甲鉄城のカバネリ:荒木哲郎監督がオリジナルアニメ制作の裏側語る 富野監督の影響も

「甲鉄城のカバネリ」のビジュアル(C)カバネリ製作委員会
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「甲鉄城のカバネリ」のビジュアル(C)カバネリ製作委員会

 アニメ「進撃の巨人」などの荒木哲郎監督が手がける新作オリジナルアニメ「甲鉄城のカバネリ」が、フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で7日深夜から順次、スタートする。話題作を続々と手がけてきた荒木監督のオリジナル作品ということで、放送前から注目を集めている。「負け犬が見返すことに興味がある。最先端でとがったものよりも、普遍的なものを作ることを考えていた」と語る荒木監督に制作の裏側やアニメへの思いを聞いた。

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 ◇スチームパンク・ゾンビ・ロードムービー?

 「甲鉄城のカバネリ」は、蒸気機関が発達した極東の島国・日ノ本(ひのもと)を舞台に、鋼鉄の心臓を持つ生ける屍(しかばね)の“カバネ”と装甲蒸気機関車・甲鉄城に乗り込んだ少年少女の生き残りをかけた戦いを描くオリジナルアニメ。「進撃の巨人」などのウィットスタジオが制作し、「超時空要塞マクロス」などの美樹本晴彦さんがキャラクター原案を手がけたことも話題になっている。

 同作は、蒸気機関が発展した“スチームパンク”な世界を舞台に、少年少女が旅をしながら、ゾンビのようなカバネという存在と戦うという“スチームパンク・ゾンビ・ロードムービー”とも言える作品となっている。荒木監督はアニメの構想を「アクションものをウィットスタジオで作ることが決まっていた。負け犬が見返すことに興味がある。主人公のそばに少女がいる……ということを考え、その後、設定を決めていった。ほかにないものを目指した。最先端でとがったものよりも、普遍的なものを作ることを考えていた」と明かす。

 “ゾンビもの”にした理由は「アクションで殺しても心が痛まないものを考えた。敵を殺してもヒロインが可愛く見えるようにしたかった」といい、“ロードムービー”となったことについては「移動要塞を使ってロード-ムービーにしようとした。移動要塞で人々の心の葛藤を描写しようとした。『ファーストガンダム』が好きなんですよ。ホワイトベースの人々の心の中を描いていますよね」と説明する。

 ◇美樹本キャラをより魅力的に見せるために…

 キャラクター原案として美樹本さんが参加したのは、荒木監督の希望だったといい、美樹本さんが描くキャラクターの魅力を「少女の魅力が普遍的なんですね」と話し、「まさかやってくれないと思うけど、聞いてみましょう!となった。本当にやっていただだけるとは……」と喜ぶ。美樹本さんが手がけたキャラクターは「まさに欲しいものだった。『これです!』の一言につきます」と絶賛する。

 同作では、キャラクターが豊かな表情を見せる。美樹本さんが手がけたキャラクターをアニメでも魅力的にも見せるために「メークアップの専用のスタッフが参加し、女性キャラは“お化粧”をしている。美樹本さんのイラストを再現するために、ここぞ!という場面でやっている」という。

 ◇オリジナルアニメの苦労

 荒木監督は「ギルティクラウン」などオリジナルアニメも手がけてきたが、「DEATH NOTE」「進撃の巨人」など原作があるアニメも手がけている。オリジナルアニメならではの苦労を「最初はわけが分からない作品。2、3人のスタッフから制作が始まって、だんだんスタジオのみんなで作るようになる。広がっていくところがエキサイティングで、スリルや興奮があります。オリジナルは難しい。演出方法は原作と変わらないけど、シナリオを成立させる苦労が比でははない」と明かす。

 原作があるアニメは、視聴者はある程度、作品の概要を理解した上で見る人も多いが、オリジナルアニメの場合、視聴者はキャラクターや世界観の知識がないまま、見ることになる。視聴者が初めて作品に触れることになる重要な第1話について、荒木監督は「主人公を見て『お前、すごい!』と思ってもらえることを大切にした。ヒロインが可愛いだけじゃないというように見えることも気にした」と話す。

 ◇ライバルは? 富野作品に参加して気付いたこと

 荒木監督は「進撃の巨人」など話題作を続々と手がけてきたこともあり、アニメ業界で注目を集めるクリエーターの一人。“ライバル”について聞いてみると「長井龍雪さんに決まっています」と即答。長井さんは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」などの人気作で監督を務めてきたクリエーターで、荒木監督は「目指しているものは違うけど、心がある作品を作る方です。端的にうまい! あいつになりたい!」と力強く話す。

 また、荒木監督は昨年、富野由悠季監督が15年ぶりに手がけた「ガンダム」シリーズの「ガンダム Gのレコンギスタ」で絵コンテと演出を手がけたことも話題になった。荒木監督は、富野監督について「憧れでした」と話し、一緒にアニメを制作することで「(森のシーンで)『モビルスーツが木をよける作画が大変だから、木を描かないのか?』と言われた。不便そうに動くことで、見えてくるものがある。富野さんの作品の人間らしさは、そういうところにもあるのか!と分かった。やってみて分かったことです」と学ぶことも多かったようだ。

 富野作品に参加したことが「甲鉄城のカバネリ」にも影響しているといい「例えば、キャラクターが歩く時、足元にパイプなどがあるとよける。よけ方でキャラクターがより人間的に見える。コンテも作画も大変ですが」と話す。

 「甲鉄城のカバネリ」の制作状況について「苦しい時期は終わった。とにかく苦しかった」と話す荒木監督。第1話が放送されると、ハイクオリティーな映像が話題になりそうで、勢いがそのまま続くかも気になるところで、「仕込みは終わった。あとは、絵にする時間との勝負。オレとみんなの頑張り次第です」と語る。荒木監督が“勝負”をかける「甲鉄城のカバネリ」の展開が注目される。

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