米マーベル・コミックを題材にした映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(ジェームズ・ガン監督)が公開中だ。映画は、主人公が“無限の力”を持つパワーストーン・オーブを盗んだことから闇の存在に命を狙われ、犯罪歴のあるおたずね者ばかりで構成されたチームとともに宇宙の存亡を懸けた戦いに挑む姿を描く。日本語吹き替え版で主人公のピーター・クイルを担当した山寺宏一さんと、アライグマのロケット役の声を担当した加藤浩次さんに話を聞いた。
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見た目は可愛らしいが口が悪いというロケット役を、お笑い界の「狂犬」と呼ばれる加藤さんが演じた。パブリックイメージ的には適任に思える配役だが、加藤さん自身は「一時期、そう言われたというだけ」と笑い飛ばす。今作の出演も「僕はキャラクター的にディズニーさんとは一生縁がなく(笑い)、自分がただただ(映画館に)足を運ぶ場所だと思っていたので、お話が来てびっくりしました」と冗談交じりに告白し、「しかもブラッドリー・クーパーが向こうでやっている役と聞いて、『無理だよ、俺』というのは最初に思い、正直に(スタッフに)そう言いました」と明かす。それでも「『日本バージョンは違うものと考えてもらって、似せる必要もない』と言ってもらったことで、光栄なことなのでやらせていただきました」と出演までの心境を振り返る。
一方、昨年も『シュガー・ラッシュ』でラルフ役を演じた山寺さんは、「ディズニー作品は本当にたくさんやっていて、昨年も『シュガー・ラッシュ』をやらせていただいたばかりで、もう来ないだろうなと思っていたのですが(笑い)、またこうやってお話をいただき、しかも大役でびっくりしました」と驚いたようで、今作について「マーベルとディズニーが組んでいるので面白くないわけがない」と断言。実際に映画を見て「想像以上に面白くて驚きました」といい、「(出演できて)本当にうれしかった」と喜ぶ。
ピーター役の山寺さんは役柄を、「(チーム『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の)メンバーの中では一番まともに見える」としながらも、「他のキャラクターもそうですが、(ピーターも)何かいろんな過去を背負っている」と切り出し、「9歳で地球から誘拐され、しかもお母さんが死んでしまうところから始まり、トレジャー・ハンターとして生活を送るなど普通のヒーローではない」と評す。続けて、「(過去に関する)伏線はいっぱいあるけど、今作では一切出てこないからこそやりがいがあったし、演じていて楽しかった」と充実感をにじませる。
ピーターがおたずね者からヒーローへと変遷していく過程を、「いくつかポイントがあったと思う」という山寺さんは、「(仲間の一人の)ガモーラが宇宙に投げ出されて、助けに行かなきゃいけない時、母親の形見のウォークマンを取り返そうとする時、みんなを説得するところ」を挙げる。そして、「どんどんみんなと仲間になっていき、物語の中で成長していった」と説明する。
加藤さんはロケットを演じている時に、「『おいっ、こら!』とか『待て!』とか言えるのが楽しかった(笑い)」と打ち明け、「普段から言いたいんでしょうね」と自己分析。山寺さんが「最近あまり言う機会なくなってるんじゃないですか」と水を向けると、加藤さんは、「言う機会が減っている。減っているから、やっぱり言っておきたい、はき出したいというのが根っこにあるんでしょうね」と豪快に笑う。
ロケットのキャラクターについては、「ただ凶暴なだけじゃない。今回は生い立ちとかは出てきてないんですけど、多分いろいろあるはず」と推測し、「本当は温かかったり優しかったりするけれど、表現がうまくできなかったりする。実は結構、いろいろと気持ちがうごめく人……人というかアライグマだなと思う」とユーモアを交えながらその印象を語る。映画の中で「こんな姿になりたかったわけじゃない」というせりふがあるが、加藤さん自身も「見ていてもですが、自分でやっていてもグッときた」と話し、複雑な背景を持つだけにスピンオフの可能性を示唆すると、「いいですね。なってほしい」と加藤さんは前向きな姿勢を見せた。
自身が演じた以外で気になるキャラクターを聞くと、そろって「グルート」の名前を出した。取材当日、周囲の関係者やスタッフが着ているTシャツを指して、「今日のスタッフたちのTシャツは全員ロケットですが、最終的に映画を見た人たちはみんなグルートファンになる」と山寺さん。加藤さんが「大ボケですからね(笑い)。それで人に優しい」というと、山寺さんも「強くて全部を持っている。グルートはずるい」とうらやましがる。
