カナダ・モントリオールで28日(現地時間)まで開催されていた「第35回モントリオール世界映画祭」で、日本映画「わが母の記」(原田眞人監督)が審査員特別グランプリ、同じく出品されていた「アントキノイノチ」(瀬々敬久監督)が革新的で質の高い作品に与えられる「イノベーションアワード」を受賞した。
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「モントリオール世界映画祭」はカナダ・モントリオールで毎年開かれている映画祭で、今年で35回目を迎える。世界12大映画祭のうちの一つで、カンヌ、ベネチア、ベルリンの世界3大映画祭に次ぐ北米最大規模の権威ある映画祭。最近は立て続けに日本映画が受賞している。今回、「アントキノイノチ」と「わが母の記」はワールド・コンペティション部門に出品された。
「わが母の記」の原田監督の息子で今作の編集を担当した原田遊人さんは、授賞式で壇上に上がり、「監督である父は現在、撮影中のため代わりに受け取ります。このような素晴らしい賞をいただき、とても光栄に思っています。ありがとうございます。何をいったらいいんだろう……」と言葉がとぎれると、出演している樹木希林さんを壇上に呼んだ。樹木さんは「この映画の日本は今、原発という人災により、空気も壊れ、水も壊れかけています。私たちはこのような賞をいただいても、うれしいような情けないような気持ちですが、こころしていただきます。美しい映画、と審査員に言われました。そういう日本でありたいと思いました」とあいさつした。
京都で知らせを受けた原田監督は「日本が元気のない今、明るいニュースが届いてとてもうれしく思います。すべての観客とその母親たちにささげるつもりで撮りました。この家族のきずなの物語がモントリオールの皆様にも共感していただけたことが、光栄です。深い感謝をお伝えしたいと思います」と喜びのコメントを寄せた。原田監督と同じ現場にいる役所広司さんは「(モントリオールの)現地にいる樹木さんとも電話で話をしました。監督とともに喜びを分かち合っています。日本の家族の姿を世界の人々に見ていただけて、そして受け入れてもらえたことがとてもうれしいです」と話した。
「わが母の記」は井上靖の自伝的小説を、役所さん、樹木さん、宮崎あおいさんら豪華キャストで描く。昭和39(1964)年。小説家の伊上洪作は、父が亡くなったことから、実母・八重の面倒をみることになる。幼少期、母親とともに暮らしてこなかった伊上は、妻と3人の娘、妹たち“家族”に支えられ、自身の幼いころの記憶と、八重の思いに向き合うことになる。八重は、次第に薄れてゆく記憶の中で、“息子への愛”を必死に確かめようとし、息子は、そんな母を理解し、受け入れようとする……という物語。
なお、前日の27日(現地時間)には「わが母の記」の公式上映と記者会見が行われ、原田遊人さんと夏休みでカナダを訪れていた樹木さん、樹木さんの孫で俳優の本木雅弘さんと内田也哉子さんの息子、雅楽(うた)さん(13)が映画祭の公式行事に急きょ参加。原田さんと樹木さんはレッドカーペットを走って通り過ぎるなど、愉快なハプニングで映画祭を盛り上げた。映画は12年に公開予定。(毎日新聞デジタル)
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