先ごろ行われた第39回モントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門に出品された「合葬」(小林達夫監督)が、26日から公開される。柳楽優弥さんと瀬戸康史さんがダブル主演。杉浦日向子さんのマンガが原作で、江戸市中を守るために若者たちが結成した「彰義隊」をテーマとした青春群像劇だ。
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慶応4(1868)年。第十五代将軍・徳川慶喜(飴屋法水さん)は、江戸城を明け渡した。これに異を唱えて集まった者たちで結成された「彰義隊」は、市中見回りの任に当たっていた。秋津極(柳楽さん)は将軍に忠誠を誓い、彰義隊に自ら加わった。しかし、幕府の解体により、彰義隊は今や反政府的集団と見なされていた。心配した幼なじみの福原悌二郎(岡山天音さん)は除隊を促すが、極は養子先を追い出された幼なじみの吉森柾之助(瀬戸さん)を巻き込み、隊に戻っていく。彰義隊は強硬派が次第に暴走し始め、やがて追い込まれ……という展開。
3人の若者が時代のはざまで翻弄(ほんろう)される姿を、青春映画のようにスクリーンに焼き付けた。幼なじみを演じる柳楽さん、瀬戸さん、岡山さんの表情が素晴らしい。目をギラつかせ、己に課した使命に燃える極。子どもっぽい表情から、キリッとした青年に成長していく柾之助。隊の暴走を止めるために入隊し、巻き込まれ感がハンパない悌二郎。3人に降りかかるのは、時代の大きな流れに流されるしかない悲しい鉄則だった。映画は、若い彼らを華美に演出せず、淡々と出来事として映し出したところに好感が持てる。それだけに、途中流れる横文字の曲には個人的には興ざめ……。ここは好みが分かれそうだ。伝説のマンガ誌「ガロ」に1980年代に連載された原作を用い、80年代生まれの小林監督が手掛けた。時代劇とは思えない新しい試みにも挑んだ。例えば、カヒミ カリィさんのナレーションは、澄んだ声が詩のように響き、とても新鮮だ。脚本は、「天然コケッコー」(2007年)や連続テレビ小説「カーネーション」の渡辺あやさん。出演者はほかに、オダギリジョーさん、門脇麦さん、桜井美南さんら。26日から新宿ピカデリー(東京都新宿区)ほかで公開。(キョーコ/フリーライター)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。今作でもう一つ、切腹がむちゃむちゃ痛そうだったところが印象に残りました。
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