中川晃教:フランキー・ヴァリ役に「運命感じる」 10年ぶりスタジオアルバムに名曲「君の瞳に恋してる」収録

インタビューに応じた中川晃教さん
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インタビューに応じた中川晃教さん

 抜群の歌唱力を誇り、日本のミュージカル界に欠かせない俳優の一人、中川晃教さん。デビューから15年を迎え、今年7月にミュージカル「ジャージー・ボーイズ」で、1960年代に世界的にヒットした米国の音楽グループ「フォー・シーズンズ」のフランキー・ヴァリ役を演じることも話題となっている。シンガー・ソングライターとしても活動を続ける中川さんに、ヴァリ役や、10年ぶりとなったスタジオ録音アルバム「decade(ディケイド)」について聞いた。

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 ◇日本のジャージー・ボーイズ誕生へ意欲燃やす

 「ジャージー・ボーイズ」は、「シェリー」「君の瞳に恋してる」などの大ヒット曲を持つ「フォー・シーズンズ」の歴史を基にした作品で、数々のヒット曲が劇中に登場する。2005年にブロードウエーで初演され、各国で数々の賞を受賞。今回初めて、日本人キャストで演じられる。

 ヴァリ役には、高音で力強く、それでいて心地のいいヴァリの歌声を表現する高度な歌唱テクニックが必要とされる。さらに「フォー・シーズンズ」のキーボード奏者で、テナー・ボーカルを務めた音楽プロデューサーのボブ・ゴーディオさんに認められなければならないというハードルがあった。

 中川さんは当初、選考があることを知らず、気負いなく「いつもの(ミュージカルに出演する)感覚でオファーを受けた」と振り返る。先方とやりとりをしていく中で、計9曲分のデモテープを提出することになり、選考されていることに気づいたという。正式にヴァリ役を得るまでに約1カ月。思いがけず巡り合った世界的ミュージカルに「運命を感じる役、作品と出合った。出合えたことが奇跡」と喜びをにじませる。

 自身もブロードウェーの来日公演を鑑賞し、老若男女が総立ちになって楽しむ姿を目の当たりにした。「シニアから、若い人まで、幅広い世代のお客さんがスタンディング。それを見て、歌い継がれた曲(の数々)だと実感しました。やるからには(同作を)絶賛しているファンたちに『日本のジャージー・ボーイズが、ここにいま生まれた!』と思ってもらわなければ成功にならない」と並々ならぬ意欲を燃やしている。

 ◇「フランキー・ヴァリとクロスオーバーした」名曲「君の瞳に恋してる」

 3月に発売されたアルバム「decade」には、フランキー・ヴァリが歌ってヒットし、今も歌い継がれる名曲「Can’t Take My Eyes Off You」(君の瞳に恋してる)をボーナス・トラックとして収録した。この録音は「僭越(せんえつ)ですけれど」と前置きした上で、「中川晃教とフランキー・ヴァリがクロスオーバーした瞬間が残せた」と確かな手応えを感じた。

 テクニックが要求されるヴァリ役での歌い方とは異なる表現を目指し、「頭でっかちにならず、今、歌おう」と、ヴァリ独特の歌い方をしながらも「サビからは強引に自分の世界を出しているんです。狙って歌い分けたのではなく、いい塩梅(あんばい)でブレンドされた。すごくよかった」と笑顔を見せた。

 ◇「男らしい中川晃教」にスポット スタッフとの信頼関係で「曲が生まれ変わった」

 アルバムにはボーナストラックのほか、中川さんの作詞・作曲による10曲を収録。10曲のディレクションを担当した大槻一裕さんは、今回の狙いを「(中川さんの歌声の)ざらっとした部分、きれいだけれど男らしい部分を出したかった」と語る。ハイトーンの魅力もあり、中川さんの歌声が「どちらかというと女性っぽい、きれいな方向」に向かっていると感じたことへの反動だ。

 また大槻さんは「J-POPでは普通、Aメロ、Bメロ、Cがサビ。あってDメロという構成。中川さんの曲には“K”が出てきたり、展開が一つしかないものがあったりする」と、その楽曲の独自性の高さにもほれ込んだ。

 中川さんは、今回のアルバムに携わったスタッフに対し、「本当に信頼できる」という言葉を繰り返した。レコーディングは、大槻さんの明確な“ビジョン”に、中川さんが応えていく形で行われたといい、大槻さんに「細かいことをいろいろ言ってくれて、歌い方も新しくなった。まさにボーカルアレンジャー」と絶大な信頼を寄せる。ライブで歌い続けている曲も「この出会いがあったことで生まれ変わった。僕も新鮮な気持ちで(出来上がった曲を)聴くことができた」と自信を見せている。

 ◇「出会いの先に未来が待っている」 デビュー15年迎え新たなステージへ

 「デビュー15年って、あっという間。だけど確実に一日一日の積み重ねで、15年を迎えられるんだと実感する」と話した中川さん。「ジャージー・ボーイズ」のヴァリ役は、「自分の経験してきたことが実を結ぶ作品。経験値も、スキルも、テクニックも……。33歳の今の僕だからこそ、挑める役」といい、アルバム「decade」についても「いろんな経験をさせてもらって、今、自分の歌がアルバムとして完成したという思い」と力を込める。

 「人の心と心の出会いに、救われてきた。出会いという縁によって、次の未来、明日が待っている。出会いに感謝しながら、また一歩、歩いて行けたら」と前を向き、「一流になること、人の心に届くエンターテインメントの世界で生きていくことって、出会った人たちと一緒に(作品を)共有して作るっていうことなのかもしれない」と世界的ミュージカルや信頼するスタッフとの出会いを糧に、新たなステージへ向かっている。

 <プロフィル>

 なかがわ・あきのり。1982年11月5日生まれ。仙台市出身。2001年にシンガー・ソングライターとしてデビュー。デビュー曲で「第34回日本有線大賞新人賞」を受賞した。02年、日本初演となるミュージカル「モーツァルト!」の主演に抜てきされ、初舞台を踏む。同作で「第57回文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞」「第10回読売演劇大賞優秀男優賞」「杉村春子賞」を受賞した。その後、音楽活動と並行して数々のミュージカルで主演を務める。16年7月に上演される「ジャージー・ボーイズ」のほか、11月の「マーダーバラッド」、17年1月の「フランケンシュタイン」への出演が決定している。

 *……16年5月18日に大阪・梅田の「ビルボードライブ大阪」、19日に名古屋・栄の「名古屋ブルーノート」でライブを開催。各日2ステージ。フルオーケストラと共演するコンサートを8月8日に東京・赤坂のサントリーホールで開催する。

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