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11月21日(木)放送分
WOWOWシネマで日曜日夜9時から放送中の「W座からの招待状」では、「映画を愛する人に、いま見てもらい本物の作品を届けたい」というコンセプトで、毎回、製作費の大小やヒットの規模によらない良質な作品を“上映”している。4月からは新たに、上質な映画を上映し続ける全国の単館系映画館を応援するプロジェクト「W座を探して」を番組内でスタートさせた。このほどそのイベントが、ミニシアター「シネマライズ」(東京都渋谷区)で開かれ、番組の案内人である放送作家の小山薫堂さんと、イラストレーターの安西水丸さんが登場。イベント終了後、小山さん、安西さんに、このプロジェクトに期待することなどを聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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「W座からの招待状」では、これまで韓国映画「冬の小鳥」や、若松孝二監督の「キャタピラー」といった、大作に埋もれがちな佳作を掘り起こして上映してきた。毎回上映前には、作品を紹介する特別アニメーションが流れ、その味わい深い文章と絵を手掛けているのが、「上映作を素材として、自分の作品をもう一つ作り上げるような気持ちで文を書いている」という小山さんで、「作品を2度ほど見て印象に残ったシーンを絵にしている」と話す安西さんだ。さらに朗読を俳優の濱田岳さん、音楽を阿部海太郎さんが担当している。
最近、単館系の劇場は減少の一途をたどっている。小山さんの出身地の熊本県天草市にも、かつては何館かあったそうだが、いまは「本渡第一映劇」だけになっている。東京出身で「旅先で小さな映画館を見つけると非常にうれしくなり、時間が許す限り入って映画を見ている」という安西さんも、「日本からそういう劇場がなくなることは非常に寂しい」と現状を憂いている。
そうした状況で、今回の「W座を探して」プロジェクトが企画された。会見では、安西さんから「テレビが映画を放送するようになったことにも、地方の町から映画館が消えていく多少の原因はある」と少々辛口のコメントが飛び出したが、2人は「映画という文化は地域の一つの光になりえる。地域を再生するのために映画館が残っていくのは大切なこと」(小山さん)、そのために「テレビ局が地方の映画館をもり立てていこうという意気込みはうれしい」(安西さん)と、WOWOWの取り組みに理解を示した。なお、1日の第1回放送では本渡第一映劇が紹介され、8日には埼玉県深谷市の「深谷シネマ」、15日の北九州市の「小倉昭和館」へと続いた。
プロジェクトの将来像について、小山さんは「僕が答える領域ではありませんが」と断った上で、「地方の劇場が結ばれW座アライアンス(同盟、連合)的なものができ、作品を配給したり、また、番組で作ったショートフィルムを地方の映画館で無料で上映し、それを見に来た人がおカネを払って本編の映画を見るというシステムが作れたら。あるいは、日本映画の才能ある人たちに協力していただいて、地方の劇場だけでしか見られない作品を作り、それを一つの呼び水にして来場していただく。そういうことができたらすてきですね」と見解を述べた。一方の安西さんも、小山さんのアイデアに賛同しつつ、「WOWOW映画賞のようなものを作り、入選作を地方の映画館で順次上映していくといった、新しい才能を発掘、応援するシステムができれば」と期待を寄せた。
自分がW座の支配人だったらどんな作品を上映したいかという質問には、ジョニー・ワイズミュラーさん主演の「ターザン」シリーズが人生における映画の原体験と話す安西さんは「西部劇特集」を、ロバート・アルトマン監督作「ザ・プレイヤー」が人生における最も印象深い作品だという小山さんは「絶対眠ってしまう映画特集」を挙げた。
ほぼ毎週末映画館に足を運び、何かしら見ているという安西さんにとっても、「劇場で見ないような映画が多く、非常に楽しい」といわせるほどの充実度を誇るW座のラインアップ。今後、金融危機の実態を暴くドキュメンタリー「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」(22日放送)などが並ぶ。これまでの放送分で、小山さん、安西さんが印象に残っていると挙げたネイチャードキュメンタリー「180°SOUTH/ワンエイティ・サウス」、安西さんおすすめのカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「白いリボン」もそれぞれ、29、30日に再放送される。みなさんもこれを機会に、W座を訪れてみてはいかがだろうか。
<小山薫堂さんのプロフィル>
1964年生まれ。熊本県出身の放送作家。N35代表。日本大学芸術学部在学中からラジオやテレビ番組の制作に放送作家として参加。その後、独立し、「カノッサの屈辱」や「料理の鉄人」といった数々の名番組を手掛けた。ドラマや映画の脚本、小説の執筆などでも活躍。脚本を手がけた映画「おくりびと」(08年)は米アカデミー賞外国後映画賞に輝いた。
<安西水丸さんプロフィル>
1942年東京都出身。イラストレーター。日本大学芸術学部卒業後、電通、米ニューヨークにあるデザインスタジオ、平凡社でADを務めたのち、安西水丸事務所を設立し、フリーのイラストレーターになる。朝日広告賞などを受賞。小説やエッセーなども手掛け、著書に「メロンが食べたい」「魚心なくとも水心」「美味しいか恋しいか」など多数。
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