ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
人気アニメ「機動戦士ガンダム」の赤い彗星(すいせい)ことシャア・アズナブルをイメージした乗用車「シャア専用オーリス」の市販モデルが26日に初公開され、10月1日の発売に向けて予約の受付も始まった。トレードマークである赤を基調にしたスタイリッシュな車体と細部までこだわり抜かれた“機体”は、まさにシャア専用。トヨタが展開するプロジェクトの全容とバーチャルカンパニー「ジオニックトヨタ」による開発の裏側に迫った。(毎日新聞デジタル)
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シャア専用オーリスは2012年8月、新型オーリスをベースに製作されたコンセプトカーとして、アニメやゲームのキャラクター関連商品を集めたイベント「キャラホビ2012」で初公開され、ネットを中心に大きな話題となった。そのプロジェクトの始まりは、オーリスのモデルチェンジがきっかけだった。
新型オーリスは、「NOT AUTHORITY,BUT AURIS」「常識に尻を向けろ」というキャッチコピーで、赤をキーカラーに過激なCMを放送するなど挑戦的なイメージを打ち出していた。その鮮烈な「赤」や「常識にとらわれない」考え方がシャアのイメージに合う、スタイルと走行性を重視する新型オーリスの特徴もシャア専用にふさわしいと考えたのが、プロジェクトの仕掛け人であるトヨタマーケティングジャパン・プロデュース局の柳澤俊介さんだった。
当初、社内は賛否両論だったといい、柳澤さんは、周囲のガンダム好きからさまざまな意見を聞き、まずは、ガンダム関連の市場の大きさなどをマーケティングの観点から説明して上司を説得し、コンセプトカーの企画を始動させた。カスタマイズ商品の企画・開発を手がけるトヨタモデリスタインターナショナル(以下モデリスタ)に製作を依頼し、わずかな期間でコンセプトカーを完成させた。
キャラホビでの発表後には、コンセプトカーを全国のショッピングモールなどにも展示した。反響は予想を上回る大きさだったといい、柳澤さんは「商品化を望む声はキャラホビ以上」と振り返る。ネットだけでなく、展示会でも「ほしい」「乗りたい」という熱い声が続々と集まり、商品化が現実味を帯びていった。
13年1月には商品化を発表し、同時に仮想企業「ジオニックトヨタ」を設立した。ジオン公国を代表する重機メーカー・ジオニック社とトヨタ自動車が技術提携して設立したという設定で、関連ツイートは発表当日だけで1万件を超えるなど反響は大きく、現在までに2万6000人超のファンが社員に登録。フェイスブックやツイッターのほか、東京、名古屋で開催した「ジオニックトヨタ会議」などを通じて多数のアイデアやリクエストが寄せられ、そのエッセンスが、シャア専用オーリスのコンセプトづくりやパーツのネーミング、デザインなどに取り入れられていった。
また、開発過程においては、ファンだけでなく、プロジェクトに関わる社内外の人間がみな“前のめり”だった。柳澤さんも「それぞれの会社にガンダム好きがいて、普通だったらあり得ないくらい協力的だった」と明かし、シャア専用オーリスのデザインを担当したトヨタモデリスタインターナショナルの松本雅治さんも「頼んでもいないのに提案してくるんです(笑い)。ガンダムらしいデザインで試作品まで持ってくる。『デザイナーがいるのに……』って思うんですけど、それが格好よくて最後まで悩みました」と苦笑する。
松本さんもコンセプトカーの開発依頼に、一も二もなく手を挙げた。「子供の頃からガンダムを見て育ってきましたから、何かしら、私のデザインにはエッセンスが入っていたと思う」と語る松本さんは、「車ではなくモビルスーツをデザインさせてもらったと思っています。脚はないですが、モビルアーマーではなく、あくまでモビルスーツです。脚なんて飾りですから」と劇中のセリフを交えて自信をみせる。
市販モデルは「1/1のプラモデルのように楽しんでもらいたい」との考えから、コンプリートカーではなくパーツ販売での取り扱いとなっており、松本さんは「デザイナーとしてはフルコンプリートしてほしいですが、アンテナ1本でもシャア専用オーリスです。デカールも用意していますし、自分だけのシャア専用オーリスをつくってほしいですね」と呼びかけている。
市販モデルは、本来のオーリスの赤をベースにエアロパーツのみがツヤ消しのワインレッドというツートンのボディーカラーで、シャアの搭乗機体に付く「ツノ」も設置。ファンの要望が多かった「モノアイ」はインテリアに取り入れ、走行時に赤い“目玉”が光る仕掛けに昇華させた。さらに、ファンの声で圧倒的に多かったという「シャア専用オーリスナビ」も900台の数量限定で開発。ナビメッセージの一部がシャアの声で再生されるなど遊び心が満載だ。
ファンや関係者の思いが結実したシャア専用オーリス。松本さんは「本当にファンの思いが一つになった、みんなでつくった車になったんじゃないでしょうか」と手応えを話し、柳澤さんも「シャアのすごさがわかってきて、歴史上の人物みたいに思えてきました。これから尊敬する人を聞かれたら、シャアと答えようかな」と冗談めかしながらも、すっかり魅了された様子。さらに、「シャア専用オーリスはトヨタとしても全く新しい取り組みへの挑戦です。ファンそれぞれのシャアへの思いを、クルマをパーソナルカスタマイズして楽しむことで実現してくれれば」と語る。
ちなみに、シャアといえば「通常の3倍の速さ」だが、松本さんは「さんざん議論しましたが、3倍速いスピードが出てしまうと交通違反でシャア大佐が捕まってしまいますので……」と苦笑しつつ、「でも、所有する喜びは3倍くらいあるはずです」と胸を張った。
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