アフレコの出来について加藤さんは、「正直そこまで経験もないですし、自分がいいのか悪いのか判断が全然付かない」と謙遜し、「監督さんのイメージに近づけられるよう頑張ったのですが、出来上がりを見るのがちょっと怖い」と不安げな表情を浮かべる。加藤さんの発言を聞き、山寺さんは「加藤さんの声をいくつか聞きながらやらせてもらったのですが本当にぴったりで、もしかしたらブラッドリー・クーパーよりもぴったりかも」と絶賛。「僕と加藤さんのコンビはメリハリが利いているから、掛け合いとか楽しくなっているといいな」と期待を込める。
山寺さんに褒められたものの加藤さんは、「反省も含め反応を伺って、その結果、『2』でしれっと代わっている可能性もあるかもしれない」と自嘲気味な様子で、「一生懸命やりましたので温かい目で見てもらいたい」とメッセージを送る。そんな加藤さんに山寺さんは、「声優でもああいった勢いでやるというのは難しいのに、やっぱりさすが」と声をかけ、「(加藤さんの持ちネタの)“爆裂お父さん”を思わせるような勢いを感じるテンションが素晴らしい」と加藤さんがバラエティー番組で扮(ふん)するキャラクターを挙げて称賛すると、「爆裂お父さんを思わせてはダメですよね(笑い)。褒めてるのかけなしてるのか分からなくなってます」と突っ込み、ピーターとロケットの掛け合いのようなやり取りで場を盛り上げる。
お気に入りのシーンを聞くと、山寺さんは「牢獄(ろうごく)に入る時に奪われたウォークマンを取り返すことにムキになるところ」を挙げ、加藤さんは「マシンガンをぶっ放したあとに『いいね、最高じゃん』というのがすごく気持ちよかった」と語るも、「何回か監督に『やり過ぎ』と言われちゃいました……」と笑いながら振り返る。
今作について、山寺さんは「盛りだくさんすぎるぐらい盛りだくさんなんだけど、すごく分かりやすくなっていて、非常によくまとまったエンターテインメントだと思う。僕はこういう映画が大好き」と絶賛する。一方、加藤さんは「分かりやすいというと、世界観を説明しすぎちゃうことがあるじゃないですか。一切、段取りなくポーンと始まって世界観にグッと取り込んで理解させていく、という構成が面白いなと思った」と語る。
そんな2人に洋画やSFにあまりなじみがない人にどう勧めるか?と質問。山寺さんは、「『スター・ウォーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など、毛色は違いますが、そういうSFの要素とユーモアのエッセンスが入った作品。アニメでいうと、僕が自分でやった中で一番好きな作品の『カウボーイビバップ』のような要素もちょっと入っている。僕の好きなものが全部入って一つになっているぐらい楽しい作品で、元気になれます!」と力説する。加藤さんは「SF作品が『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』で止まっている人は多いと思いますが、それらの双璧を成すようなものが出てきたなというにおいがします」と力強く言い切り、さらに「(マンガの)『ワンピース』の世界観にも似ているところがあって、宇宙版の『ワンピース』と考えてもらえば分かりやすいのかなと思う」と語る。
そして、「今作が半径10メートルだとしたら、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』自体は多分、それの10倍以上の世界観があると思う。今後どう描かれていくかも楽しみ」と期待を込め、「これを縁にディズニーさんとも太いパイプを作っていきたいなと思っています!」と語り、笑いを誘った。映画は全国で公開中。
<山寺宏一さんのプロフィル>
1961年6月17日生まれ、宮城県出身。85年に声優デビュー。“七色の声を持つ男”と異名を取り、ディズニーアニメ「美女と野獣」や劇場版アニメ「シュレック」シリーズ、テレビアニメ「それいけ!アンパンマン」「新世紀エヴァンゲリオン」などのほか、海外ドラマや洋画など幅広い作品で声優として出演。一方で、ナレーターや司会者、CM、バラエティー番組、舞台公演などでも活躍し、幅広い世代から人気を集めている。
<加藤浩次さんのプロフィル>
1969年4月26日生まれ、北海道出身。高校卒業後に上京し、東京ヴォードヴィルショーの研究生をへて、89年にお笑いコンビ「極楽とんぼ」を結成しデビュー。最近では芸人としてだけでなく、キャスターやMC、俳優としても活躍している。おもなレギュラー番組に「めちゃ2イケてるッ!」(フジテレビ系)、「スッキリ!!」(日本テレビ系)、「スーパーサッカー」「がっちりマンデー!!」(ともにTBS系)などがある。
(インタビュー・文・撮影:遠藤政樹)
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