M-1グランプリ2024 決勝戦
決勝戦 FIRST ROUND 前半戦 1~5組目
12月22日(日)放送分
映画やドラマなど幅広く活躍し、いまや日本を代表する実力派俳優の一人となった西島秀俊さんが12年に日本で公開された映画「CUT」「セイジ−陸の魚−」、12年放送のスペシャルドラマ「ダブルフェイス」などの出演作をWOWOWプライムで17~19日に特集放送する。放送を前に西島さんに特集作品の撮影エピソードや各作品への思いについて聞いた。(毎日新聞デジタル)
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−−今回の特集作品の中で特に印象に残っているシーンや苦労したシーンはありますか。
どの作品もスケジュールがない中での撮影だったので、現場では全力疾走でやっている印象でした。個人的には「CUT」以前と以後では、演技に対する意識も変わったし、求められる役も、より肉体的な表現を求められるようになったと思います。
−−「CUT」と「セイジ−陸の魚−」は撮影時期がかぶっていたそうですが、異なる役柄を同時期に演じるにあたり、苦労されたことはありましたか。
「CUT」で1カ月半撮影したのですが撮りきれなくて、その後「セイジ−陸の魚−」の撮影に1カ月行かなければなりませんでした。「CUT」のアミール・ナデリ監督から「身も心も、今のそのままの状態をキープしてくれ」といわれて、「セイジ−陸の魚−」は山や森でずっと撮影していたのですが、体をギリギリまで絞り込んでいたので、それをキープすることはとても大変でした。セイジという男は、世界で起こっていることを一人で背負い込んでしまうような人なので、「CUT」の役柄とは割と近かったです。お陰でセイジという役を演じるにあたって、「CUT」の役作りは非常にプラスに働いていました。
−−「セイジ−陸の魚−」撮影後に「CUT」の現場に戻るときは、すぐに役には入れましたか?
「CUT」のときに「とにかく誰とも話すな」といわれていて、1カ月半誰とも話さなかったのですが、「セイジ−陸の魚−」の現場でもほぼそのままの状態に近い形でしたので、「CUT」の現場に戻ったときには違和感なく入れました。
−−作品ごとに全く異なったキャラクターを演じられていますが、役作りはどのようにされているのでしょうか。
脚本をもらった段階で、徐々に役に向かっていっています。体を大きくしたり、絞ったりするのは時間がかかるので、脚本をもらった段階で意識し始めます。
−−「ダブルフェイス」は「インファナル・アフェア」を原作にして作られたドラマですが、苦労した点や気をつけた点はありますか?
「インファナル・アフェア」はとても好きな作品ですし、出演されている俳優さんをみんな尊敬していますが、やるからには原作を超える気でいました。「いい作品を作る」ではなく、ハッキリと「原作を超える」と思ってやらないと、いいものにもならないと思っていたので、「絶対に超えます」と現場で宣言しました。
−−「ダブルフェイス」で印象に残るシーンは?
僕の中で「ダブルフェイス」はいろんなことがうまくいった作品で、それは監督の演出と、素晴らしいスタッフ、共演者だったので、その方たちに引っ張ってもらっていました。現場のテンションもとても高かったです。その中でも、香川照之さんの存在が大きかったです。からんだシーンは少なかったんですが、とても引っ張ってもらって、自分が考えていたプランとはいい意味で全く違ったものになりました。
−−「セイジ−陸の魚−」では俳優でもある伊勢谷友介さんが監督をされていましたが、他の監督との違いはありましたか?
あまり違いは感じませんでした。監督・伊勢谷友介として現場にいらっしゃったので、特に俳優の方が監督をしているという感じはなかったですね。ただ、伊勢谷さんはスタッフの動きであったり、俳優が演じるところを、とても楽しそうに見ていたな、というのが印象的ですね。楽しんでやっていたのは、俳優でもあり監督でもあるからかもしれないですね。
−−西島さん自身、映画を見るときになにかこだわりなどありますか?
途中でおなかが空いて、集中できないと嫌なので、何があっても最後まで見切るために、映画を見る前に絶対に何かを食べて、トイレにも行ってから見るようにしています。それは、映画館で見るときも家で見るときも同じです。最近はあまり映画館で見られていないのですが、時間ができて劇場に行くと、上映前に照明が落ちる瞬間なんか「やっぱりいいなー」と思いますね。
−−思い出の映画は?
00年に「ハズバンズ」とかが上映された「カサベテス2000」という(特集上映)のがあって、「ミニー&モスコウィッツ」を見に行ったときの観客の一体感がすごくて、みんなが笑って泣いて、泣き笑いみたいになっていました。その後、(東京・)渋谷の街を自転車でぐるぐる回っていた記憶があります。
−−ご自身以外の役者さんの演技のどのようなところに魅力を感じますか。
徹底的に役作りをする役者さんに興味が向き始めています。それは「CUT」以降なのですが、そういう役者さんの演技を見返して、どうやったら常軌を逸した役作りができるのかを考えています。度を越えた役作りをする人がいると思うんですが、自分もその一員になりたいと思っています。
−−今後一緒に仕事をしてみたい監督、俳優、またはやってみたい役、シチュエーションなどはありますか?
