1977年に発表され、ハリウッドでもたびたび映画化の企画が持ち上がっては、その複雑な内容から実現がかなわなかったというSF短編小説「エンダーのゲーム」(85年に長編化)がついに映画化され、18日から全国で公開された。小説は、日本のアニメやマンガ、ゲームなどに多大な影響を与えたとされる。10歳の少年といういささか若過ぎる主人公ながら、彼が抱える重圧や責任は大人並みで、仲間との切磋琢磨(せっさたくま)を通じて大人になっていく様子を描く成長物語でもある。監督・脚本は、やはり少年の成長を描き、米アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「ツォツィ」(2005年)のギャビン・フッドさん。それだけに、SFアクションだけではない、人間の内面を洞察する陰影に富んだ作品に仕上がっている。
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かつて、昆虫型異星生命体フォーミックの襲撃によって大打撃を受けた地球では、次のフォーミックの襲来に備え、新世代の戦士の育成を急いでいた。そんな中、国際艦隊の訓練長官グラッフ大佐(ハリソン・フォードさん)は、10歳の少年、アンドルー・“エンダー”・ウィッギンに目をつける。彼は人口抑制のため一家に子供は2人までとされている中、政府が認めた場合のみ出産が認められる“サード”と呼ばれる3人目の子供だった。アンドルーはエリートのみが選ばれる戦闘訓練基地バトル・スクールに送られ、仲間とともに厳しい訓練に耐え抜いていくが、待ち受けていたのは驚くべき事実だった……。アンドルーを演じているのは「ヒューゴの不思議な発明」(11年)で主演したエイサ・バターフィールドさん。前作から身長は伸び、精悍(せいかん)な顔つきになり、知的な少年を好演している。
図らずして、宇宙戦争を終わらせる者=“エンダー”という大きな使命を背負わされたアンドルー。彼は、指揮官としてのプレッシャーにさらされ、かつライバルからの嫌がらせに心を痛めながら過酷な訓練をこなしていく。澄んだ青い目と華奢(きゃしゃ)な肉体でそれらを受け止め、必死に我が身を鼓舞する姿が痛々しい。そして、そんな彼を待ち受ける衝撃の事実……。宇宙空間の映像は驚くほどリアルで、少年戦士たちの無重力バトルも迫力に富み、SF映画として楽しめるが、それだけではない。一生かかっても拭えないほどの罪悪感を背負うことになるアンドルーの苦悩と、それをさせる大人たちの罪という予想以上に重たいテーマが、この作品には込められている。18日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(りんたいこ/フリーライター)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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