1巻が発売されたコミックスの中から、編集部と書店員のお薦めマンガを紹介する「はじめの1巻」。今回は、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載、ある中学校へ先生としてやってきた触手(しょくしゅ)超生物とその先生を暗殺しようとする生徒らの攻防を描いた松井優征さんの学園コメディーマンガ「暗殺教室」です。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
椚ヶ丘中学校3−Eの担任は、丸い頭でたくさんの触手をもった超生物「殺(ころ)せんせー」。生徒たち全員が先生を殺そうと一斉に銃を発砲しても、マッハ20の速さを誇る先生には一つも当たらない。先生は、月を7割蒸発させた犯人で来年の3月には地球を破壊しようともくろんでおり、生徒たちはその暗殺を依頼されたのだ。暗殺の成功報酬は100億円。生徒たちはことあるごとに先生を暗殺しようとするが……。
「暗殺教室」、この物騒(ぶっそう)なタイトルのマンガを一言で説明するならば、「先生を殺そうとするマンガ」ということができるでしょう。こうして説明すると、よりいっそう言葉の響きが物騒になったように思います。
ですが、「殺せんせー」というキャラクターの存在は、この「先生を殺す」という言葉が映す表情を、全くと言っていいほど変えてしまうのです。
「殺せんせー」は、月を破壊した触手超生物。目的や正体の一切は謎。椚ヶ丘中学校3−Eの担任にして、生徒たちの暗殺対象です。耳を疑うようなこの二つの役割を「殺せんせー」は平然と、余裕しゃくしゃくで、時にはその見た目とは似ても似つかない人間らしさで務め上げます。言葉だけでは想像もつかない、この「殺せんせー」という存在は、まさに「読めばわかる」としかお伝えしようがありません。
反対に殺し屋となるのは、進学校で落ちこぼれの烙印(らくいん)を押され、自分の価値を見失いかけた生徒たち。彼らは「先生を殺そうとする」ことで「殺せんせー」と、そして自分たちと向き合うことになります。心が揺さぶられるような、この辺りの人物描写は、前作から続く松井先生の真骨頂(しんこっちょう)と言えるでしょう。
皆さんも、読めば必ず、「殺せんせー」を暗殺したくなるはずです。
待ちに待った松井優征先生の新連載がスタートするという話を聞きつけ、喜び勇んで掲載誌を開いた私の目に飛び込んできたのは、大昔のSF映画に登場したタコ型宇宙人を彷彿(ほうふつ)とさせる謎の生物と「暗殺教室」という物騒なタイトル名……。「こんなデザインをした生き物が主人公で大丈夫か?」と、最初に抱いた私の不安は、第1話を読み終えた時にはすっかり頭の中から消えておりました。
自分を暗殺するための技術を生徒に教える主人公こと謎の生物「殺せんせー」と、100億円の成功報酬のために“対殺せんせー用暗殺技術”を磨く生徒との間に、緊張感が横たわる微妙な関係を維持しながらも、教師と生徒もしくは生徒同士の絆が徐々に深まりゆく姿を描き出して、ギャグあり感動ありの学園コメディー作品に仕上げてしまった松井先生の話作りのうまさに、ただただ感心させていただきました!
テンポの良いギャグも、切れの良いパロディーも、一くせも二くせもあるキャラクターも、そして、先が全く読めないストーリーの面白さも、全てが読者を作品世界へとひき込む魅力に満ちた、久しぶりに「文句なしに面白い!」と断言できる作品に出合えた喜びを今はただかみしめていたいと思います。
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