ドバイの世界一高いビルに吹き替えなしで登るような役をやりたいです。アクションがやりたくて、体を鍛えているのですが、そういうシーンを吹き替えなしでやりたいですね。本当に危ないことがやりたいです。ちゃんと安全対策はしなくてはいけないですが、危ないこととか体をさらすようなことをやって、死にものぐるいでワンカットずつ撮っていくしか、いい映画は撮れないんじゃないかとずっと思っていて、できれば吹き替えなしでいろんなことをやりたいな、と思っています。
−−オフのときは どのように過ごされていますか? また、普段の生活で役を意識されることはあるのでしょうか?
以前は共演者の方たちと飲みにいったり食事に行ったりということは全くしなかったんですが、最近はプライベートの時間も一緒に食事をしたりして、共演者の人たちはシーン以外の時間は何をしているのかを知ると、新たな発見があったりして、プラスに作用していますね。なので、プライベートでは仕事で出会った人たちといろんな話をしているし、これからもしたいと思っています。
−−今休みがとれるなら、何をしたいですか?
南極に行きたいです。「監督失格」を撮っていた平野勝之監督に昔「一緒に冬の北海道を自転車で回ろうよ、西島くんは好きだから! そういうつらいのが絶対好きだから!!」っていわれたんですが、当時はそんなこと思っていなかったので、「そういうつらいのとか嫌いです」とかいっていたんだけど、今はすごく分かります(笑い)。
−−特集で放送する各作品の見どころを教えてください。
ドラマW「蛇のひと」については、森監督は構成の緻密さがあり、画面の中で何がどのように映っているのかにとても繊細な気がします。なので、画面の隅々まで見てしまうというか、何か象徴となるものが映っていたりとか、ちょっとしたことで登場人物の心の機微がフッと見えたりするところが一つの見どころですね。それと、キャスティングの面白さと、その人たちの演技が森監督の演出でまた変わってくる。登場人物が全員魅力的なんです。ほかには、脚本が妙に生々しくて、とにかく面白かったです。今西という役はとても興味深いキャラクターで、正直、また演じたいです。今演じたら、また違った感じになると思います。
映画「CUT」は、ジョン・カサベテスという監督が非常に好きなのですが、カサベテス監督の「ラブ・ストリームス」という映画にかかわっていたアミール・ナデリというイランのカリスマ的な監督が日本で撮るということでぜひにと参加させていただきました。僕にとっては「CUT」以前と以降で何もかもが一気に変わるようなすごい体験をした作品です。見どころは、出ている役者が本当に追い詰められていく様子が描かれていて、演技ではなく本当に死にそうになっていたり、一見バカバカしいシチュエーションの中に、肉体的にギリギリの人たちが映っている、という強烈な印象の作品だと思います。
映画「セイジ−陸の魚−」は、日本映画の中で、一番遠慮なく、演技を平然としている役者が集まっている映画だと思います。例えば、殴るシーンでも、平気でグーで殴ってきて、殴られる方も「そんなもんだろ」と思っているようなメンバーが集まっています。
「ダブルフェイス」は、反響が本当に大きくて、特に作り手側の人で会う人みんなが「ダブルフェイス」のことを話してくださいます。リメークなんですが、高い志と情熱を持って作ると素晴らしい作品ができるんだなと思いました。僕の代表作の一つだと思います。見どころは、この座組みだったら、海外のエンターテインメントの映画と勝負できるんじゃないかと思わせてくれる監督、スタッフ、共演者の皆さんと仕事ができたからこそ、このクオリティーの作品が作ることができたと自負していて、どんな方が見ても絶対に楽しめるドラマだと思っています。
−−最後に、この特集をご覧になる視聴者に一言お願いします。
今回の特集でオンエアされる作品はどれも全然違う作品です。素晴らしい監督たちの特色が出ている作品なので、どれも面白いです。ぜひ、全部見てください!
<プロフィル>
1971年3月29日生まれ、東京出身。94年に映画デビュー。「チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋」や「大河ドラマ 八重の桜」などのドラマに出演。また映画でも国内外問わず多くの作品で活躍している。おもな出演作に「2 DUO」「ニンゲン合格」「Dolls」「帰郷」「休暇」「サヨナライツカ」など。「ストロベリーナイト」公開中。
<放送ラインアップ>
ドラマW「蛇のひと」:17日午後1時放送。第2回WOWOWシナリオ大賞を受賞した衝撃のヒューマンサスペンス。出演は永作博美さん、西島秀俊さん、國村隼さんなど。監督は「重力ピエロ」などの森淳一さん。▽「CUT」:18日午後3時50分放送。NYを拠点に活動するイランの鬼才アミール・ナデリ監督と西島さんがタッグを組んだスポ根ならぬ、映画愛ど根性ドラマを融合させた異色作。▽「ダブルフェイス潜入捜査編」: 18日午後7時50分に放送。香港映画「インファナル・アフェア」をWOWOWとTBSという二つのテレビ局にまたがるドラマという新しい形でリメークした。▽「セイジ−陸の魚−」:19日午後4時放送。辻内智貴さんのベストセラー小説を、俳優の伊勢谷さんが監督に専念して映画化したヒューマン作。寂れたドライブインを舞台に不器用な男たちの織りなす人間模様をつづる。▽「ダブルフェイス偽装警察編」: 19日午後7時50分放送。
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2024年12月24日 10:00時点
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