第68回カンヌ国際映画祭で「ある視点部門」の監督賞を受賞した映画「岸辺の旅」(黒沢清監督)が1日に公開された。今作は、湯本香樹実(ゆもと・かずみ)さんが2010年に発表した小説が原作で、3年間も失踪していた夫が突然帰宅し、夫婦そろってその間に世話になった人たちを訪ねながら愛を深めていく姿が描かれる。俳優の浅野忠信さんと女優の深津絵里さんがダブル主演を務め、初めて夫婦役を演じている。旅の途中で出会う人々には小松政夫さん、蒼井優さん、柄本明さんら演技派がそろう。
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3年前に失踪した夫の薮内優介(浅野さん)が突然帰ってきて、妻の瑞希(深津さん)に自分は死んだと告げる。優介に誘われ旅に出た瑞希は、優介が過ごした3年の間、お世話になった人々を訪ね歩く。空白の3年間をたどるように旅するうちに、瑞希と優介は、それまで知らずにいた秘密にも触れることに。そして、お互いへの深い愛を改めて感じる2人だったが、瑞希が優介を見送る時が次第に近付き……というストーリー。
今作はとても奇妙な物語で、不思議な再会を果たした夫婦が旅をする姿からは、愛や時間というものの切なさを痛切に感じた。浅野さん演じるひょうひょうとした雰囲気の中にも悲しさを醸し出す夫と、深津さん演じるけなげで深い愛情を胸に秘めた妻の姿は、どこにでもいそうなのにどこか神秘的な雰囲気も漂わせ、残された者と死んでしまった者というスピリチュアルなテイストにマッチしている。今作は、夫婦のバックボーンの説明や回想シーンなどはなく、妻である瑞希の不安や喜びといった生々しいまでの感情を中心に描いていることに驚かされる。だからこそ、生と死というものは限りなく断絶しているものではあるけれど、死んでしまった人は存在は消えたのではなく確かにあり、形は変われどともに生きていくという誠実さと涙ぐましさが強く胸を打つのではないだろうか。自分がどういった人間であるかは人生が終わってみてから気づくのであれば、今作のような伝える術(すべ)があると、すてきかもしれない。テアトル新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(遠藤政樹/フリーライター)
<プロフィル>
えんどう・まさき=アニメやマンガ、音楽にゲームなど、ジャンルを問わず活動するフリーの編集者・ライター。イラストレーターやフォトショップはもちろん、インタビュー、撮影もオーケーと、どこへでも行き、なんでもこなす、吉川晃司さんをこよなく愛する自称“業界の便利屋”。
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