フランスのリュック・ベッソン監督が製作と脚本を務め、英俳優ジェイソン・ステイサムさんの代表作ともなった大ヒット作「トランスポーター」シリーズ(2002年、05年、08年)が装いも新たにスクリーンに帰って来た。そのリブート(再起動)版「トランスポーター イグニション」(カミーユ・ドゥラマーレ監督)で新たなヒーロー、フランク・マーティンを演じるのは、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」(11年~)で注目されたエド・スクレインさんだ。スクレインさんが9月に来日し、映画の日本版主題歌「IGNITION」を担当したEXILE SHOKICHIさんとの対談が実現した。
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映画「トランスポーター イグニション」は、ワケありの品物を運ぶプロの運び屋(トランスポーター)、フランク・マーティンが、美女3人という異例の“依頼品”を引き受けたことから、父親の命と引き換えに巨大売春カルテルに立ち向かうことになる……というストーリー。製作と脚本は、前シリーズ同様、ベッソン監督が務める。
映画を見て「本当にスタイリッシュでパワフル」といい、「僕はダンスをやるけれど絶対できない。それぐらいキレキレのアクションで、同じ男から見てもカッコよかった」と興奮しきりのSHOKICHIさん。自身に、もしアクション映画のオファーが来たら? との問いかけに、「5年くらい練習してからじゃないと(笑い)」と、スクレインさんのアクションのすごさを強調する。
隣で聞いていたスクレインさんが「実は格闘技は、この作品までやったことがなかった。撮影に入る3週間半前にトレーニングを始めて本番に臨んだんだ」と明かすと、SHOKICHIさんは、「マジっすか!?」と度胆を抜かれていた。
スクレインさんは3週間半のトレーニング中は、「週5日、毎日10時間特訓した」そうで、「最初の1週間は失敗続きだった」と打ち明ける。そして「3週間半、とにかく頑張った。僕にとって、この映画のある意味、一番の挑戦は、この準備段階だったと思う」と語り、「アランのチームが素晴らしかった。SHOKICHIもパリに行って彼らに師事してもらえば、3週間ぐらいでバッチリだよ」と、スタント・コーディネーターのアラン・フィグラルツさんへ感謝の言葉を送りながら、SHOKICHIさんをアクション映画に誘った。
そのスクレインさんは、SHOKICHIさんが書き下ろした楽曲を「映画にぴったりのエネルギーを感じるし、キャラクターやテーマとのシナジー(相乗効果)も素晴らしい」と評し、「映画を締めくくるにはパーフェクトの楽曲。英語バージョンがないのが残念」と絶賛。このインタビューが行われた朝も「この曲を歌いながら、しかも踊りながら廊下を歩いた(笑い)」そうで、「SHOKICHIがこの楽曲を提供してくれて、こういう形でコラボレートしてくれたことを、そして、この楽曲によってさらに映画が盛り上がったことに感謝しているよ」とSHOKICHIさんをたたえた。
SHOKICHIさんによると、映画を見終えてまず浮かんだのは「サビの部分のメロディー」だったという。そのフレーズを抱えたまま、今回の楽曲作りのコラボレーター2人とスタジオに入り、セッションを重ね、形にしていったという。歌詞についても、映画を見ながら、「真っ黒なシート」や「パッケージ」といった「トピックとなる言葉」をピックアップしておき、それを曲に乗せていったという。「ゴールが見えていたので、ふらふらすることなく真っすぐ」作っていくことができたと、自身の仕事を振り返った。
実はスクレインさんも、俳優業に就く前はミュージシャンとして活躍していた。当時のことを、「完全なアングラ系で、音楽に対してロマンティックな思いを抱いていた」と振り返る。自身も曲作りの際には「メロディー先行で、キーワードを拾ってというやり方だった」といい、それだけに「音楽のジャンルを問わず、音楽を作る人間にはとても親近感を覚える」のだという。
