注目映画紹介:「王妃の館」水谷豊が“もう一人”の右京演じる 現代と中世が交錯するコメディー

(C)浅田次郎/集英社(C)2015「王妃の館」製作委員会
1 / 5
(C)浅田次郎/集英社(C)2015「王妃の館」製作委員会

 俳優の水谷豊さんの主演映画「王妃の館」(橋本一監督)が25日に公開される。浅田次郎さんの小説が原作で、ドラマ「相棒」(テレビ朝日系)で杉下右京役を演じる水谷さんが、今作では天才売れっ子作家の北白川右京を演じることでも話題となっている。パリで300年の伝統があり「王妃の館」と呼ばれるホテル「シャトー・ドゥ・ラレーヌ」を舞台に、作家の北白川(水谷さん)ら個性的な面々が、倒産寸前の旅行会社が企画したツアーに参加したことで騒動に巻き込まれる。奇抜な衣装でユーモラスな演技をする水谷さんと、20日間におよぶロケを行ったという美しいパリの風景が物語を彩る。

あなたにオススメ

 パリ伝統と格式を誇り、「王妃の館」と呼ばれる最高級ホテル「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ」のが憧れる最高級ホテル。そのスイートルームを利用して、倒産寸前の旅行会社が窮地を脱するため、一つの部屋を昼夜に分けて豪華なツアーと格安ツアーというダブルブッキングを企てる。各ツアーの参加者は売れっ子小説家・北白川右京(水谷さん)ら個性的な面々ばかり。参加者にばれないようツアーを行う旅行会社社長の朝霞玲子(田中麗奈さん)だったが、次第にマイペースな北白川に振り回され……というストーリー。

 予告などの前情報で、水谷さん演じる北白川右京の個性的すぎるファッションを知ってはいたが、いざスクリーンで見ると意外にも不思議な魅力が漂い、ファンタジックな世界へと誘われる。知的なせりふは杉下右京のイメージを引っ張ってはいるものの、オーバーなほどに作り込まれた北白川右京は憎いほど面白く、また17世紀のルイ王朝を舞台にした劇中劇での水谷さんの演技も秀逸。劇中劇については、ルイ王朝の物語をあえて日本人キャストのみでミュージカル風に描くという思い切った手法ながら、ルイ14世を演じる石丸幹二さんが凛とした空気感を生みだし、すがすがしさと感動を与えてくれる。劇中劇だけを抽出した舞台公演を見たくなるほどだ。また日本映画では初めてロケが行われたというベルサイユ宮殿をはじめ、パリの街並みは、美しくファッショナブルで、高解像度の映像には目を見張る。ツアー参加客の群像劇と17世紀が交錯しつつ物語は進むシチュエーションコメディー的な面が強く、肩肘張らずにクスクスと楽しめる。丸の内TOEI(東京都中央区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)

 <プロフィル>

 えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。

写真を見る全 5 枚

映画 最新記事