リリー・フランキー:50代男性の定年後を斬新に描いた 「55歳からのハローライフ」第1話主演

NHK提供
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 村上龍さんの短編小説集「55歳からのハローライフ」(幻冬舎)がドラマ化され、14日から放送がスタートする(NHK総合で毎週土曜午後9時)。全5話のオムニバスドラマで、各話とも人生の折り返し点を過ぎた中高年を主人公に、将来への不安を抱えながらも新たな道を探る姿を描いている。第1話「キャンピングカー」は、会社を早期退職し、キャンピングカーで妻と放浪の旅に出ようとするが家族から反対され、仕方なく再就職しようとする58歳の主人公をリリー・フランキーさんが演じている。主演のリリー・フランキーさんに役どころやドラマの見どころについて聞いた。

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 リリー・フランキーさんは、台本を初めて読んだとき「定年を迎えるお父さんとその周辺の家族の話。すごくオーソドックスな話というか、でも、本来であればその人の人生を訥々(とつとつ)と描かれていくものだと思うんですけど、定年になる人をテーマに扱ったものでこういう描き方をしてるものは見たことがないな」と思ったという。「ある意味、すごく斬新に描かれていながら、本質は現代の55歳のお父さんの定年の風景を映像にしてみたり言葉にしてみたらこうなるっていうのがすごく面白かったですね」と新しさを感じた。

 今回演じた主人公・富裕太郎(とみひろ・たろう)について、「男の人の論理で何も疑問を持たずに生きてきた、ある意味、純粋な人なのかもしれないし、身勝手な人なのかもしれない。でも、すごく一般的な父親像ではあるんじゃないかなと思いますね」と評する。そして「この主人公の気持ちは、すべての人が持っている願望なんじゃないですかね。いくつになったらとか、どこまで行ったら、もうあとはゆっくり過ごして、とらわれずに好きなものだけを見て過ごすっていう願望は、すべての人にあると思うんですよね。だけど、それをできた人があまりいないという。そういう現実とのズレはありますよね」と普遍性を強調する。

 現在、リリー・フランキーさん自身は50歳だが、「僕自身50歳になっていろいろと考えることはありますが、僕の場合は始まってないことの方が多いので、50歳になって一区切りしないといけないなという感じではないんですよ。これから始めなきゃならないことが多くて」と世間の50代より感覚は若い。だが「同級生なんかにあと5年で定年だっていう話を聞くと、ああもう俺もそういう年になっているのかと思って、やっぱり考えますよ。今まで、これ面白いからいいやとか、何となくいいかなと思っていたことがだんだん自分自身の中でよくなくなってきて、自分に対しても人に対してもスルーできないことが増えてきましたね、逆に」とこだわりが出てきたことを明かす。

 ドラマでは、定年後の男性の願望の象徴としてキャンピングカーが登場する。リリー・フランキーさんは「男の人には多いと思うんですけど、子どものころから、自分の基地みたいなところに好きなモノをいっぱい集めて、それが移動するっていう。自分の書斎的なモノがほしいんですよね。自分の好きなモノに囲まれて、それで移動できたら一番いいのになっていうね」と自身も“キャンピングカー”的なものが憧れだったと話す。そのため「キャンピングカーが欲しいという富裕さんの気持ちはもちろん分かるし、富裕さんが迎えている切なさも分かるなと。その前に、僕の場合、車の免許を持ってないとか一緒に行く人がいないとか、始まってないから富裕さんほど悩みが深刻じゃないんですけどね」と笑い飛ばしながらも共感する。

 自分が富裕だったらキャンピングカーを買うか?という質問には「買うと思います。意外と日本のお父さんは自分に手をかけてあげてない。自分にご褒美をあげるから、もう一度奮起できるでしょうしね。キャンピングカーを買ったことで、移動式のクッキーショップみたいな何か面白い仕事をできるかもしれないし。定年って通っていた場所(会社)に行かなくなるだけで、環境が変わるってことじゃないと思うんですよね。新しいものを自分から作っていかない限りは」と言い切る。

 そのキャンピングカーでどこに行きたいかと聞かれると、「地味ですよ。日本中のラーメン食べたいとか。だってキャンピングカーに乗ってることで、ある意味もう完結してるわけですから。行く先はどこでもいいんですよね。それは景色のいいところでもいいし、繁華街でもいいし。場所はどこでもいいんですけど、普通のことをすごくワクワクさせてくれるのがキャンピングカーだと思います。今考えているのは、シングルベッドとダブルベッドのどちらのキャンピングカーを買うべきなのか、運転は自分でするのかとか、免許はどうするのかとか。こういうことを考えてる時間もキャンピングカーに乗ってるようなもんですから」と考えながらもわくわくしている自分がいるという。

 最後に第1話の見どころを聞くと、「定年退職した主人公が妻とキャンピングカーに乗っていろいろなところへ行ってみたいなあっていう、お父さんにとってもお母さんにとってもすごく幸せだし、何の欠点もないようなアイデアなのに、現実はものすごくいろいろなほころびが出てくるんだなと。家族や人間の心のつながりやすれ違いとか、すごく面白く描かれています」とアピール。そして「全然辛気くさい話ではなく、楽しくもあり、気づかされることもある作品だと思います。55歳になっても例えば15歳でも、結構同じようなことで悩んでいるなって。そして孤独感みたいなものが形を変えてもずっと残っていくんだろうなとか。どの年代の人が見ても共感できることと、その感覚の変貌(へんぼう)を想像したり。いろいろな年代の方に見てもらって楽しんでもらいたいですね」とメッセージを送った。

 *……「55歳からのハローライフ」は“老いていくことの希望”を描く5編のオムニバスドラマ。6月14日からNHK総合で午後9時~9時58分に放送。主演は、第1話「キャンピングカー」にリリー・フランキーさん、第2話「ペットロス」に風吹ジュンさん、第3話「結婚相談所」に原田美枝子さん、第4話「トラベルヘルパー」に小林薫さん、第5話「空を飛ぶ夢をもう一度」にイッセー尾形さん。

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