朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第66回 二葉亭四迷「浮雲」

「浮雲」作・二葉亭四迷(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「浮雲」作・二葉亭四迷(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第66回は二葉亭四迷の「浮雲」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 今日もいつものように、図書館にある朗読倶楽部の部室へ行ったんですけれど、中に入ったら癸生川先生が机でぐったりしていたんです。

 具合が悪いのかと心配して声をかけたんですが、慌てている私に先生は一言、

 「春眠をむさぼりて悔なかりけり」

 ……と、久保田万太郎さんの俳句で応えてくれました。

 さて、今回はそんな先生のお話にちなんで? 「教育者」のお二人をご紹介しますね。

 4月16日は、北海道開拓時代に札幌農学校で教壇に立っていたウィリアム・スミス・クラーク博士が、アメリカに帰国された日です(1877年)。

 名前だけではピンとこない方も、別れの言葉に、「ボーイズビーアンビシャス(少年よ、大志を抱け)」を残した方といえば、ああなるほどと思われるのではないでしょうか?

 4月21日はドイツの教育学者、フリードリヒ・フレーベルさんのお誕生日です。

 就学前教育の開祖であり、世界初の幼稚園開設に尽力したフレーベルさんは1782年生まれ。

 学生時代は、太宰治さんの「走れメロス」のもとになった作品、「人質」を発表したフリードリヒ・フォン・シラーさんに学んでいたこともあるとか。

 ちなみに、やなせたかしさんの絵本「アンパンマン」の出版元で有名な「フレーベル館」の社名の由来は、このフレーベルさんの名前にちなんでつけられたものだそうですよ。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……朗読倶楽部とある女の子の出会いのエピソード、その続きです。

 朗読倶楽部を訪ねてきたと言う元気な女の子。

 ところが、私が朗読倶楽部のメンバーだと知った途端、見る見る機嫌が悪くなりました。

 彼女はどうも朗読倶楽部に良い印象を持っていないようでしたが、そもそも「校内でもほとんど知名度のない朗読倶楽部に、どうして他校の生徒らしき女の子が訪ねて来たのか?」ということに、その時になってようやく気がついたのです。

 ……とはいえ、ムッツリ顔の彼女を前にしてそれを聞くのも、何だかはばかられるような雰囲気で……。

 そんなわけで半ば無言の圧力のようなものを感じながらも、とりあえず部室へ案内することにしたのですが、実のところ自分の手に負えないので、メンバーの誰かに助けを求めたいというのが本音でした。

 部室に入ると先に来ていた部長さんが読書中でしたが、私と一緒に来た小さなお客様に気がつくと、突然にこにこして話しかけてきました。

 けれど、彼女の様子は依然として不機嫌なまま。

 一方、部長さんはなぜか気にしていない様子で、こちらもにこにこしたまま。

 このままでは話が進みそうにないので、せめて名前と用事だけでも聞こうと思って口を開きかけた時、ドアノックの音がしてみかえさんが部室に入ってきました。

 すると次の瞬間、今まで押し黙っていた女の子の様子が一変したのです。

 「お姉ちゃん!」

 彼女の名前は、「甲原ちな」。

 なんと、みかえさんの妹さんだったのです……と、いうところで、今回はここまでです。

 まだお話は続きますので、次回もよろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 二葉亭四迷「浮雲」

 こんにちは、今回ご紹介する1冊は、二葉亭四迷(ふたばていしめい)さんの「浮雲」です。

 二葉亭四迷さん初の小説となるこの作品は、1887年から1889年にかけて第三編までが発表されました。

 今日発表されている一般小説は、その大半が話し言葉を基本とした「口語体(言文一致体)」で書かれていますが、この作品が発表された明治時代中期の文学は、以前ご紹介した森鴎外さんの「舞姫」(1890年)を見てもお分かりの通り、「文語体」で記述されることが普通でした。

 しかしこの「浮雲」は、近代小説としては初めて言文一致で書かれ、現在にいたる日本の文学に大きな影響を与えたのです。

 内海文三さんは14歳の時に士族だった父を亡くし、母と子の二人で生きてきましたが、生活が苦しく東京の叔父を頼って上京したものの、愛想のない性格故か、叔母のお政さんからは煙たがられる肩身の狭い日々を送っていました。

 苦労の甲斐あって役所への就職が決まり、今までの恩返しを始めるとお政さんの嫌味もたちどころに消え、郷里の母親に仕送りもできるようになりました。

 昇進して給金も上がり、実家に帰省する余裕もできた上、従妹のお勢さんとの将来も考えるようになって順風満帆の文三さん。

 ところがある日突然、勤めていたお役所を免職になってしまいました。

 一方、文三さんの同僚の本田昇さんは愛想のいい世渡りで出世し、そのうちお勢さんの心も彼の方を向くようになってしまい……。

 続編構想のメモが発見されたことから「未完の作品」とも呼ばれるこのお話。

 一つ確かなことは、二葉亭四迷さんが作品の出来に満足ができなかったこと、そして作品発表後に内閣官報局で翻訳の仕事に就いたこともあり、次の小説は「其面影(そのおもかげ)」が発表される1906年まで、長い空白期間を待つことになるのです……。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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