注目映画紹介:「パレードへようこそ」80年代英国での実話を温かいまなざしとユーモアで描いた感動作

(C)PATHE PRODUCTIONS LIMITED.BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014.ALL RIGHTS RESERVED.
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 英国のサッチャー政権下で実際にあった出来事を描き、今年のゴールデン・グローブ賞作品賞にノミネートされ、2014年のカンヌ国際映画祭ではLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)などをテーマにした作品に贈られるクィア・パルム賞に輝いた映画「パレードへようこそ」(マシュー・ウォーチャス監督)が、4日から全国で公開される。閉山の危機に立ち向かう炭坑労働者たちとLGBTの性的マイノリティーの人々が、協力し合い未来を切り開いていく姿を、ユーモアを交えて描いた感動作だ。

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 1984年、サッチャー政権下で荒れる英国。炭坑閉鎖に反対しストライキをする炭坑労働者たちに心を動かされたマーク(ベン・シュネッツァーさん)は、彼らとその家族を支援しようと思い立つ。折しもその日はゲイの権利を訴えるパレードが行われる日。マークはゲイ仲間たちと、そのパレードで行進しながら炭坑労働者とその家族を支援するための募金活動を呼びかけるが……という展開。

 性的マイノリティーと炭坑閉鎖という特異なモチーフを扱っているが、決して人ごとではない。炭坑閉鎖について地元の人々が複雑な心情を吐露する場面では、状況は違えども原発問題で揺れる現代の日本に重なり、パレードの場面では人間は一人では微力だが、同じ志を持つ者が集まれば大きな岩をも動かす力になることを実感できた。かといって映画は深刻ぶって語ってはいない。ユーモアにあふれ、場面からは、ウォーチャス監督の登場人物に対する温かいまなざしが伝わってくるかのようだ。存命の“LGSM(炭坑夫支援レズビアン&ゲイ会)”のメンバーや舞台になった町の人々が、劇中再現したパレードに参加するなど、作品に協力したことも特筆すべき点だ。リーダー魂を発揮して“LGSM”をぐいぐいと引っ張っていくマークにせよ、家族にゲイであることを打ち明けられず、おどおどしながらも会に懸命に尽くすジョー(ジョージ・マッケイさん)にせよ、登場人物すべてが魅力的で、好きにならずにいられない。最後に起こる“奇跡”にも胸が熱くなった。ほかにビル・ナイさんやイメルダ・スタウントンさんらが出演。4日よりシネスイッチ銀座(東京都中央区)ほか全国で順次公開。 (りんたいこ/フリーライター)

 <プロフィル>

 りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションを経てフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。

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