藤澤恵麻:デビュー10年、28歳の“今”を語る ドラマ「フォルティッシモ」インタビュー

ドラマ「フォルテッシモ~また逢う日のために~」に出演した藤澤恵麻さん
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ドラマ「フォルテッシモ~また逢う日のために~」に出演した藤澤恵麻さん

 24日午後9時~10時にBSフジで放送される「P&Gパンテーンドラマスペシャル『フォルティッシモ~また逢う日のために~』」で主演の藤澤恵麻さん(28)が30歳を目前に自分の生き方について迷う等身大の女性・美空を好演している。モデルとしてデビューしてから10年間のこと、アメリカ留学について、女優として、そしてヒロイン・美空と同じ28歳の女性として“今”のことをたっぷりと語ってもらった。(毎日新聞デジタル)

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  ドラマは、正社員を目指して就活に励む契約社員の美空(藤澤さん)が就活に失敗し、母校の高校で臨時教員として働くことになることから始まる。そこで、美空が高校時代に所属していた弱小の吹奏楽部の立て直しを頼まれ……というストーリー。20代後半の女性が進むべき道について悩み、迷い、もがき、そして次の“一歩”を歩み出すまでの姿を「ラプソディー・イン・ブルー」のメロディーに乗せてさわやかに描き出す。藤澤さんのほかにモデルの絵美里さん、歌手のソニンさん、俳優の笠原秀幸さん、玉置浩二さん、西村雅彦さんらが出演する。

 −−ヒロインの美空は藤澤さんと同じ28歳の女性ですが、台本を読んでみたときの感想を教えてください。

 最初、何の気なく(台本を)読み始めて、後半からぐーっと共感したというか、心をつかまれて一気に読んだ感じだったんですけれど「これって自分の物語なんじゃないか」って思ったくらい共感してそれは私だからということではなく、たぶん私がヒロインと同じ年齢だったので、それくらいの年齢の子たちで「これって自分の物語なのではないか」って思う子っていっぱいいるような気がしたんですよ。そういう作品だなって(演じるのが)すごく楽しみになりました。共感した分、読み終わったあとに「(美空が)一歩踏み出す」っていうのが心を救われたというか、自分自身も勇気をもらえるような感じがしました。

 共感したポイントは、30歳くらいって自分の想像の中ではもっと大人なはずだった。28歳ってまだまだ落ち着かない自分とか、子どもっぽい自分っていうのを美空にも見たんですよね。それですごく共感したというか、この年齢って抜本的に大きなことがあるわけでもないし、結婚したり子どもが生まれたりだったらそういう変化はあるかもしれないけれど、年齢だけは20代から30代って移り変わっていくんだけれど、自分はいつまでも子どもで、もっと成長したいのにどうやったら成長できるのかも分からないし、それでも一歩前に進みたいっていう気持ちがあって。台本の中では一歩自分を見つけてまた明日から歩き始めるというストーリーがすごく自分の中で気持ちよくて、そういうもやもやしたものを抱えていてそういうことを作品におこしてくれていることに「ありがとうございます」と思うような出会いだったんですよね。

 −−01年にファッション誌「non-no」(集英社)で専属モデルとしてデビューし、その後NHK連続テレビ小説「天花」で朝ドラのヒロインに抜てきされ、その後も女優として演技の幅を広げ続けている藤澤さんの口から“もやもや”という言葉が出てくるのは意外な感じもしますが……。

 目の前にきたお仕事を大事にやることに日常は一生懸命なんですけれど。「10年やってきた分の何かをあなたはできるか」って言われるとあっという間に10年たっちゃっているので、そんな証明できるような何かがあるわけではない。ただ、今までやってきた出会いとかお仕事とかで自分の蓄積しているものはすごくあると思うのだけれど、そんなに小器用に出していけるほどではない。そのへんの葛藤(かっとう)と向き合っている時期なのでしょうけれど。美空の物語っていうのは一個の具体例として、しかも彼女が1時間を通してすごく変わったのかっていうとそうではなくて一歩踏み出してまた歩いていくというストーリーがすごく共感できて、自分自身勇気をもらえたんですよね。たぶん何の仕事をやっていても自分ってものにはぶつかると思うし、きっとみんな一生懸命生きていてっていうのは何ら変わらないんですよね。

 −−女優として活躍中の08年にアメリカに3カ月間、留学した後、さらに1年半延長されていますがその時の心境を。

 そこに飛び込むことに大きな意味があったと思う。向こうへ行っちゃって、もうこの仕事をやりたくないと思う自分がいたらどうしようとかそういうのもあったんですよ。でもそのくらいのところに飛び込んで、でもやっぱり役者をやりたいっていう自分を発見できたっていうのは、だからこそ飛び込んだ意味があったって思う。役者の仕事って自分の中に吸収したものを出していける、人に伝えていける仕事なので役者としても吸収することはいっぱいあったし、良かったと思っています。アメリカ留学は大きな一歩で、あれがあるお陰でいろいろなことがわっと広がった感じですね。

 向こうへ行ってアメリカナイズされて帰ってくるかなと思ったんですけれど、行ってみたら私ってやっぱり日本人なんだなって。日本人的な考え方をしたり、そういうものに心を動かされたりとか、日本人って繊細な心と味覚を持っていると思うんですけれど、やっぱり私は日本という国に生まれたそういう人間だなあと自分を見つめ直すことができた。そういう自分をどういうふうに生かしていけるだろうかって発想を転換して。ちょうど時期的にも東日本大震災があった時期だったので、自分がこの作品をやらせてもらえるとして、じゃあどういうふうにやったら(見た人が)喜んでくれるだろうかとかちょっと引いた見方で作品に向き合うことができるようになったのが変わったことですかね。

 −−美空を演じる上で苦労した点や役作りについて意識したことは?

