堤幸彦監督:本当は社会派! 新作「MY HOUSE」を「世に投げかけたい」

最新作「MY HOUSE」について語る堤幸彦監督=5月8日撮影
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最新作「MY HOUSE」について語る堤幸彦監督=5月8日撮影

 「20世紀少年」や「SPEC」など大ヒット作を手掛けた堤幸彦監督が8日、早稲田大学で行われた自身の映画最新作「MY HOUSE」の試写会&ティーチインイベントに登場。ホームレスをテーマに本作を描いた堤監督は「エンタメ系という作品をたくさんやらせていただいてるんですが、その実、非常に社会問題に興味がありました」と語り、あえて今までそのような作風を出さないようにしていたことを告白。しかし「56歳になってこういう作品を作り、世に投げかけるっていうのもありかなと。やるべきだなと。やり続けないとちょっと死ねないなというか、監督業を名乗っている限りちゃんとやるべきだという思いに至りました」と本作への並々ならぬ思いを語った。

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 「MY HOUSE」は、07年に雑誌「AERA」に掲載された建築家・坂口恭平さんのホームレスに関する記事を読み、実在の路上生活者の機知に富んだ生き様に衝撃を受けた堤監督が、構想に5年をかけ、自らが発案・提案し、プロデューサ−を口説いたという「これまでとは違うやり方で作った」作品。坂口さんの「TOKYO0円ハウス 0円生活」(河出文庫刊)、「隅田川のエジソン」(幻冬舎文庫刊)を原作に、堤監督がこれまでの凝った映像処理や音楽を多用する演出を封印し、音楽なしのモノクロ映画に挑んでいる。また、撮影は堤監督の出身地・名古屋でほぼ初顔合わせの少数のスタッフと行い、キャスト陣も主演を務めたフォークシンガーのいとうたかおさんを筆頭に名古屋で活躍するアーティスト・俳優を多く起用している。

 とある都会の片隅に見たことがない「家」が建っていた。それは鈴本さん(いとうさん)が作った組み立て式の移動可能な家。都会に捨てられたアルミ缶を集め換金し、不要になった車のバッテリーを使って狭いながらもオール電化の生活をし、目からウロコのアイデアを駆使することで質素ではあるがそこそこ快適に暮らしている。その一方で、エリートコースを目指す中学生・ショータ(村田勘さん)、人嫌いで潔癖症の主婦・トモコ(木村多江さん)がいた。決して交わることのなかった彼らの暮らしがある事件をきっかけに交錯していく……というストーリー。ホームレスの姿を通し、家とは?家族とは?幸せとは?自由とは?本当に大切なものを問いかける。

 イベントには、原作者の坂口さんも出席。坂口さんは、自分の作品が映画化されたことについて「もともとは自分で撮るつもりだったんですけど、“堤さん来ちゃったよ”みたいな」と率直に話し、「自主映画とか嫌だったんで、『20世紀少年』みたいな感じでドーンと大きくいっちゃってほしいって言ったんですけど。でも、なんか堤さんすごくシリアスで、もしかしたら本気で自主映画撮るかもしれないって……。堤さんがすごく初々しかった」と映画化の話を受けた時の様子を明かした。また、主人公のモデルになった鈴木さんという実在のホームレスについて坂口さんは「師匠」と語り、「自分は(イエス・キリストの教義を広める)パウロみたいな気持ち。人間にはミッションがあって、鈴木さんからバトンを渡されたら走るしかない」と鈴木さんへの尊敬の念を熱弁した。

 客席には主演のいとうさんも来場し、最後にステージに登壇。「今日で映画を見たのは4回目。見るたびに違うものが見えてきます」とコメントしていた。映画は5月26日から「新宿バルト9」(東京都新宿区)など全国で公開予定。(毎日新聞デジタル)

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