用した。リズム感抜群の子どもたちの歌とダンス、一緒に踊る84歳の小学生を見ていると幸せな気分になってくる。マルゲは実際、09年夏に息を引き取るまで、獣医になる夢を持って勉強を続けていたという。あきらめない心が素晴らしい。岩波ホール（東京都千代田区）ほかで公開。（キョーコ／毎日新聞デジタル）