 苦労したのは指揮棒を振ること。指揮者の人ってすごいんだなと改めて尊敬しました。面白いなって思ったのは、指揮者の人が楽譜を面で見ていくんだっておっしゃっていて、1曲全部覚えて、楽器の位置も覚えてではないと指揮棒を振ることはできないんだとがく然として。5分の曲をやるのは簡単かなと思っていたら大変でした。

 役作りでは、監督と美空のキャラクターについてお話ししたとき、監督は「美空は下を向いて悩むタイプではなくて、悩んだときに上を向くタイプだ」っておっしゃったんですね。台本を読んだときにイメージでは28歳の自分で、自分の道を見つけてっていうイメージで入ったんですけれど、「美空って上を向くんだ」って思ったときにパンっと切り替わってちょっと違うキャラクター像が思い浮かんだんですよね。二十何歳っていうその年齢相応に大人になった自分を演じるのではなくて、子どもっぽいくらいの年相応の私でやってそれが逆にリアルなんだなって思ったんです。大事にしたのは「下を向いて悩むんじゃなくて上を向いて悩むんだ」っていうのが役作りとしての私のキーポイントでした。

 −−冒頭のシーンでは玉置浩二さんが西村雅彦さんとコミカルな演技を繰り広げていますよね。玉置さんと共演してみていかがでした?

 台本にはオネエのキャラでなんて何も書いていない、文字だけ書いてあって。やっぱりさすがだなと思いました。子どものときにドラマ「コーチ」(96年)のイメージで朴訥(ぼくとつ)な玉置さんのイメージだったんですよ。でも今回はスタイリッシュに登場されたのでその変わりようはさすがだなと思いました。

 −−これからはどんなふうに仕事をしていきたいですか?

 私の人生で、キーワードだなと思うのが、一個一個与えられる仕事を一生懸命頑張るということです。百戦錬磨って感じではなく一個の仕事を大事にすることで、次にきた仕事もまた大事にすることで、自分も学習して前より一個できたり、恩返しできる自分であろうと一個一個やってきた。そのスタンスって何十年たっても変わらない。せっかくの与えられた機会なのでそこで吸収できるものをなるべく吸収して、それが将来、器用に使っていけるような“引き出し”をいっぱいにすることを頑張ろうとしているのが大きいですかね。

 −−モデルに応募したとき、今の“女優”の姿は想像できましたか?

 思ってなかったです。モデルに応募するという大きな一歩がなければ私の人生まったく違っていたと思うし、その応募したきっかけというのが、それまで自分が自分らしくしないことをしたことがなかったんです。そういうのが恥ずかしいと思っていて自分がそんなの(モデル)になるなんておこがましいと思っていたし、私が一番人生で大事にしていたのは両親が喜んでくれるみたいなことだったので、一番それまでで自分らしくないけれど、自分が本当にやってみたいなって思うことをやって一歩踏み出したことが今までにつながっていて、留学もその大きな一歩だったと思います。何事にも絶対意味があって、今苦しくてもその苦しみって将来どこかでつながるというか、生きれば生きるほど「そうだったんだ、それがこうつながって、ここがあるんだ」って。例えば上智大学にいて、ちゃんと勉強しなきゃいけない環境にいて、女優っていう仕事に受験勉強なんて役立たなかったって思っているようでいて、留学したのがつながって……。生きれば生きるほどいろんなことがつながって一つの道になっていったらいいなということを信じたい、というか信じる、みんなそうだなと思っています。

 <プロフィル>

 ふじさわ・えま 1982年12月26日、高松市出身、上智大経済学部在学中に集英社「non-no」の専属モデルとなる。大学3年の時に初めて受けたNHK連続テレビ小説「天花」(04年)のオーディションに合格し、ヒロインの天花を演じる。卒業と同時に本格的に女優としての活動を開始。以降ドラマや映画、CMで活躍。ほかに「3年B組 金八先生(第8シリーズ)」(07年)、 日曜劇場「獣医ドリトル」(10年)、映画 「奇談」(05年)で映画初出演にして初主演。その後「ラブ★コン」(06年)、「天国はまだ遠く」(08年)、「GOEMON」(09年)などに出演。舞台に「伊東四朗生誕?! 七十周年記念『社長放浪記』」(07年)、「カゴツルベ」(09年)などがある。 P&G 「パンテーン」CMに出演中。

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