ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、英国のアリス・マリエル・ウィリアムソンの小説「灰色の女」を基に明治時代の思想家・黒岩涙香が翻案した小説「幽霊塔」をベースにした乃木坂太郎さんのサスペンスホラーマンガ「幽麗塔」で、「ビッグコミック スペリオール」(小学館)で連載中です。
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昭和27年、数百年もの間、動かなかった時計塔で老女がその養女に惨殺された。その2年後、下宿の家賃を払うこともできない無職の男・天野は、ふらふらと出かけた町で昔の同級生でマドンナ的存在だった花園に出会う。しかし花園に紹介された婚約者は学生時代に天野をいじめていた金持ちの三村だった。三村に嫉妬(しっと)した天野は「僕も今度結婚する。おじの遺産が入った」などとうそをつくが三村に突っ込まれ、万事休す。そこへ見知らぬ美青年がまるで執事のように「お迎えに上がりました」と助け船を出し……という物語。
既刊累計1000万部を突破した大ヒット作「医龍」。その乃木坂太郎氏が送る渾身の新作が、この「幽麗塔」です。
舞台は、昭和29年の神戸。ニートの天野は幽霊塔で白い何者かに襲われ死の寸前、謎の美青年テツオに救われます。テツオはこう言います。「幽霊塔の財宝探しを手伝えば、金も名誉も手に入る」。しかしテツオの正体は、男を装う女であり、その名も偽名です。
サスペンスもホラーも、乃木坂氏が新人時代から得意としていたジャンルです。「医龍」の中でも、サスペンスやホラーの演出技術が随所で生かされてきました。今回の「幽麗塔」は、そんな乃木坂氏にとって、まさに直球勝負の作品です。
本誌スペリオールでもすでに大きな人気を博していて、黒岩涙香の「幽霊塔」を土台としながらも、オリジナルストーリーで描いています。当然、結末も、涙香版とは違ってくるはずです。
犯人は、幽霊なのか、それとも人か……。人ってなんなのか、正しいことってなんなのか……。このサスペンスは、ただモノではありません。応援よろしくお願いします。
なんとも不気味でグロテスクなサスペンスホラーなのですが、事件の怖さやおぞましさ以上に、交錯する思惑や欲望から目が離せなくなる人間ドラマとして、ずっしりとした読み応えがありました。前作の「医龍」でも見せてくれた巧みな心理描写により表現される登場人物たちは、みなどこかしら異常さや愚かしさや弱さをもっており、誰もかれも一筋縄でいかない怪しさに満ちています。さらに意外な展開もそこかしこにあり、一度読んだらもう最後まで読まないわけにはいかなくなりますよ。
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