話が少し寄り道するが、スクレインさんは美大出身で、音楽をやる前は「ずっと絵を描いていた」そうだ。絵画、音楽、俳優と立ち位置は変わってきたが、「どのステージにおいても自分のやるべきことをやっている。そういう強い思いがある」と、「本能に従う生き方をしてきた」ことを明かし、今は「絵を描こうとか音楽をやらなければとか、そういう衝動はない」としながら、「もし、いつの日か自分の腹の中にある演技に対する炎が消えたら、俳優をやめて、きっとまた違うことをやるんだろうね。それが、ガーデニングなのかバレエなのか分からないけど」と笑顔を見せる。
それでも、「演技というものに対して、まだまだ自分のポテンシャルの20%しか開発できていないんじゃないか、もっともっと成長して、もっとみなさんにお返しできるものがあるんじゃないかと強く考えている」と、当分は俳優業に専念する構えだ。その上で、「ほかの方々に言いたいのは、自分の心の声に耳を傾けて従うこと。今いる場所が自分の場所だと勝手に決めつけるのではなく、本当にやりたいことがハートの中にあるなら、勇気を持って、その通りにやってみるべきだと思う」と熱く呼び掛けた。
それを聞いたSHOKICHIさんは、「僕も、釣りだったり、料理だったり、いろいろ趣味を持とうとトライしたこともあるんですけど、いかんせん飽きっぽい(笑い)」と頭をかき、また、これまでのテレビドラマでの演技経験を振り返りながら、「やっぱり自分の中で音楽がしっくりくる」といい、「音楽だけは中学生の頃から続けられている唯一長くできるもので、エドさんが今言った心の声が、自分にとっては音楽だけだなと思いますね」と音楽への情熱を改めて確認していた。
さて、今作での主役フランク・マーティンは、天才的なドライビングテクニックと格闘センスを備え、しかも二枚目で寡黙(かもく)で、ディオールのスーツをさりげなく着こなしている。愛車はアウディS8。そんなイケてる男を演じスクレインさん、また、スクリーンで目の当たりにしたSHOKICHIさんの2人に「カッコいい男の条件」を尋ねると、スクレインさんは「やっぱり、ありのままの自分であることじゃないかな。自分でいることに居心地のよさを感じている人ほど、それが誠実さとなって表れ、人に好かれるんじゃないかな」と即答。そして、「人ってもともとそれぞれ違う。言い換えれば、ありのままでいれば、人とは違う自分になるし、人生を魅力的にするのは多様性だと思う。僕がすごくクールだと思う人は、結構エキセントリックな人だったりするからね」と言葉をつないだ。
一方のSHOKICHIさんは「自分のビジョンを決めて、そこに情熱を持ってトライできている人は、男性も女性もそうですけど、カッコいいし、輝いて見えますね」と語り、「自分もそういう大人でありたいし、そこにピュアさを持って、常に精進していきたいと思います」と自らの襟を正していた。映画は24日から全国で公開中。
<エド・スクレインさんのプロフィル>
1983年生まれ、英国出身。美術大学では絵画を専攻。卒業間近に音楽に引かれ、2004年からミュージシャンとして活躍。27歳のとき音楽仲間のplan B(ベン・ドリュー)さんに請われ、彼の脚本・監督作「Ill Manors」(12年・未公開)に出演。それをきっかけに演技にのめり込み俳優に転向。13年、テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ:第3章」のダーリオ・ナハーリス役で注目される。ほかの映画出演作に「バトルフィールド」(14年)など。2016年公開予定のマーベル・コミックの映画化「Deadpool」にも出演する。
<EXILE SHOKICHIさんのプロフィル>
北海道出身。大学時代から音楽グループ「Jack Pot」「symphony」を結成。DJやラッパー、シンガー、ダンサーが集うクルー「WILD STYLE」に所属し、札幌市内のイベントに出演するなど活躍。2006年、「新生J Soul Brothers」(現・二代目J Soul Brothers)のボーカルオーディションの話が舞い込み、07年から同メンバーとして始動。09年、メンバー全員がEXILEに加入。14年6月からはソロとしても活動を開始。テレビドラマ出演作に「シュガーレス」(12年)、「フレネミー~どぶねずみの街」(13年)がある。
(インタビュー・文・撮影/りんたいこ)
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