20代でのFBI前身組織の長を経て、死ぬまでFBI長官の座にい続けた男、J・エドガー・フーバー。その名を知る人は多いが、しかし、その裏の顔を知る人は少ない。彼の人となりに迫る映画「J・エドガー」が28日に公開された。クリント・イーストウッドさんが監督を務め、主人公のJ・エドガーにふんするのはレオナルド・ディカプリオさん。この2人の初タッグも話題だ。
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映画は、人生の終わりにさしかかったフーバーが、部下に命じて回顧録を書き取らせるところから始まる。彼の記憶はFBI誕生以前にさかのぼり、その後、リンドバーグ愛児誘拐殺害事件や、“パブリック・エネミー”ことジョン・デリンジャーにまつわる事件、ケネディ大統領の暗殺といった主要事件をピックアップし、またそこでのフーバーの“功績”を描きながら物語は進んでいく。その一方で、彼が抱えていた葛藤や苦悩といった陰の側面を浮き彫りにしていく。
一見、正義や道徳を振りかざした社会派映画だが、イーストウッド監督が描こうとしたのは、エドガーの華やかな姿ではなく、1人の人間の愛の物語だ。途中から予想とは異なる方向に物語が流れていくのにはいささか驚いたが、それは、イーストウッド監督作にいつも見られる、いい意味での意外性だ。なるほど、イーストウッド監督は「単なる伝記映画には興味がない」といったようだが、その言葉の意味が理解できる仕上がりだ。ゴールデングローブ賞での受賞は惜しくもならなかったが、フーバーの「内面のすべてを演じたい」と挑んだディカプリオさんの渾身(こんしん)の演技にも注目したい。28日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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