米女優のアンジェリーナ・ジョリーさん主演のディズニー映画「マレフィセント」が好調だ。今年公開された洋画実写映画の中で唯一の興行収入40億円超えで、トップを独走している。真実の愛に裏切られた邪悪な妖精・マレフィセントが主人公という一見、大人の女性向けの映画だが、夏休みに入り家族連れも目立つという。「小学生から大人までの女性をターゲットとした究極の愛の物語」をプロモーションの根幹に据え、ヒットに導いた同映画の宣伝プロデューサー、高橋良太さん(ウォルト・ディズニー・ジャパン)に戦略を聞いた。
ウナギノボリ
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映画は、1959年製作のディズニーアニメ「眠れる森の美女」を邪悪な妖精マレフィセント(ジョリーさん)の視点から実写で描き直した作品。下敷きはヨーロッパの古い民話・童話として知られている「眠れる森の美女」だが、映画ではオーロラ姫にかけられた“永遠の眠り”の呪いにまつわる“究極の愛”が描かれている。
映画を見て作品を貫くテーマは「マレフィセントを中心とした愛の物語」と確信したという高橋さんは、「小学生から大人までの女性をターゲットとした究極の愛の物語」を根幹に据えて、各世代を意識したプロモーションを展開していった。
小学生やそれ以下の子供の動員を念頭に置いたとき、真っ黒いバックに黒いマレフィセントが浮かび上がっている米国のオリジナル版のポスターが「日本に合っていない」と感じた高橋さんは、「小学生も見られる映画なので、あえて暗くする必要はないのかなと。スタイリッシュさは崩さずに怖くならないようにするにはどうしようか」と考え、白バックのマレフィセントに、眠れる森の美女(オーロラ)と妖精を入れることで明るいビジュアルに仕上げた。ちなみに、子供にも見てもらえるようにと戦略が練られた日本とは逆に、米国では“ディズニー”という言葉が与えるイメージが強く、子供向けの映画に見られてしまう傾向があるため、大人にも見てもらえるようにあえてダークなビジュアルに仕上げられたという。
劇場から吹き替え版の注文が多かったことから子供の動員に手応えを感じたという高橋さんは「通常は7対3か6対4くらいの割合で字幕版の注文が多いんですが、今回は、吹き替え版の注文が多く、最終的には5対5だった。ということは、劇場が子供の動員も予測したということ。小学生やそれ以下の年齢のお客さんが来てくれるだろうと思った」と振り返る。夏休みに入ってからの家族連れの観客が目立つといい、子供に向けたプロモーションも成功したといえる。
大人の女性向けのプロモーションとしては、ジョリーさんの生き様を前面に押し出した。高橋さんは、プロモーションの戦略を模索していく上で、何人かの女性の話を聞き「アンジーの生き様にひかれている女性が多いことに気付いた」という。両親の離婚やいじめなど愛に飢えた少女時代を過ごしたジョリーさんが、カンボジアから養子を迎えて母親になったことやパートナーのブラッド・ピットさんと出会ったことで愛や自信を取り戻し、今や母として、女優や映画監督、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使としても活躍している姿が日本の女性たちから多くの支持を得ていることから、ジョリーさんの半生やマレフィセントとの共通点を劇場用パンフレットなどで積極的に紹介した。
6月にはジョリーさんとオーロラ役のエル・ファニングさんを呼んでジャパンプレミア・イベントを行ったが、高橋さんは「女性にうってつけの2人だった」と振り返る。「アンジーという人気女優と10代を中心とした若い女性に人気のエル・ファニング。いいバランスだった」と話す通り、10代の若い世代から大人の女性までを網羅したプロモーションを展開した。高橋さんは「夏は男性向け映画がたくさん公開される。“女性向け”としたことで目立つこともできた」と全世代の女性に向けたプロモーションに手応えを感じている様子だった。
最終興行収入は60億円と見込まれている「マレフィセント」。8月に入り、夏休み映画が続々と封切られる中、どこまでその記録を伸ばすことができるのか。今後の動向に注目したい。
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