注目映画紹介:「MY HOUSE」 モノクロの異色作 現代人の欲望の行きつく先とは

「MY HOUSE」の一場面 (C)2011「MY HOUSE」製作委員会
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「MY HOUSE」の一場面 (C)2011「MY HOUSE」製作委員会

 「トリック」「スペック」などで知られる堤幸彦監督が、構想5年をかけて製作した映画「MY HOUSE」が26日に公開された。従来の堤監督の作品に見られる、被写体に極端に寄るなどの独特のカメラワークも音楽もなく、しかも映像は全編モノクロ。別人の監督作と見まごうほどだ。物語の題材は「0円生活」。大都会の一等地で、ほぼ0円で暮らす実在の人物がモデルになっており、その人を師匠と仰ぐ、建築家であり作家の坂口恭平さんの著書がベースになっている。11年3月に堤監督の出身地・名古屋で、11日間にわたって撮影されたという。

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 都会の片隅に建つ、廃材を利用して造られた“家”。そこで暮らすのは、鈴本さん(いとうたかおさん)と、パートナーのスミちゃん(石田えりさん)。鈴本さんは、毎日自転車で走り回ってはアルミ缶を回収し、換金。不用品となった自動車のバッテリーを利用し、テレビなどの電化製品を使っている。市の職員とも顔見知りで、質素ながら快適な生活を送っている。一方、近所にはぜいたくな暮らしに翻弄される人々もいる。一人は、超エリートコースを目指す中学生のショータ(村田勘さん)。もう一人は、潔癖症の主婦(木村多江さん)。一見無関係だった彼らの暮らしが、ある出来事をきっかけに交わっていく……という展開。

 不思議な映画だ。ホームレスの安穏とした暮らしぶりをつづる話だと思っていたら、途中からサスペンスじみた展開になっていく。鈴本さんやショータたちがどこに向かっていくのか。その行き着く先が知りたくて、物語にどんどんのめり込んでいく。そこで目にするものは決して生やさしいものではないけれど、モノクロの美しい映像が、現実をより優しく、柔らかく映し出す。

 ぜいたくを排除して生きる人と、ぜいたくを求めて生きる人。接点がないようでいて実はつながっている。仕事、お金、マイホーム、幸福、豊かさ……。私たちが普段常識と思い、欲するものについて改めて考えさせられる作品だ。26日から新宿バルト9(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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