超硬派のゲーム雑誌「ゲーム批評」の元編集長で、現在はゲーム開発と産業を支援するNPO法人「国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)」代表の小野憲史さんが、ゲーム業界の現在を語る「小野憲史のゲーム時評」。今回は、「WiiU」の製造終了報道について考えながら、家庭用ゲーム機に搭載する独自仕様のメリット、リスクについて語ります。
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ゲーム機の設計・製造コストのうち最大の比重を占めるのは、長くカスタムLSI(大規模集積回路)だった。同一スペックで大量生産されるゲーム機は、半導体の設計・製造とも相性が良い。そのため、1980年代の日本の半導体産業を支えたのは、ゲーム機とゲームソフトに内蔵される半導体だったという見方もあるほどだ。
しかし技術革新によって、専用にカスタマイズされた半導体でなくても、十分にゲームが楽しめるようになってきた。その好例がスマートフォン向けゲームで、今ではゲーム機とほぼ変わらない品質でゲームが楽しめる。一方のゲーム機と言えば、カスタムLSIの設計・製造が重荷になるケースもでてきた。
任天堂の家庭用ゲーム機「WiiU」もその一つだ。省電力・高性能を追求して、CPU(中央演算処理装置)とGPU(画像演算装置)を1つのLSIチップにまとめたが、WiiU本体の販売台数が伸び悩んだ。任天堂の発表によると1260万台、ゲームソフトが7930万本(2015年12月)で、同社の歴代の据え置き型ゲーム機の中では最低の数字となっている。
そしてWiiUの不振は、LSIを製造するルネサス エレクトロニクス鶴岡工場(山形県鶴岡市)の業績を直撃した。一時は工場閉鎖の検討も出たほどで、最終的にはソニーとTDKへの売却で閉鎖はまぬがれたが、カスタムLSIの供給に影響を与えたのは確実だ。任天堂はWiiUの製造を年内で終了する報道が出たのも、一連の流れを考えれば納得のいくところだ。
経営戦略の基本となる「選択と集中」は、ゲームソフト開発でも同様だ。2000年代までゲーム機ビジネスは、一機種のみが突出する「一強皆弱」現象が見られた。限られたゲーム機の性能を最大限に生かすため、ゲーム会社が最も普及しているハードに研究開発を集中させたからだ。その頂点がプレイステーション(PS)2で、ハードの限界を超えた名作が多数登場した。
一方でゲーム機メーカーも他社との差別化を図るため、ゲーム機固有の機能を追加してきた。その好例が任天堂のWiiで、Wiiコントローラーを振りながら遊ぶスタイルは、他では味わえない体験を提供すると共に、他機種へのゲームソフトの移植を困難にさせた。Wiiが売れ続ける限り、この独自性は任天堂にとってプラスに働いた。
しかし、2010年ごろからWiiの性能限界がささやかれると共に、ソフト不足が目立ってきた。ゲームソフトの開発規模が拡大し、ソフトメーカーの多機種展開が一般化する中で、PS3やXbox360よりも性能が低く、独自色の強いWiiへの移植が困難になったことが原因だ。この構図はWiiUも同じで、ゲームファン向けのゲームの多くは、PS4とXboxOne、PCで発売されている。そしてWiiUはソフト不足ゆえに、本体の販売で苦戦するという悪循環を生んでいる。
市場の差別化を図る上で独自の提案は必須だが、部品メーカーやゲーム開発者からは敬遠されるリスクも高まる。同社は年内に新型ゲーム機「NX(仮称)」を発表する予定だが、バランスをどう取るかが注目される。
おの・けんじ 1971年生まれ。山口県出身。「ゲーム批評」編集長をへて2000年からフリーのゲームジャーナリスト。08年に結婚し、妻と猫3匹を支える主夫に“ジョブチェンジ”した。11年から国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)代表に就任、12年に特定非営利活動(NPO)法人の認定を受け、本格的な活動に乗り出している。
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